第五十六話「死地へ赴く前に」
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鉱石の場所探知や破壊方法を伝授され、高速ではないが飛行も可能になったオクマーマ。しかし、死地へ赴く前にどうしても寄りたい場所があった。
「最後に、マユミおねーちゃんとお別れするっちゅ……」
そして、飛行したままマユミの元を訪れたオクマーマ。
「マユミおねーちゃ~ん!」
「あっ、オクマちゃん! まさかっ、空を飛べるようになったのっ⁉ 凄いっ!」
オクマーマが飛んだままマユミの胸に飛び込むと、マユミはいつものように楽しそうな笑顔でオクマーマを抱きしめていた。
「そうっちゅ。使える念波パワーが少しアップして、飛べるようになりまちた。オクマーマは、これから今までで一番大きな事件に取り組みまちゅ」
「そうなの! でも、前のような危ない取材はしないでね。自分のやれる範囲内で頑張ればいいのよっ、オクマちゃん」
「わかったっちゅ。ありがとうっちゅ」
オクマーマはそう答えながらも、内心で思うのであった。
(マユミおねーちゃんには、心配をかけたくありまちぇん。テロことも、オクマーマが不死身を捨てて命をかけに行くことも、黙ったままの方がいいっちゅ……。普段のように明るくふるまって、心配させないままお別れしまちゅ……)
すると、マユミは箱を取り出してみせる。
「そうそう、オクマちゃん。さっき、料理の授業でこれ作ったの。見て見て!」
「あっ! これは、オクマーマを模ったハンバーグっちゅかっ⁉ 口元やポンポンは、卵の白身を使ってまちゅ。おめめとリボンは~、海苔を切って張り付けてありまちゅ」
「ね! 結構似てるでしょ⁉ 手の部分も凝って、わざわざ右手をきな粉のおはぎ、左手をいなりずしにしたのよ~」
笑顔で説明しながら、オクマーマの手をプニプニと握るマユミ。
「マ、マユミおねーちゃん……」
オクマーマは、マユミには事情を話さずにいようと思っていたが――やさしいマユミと触れ合っているうちに、悲しさが込み上げてきてしまう。
「ん? どうしたの、オクマちゃん」
「……違うっちゅ。なんでもないっちゅ。ごめんなちゃい」
「どうしたの~、オクマちゃんらしくない。これから大切な取材に行くから、緊張してるのかな? 大丈夫、大丈夫! オクマちゃんなら、大丈夫よ~っ」
マユミはそう言いながらオクマーマを抱きしめ、オクマーマの背中に手をポンポンと当てるのであった。
(マユミおねーちゃんの、この温かさ……。初めて会った時と、同じままっちゅ。オクマーマは、死んでも忘れないっちゅ)
オクマーマの脳裏には――マユミに救われたあの日から、心が安らいだ様々な触れ合いの光景が――走馬灯のように思い浮かぶのであった。
(これ以上ここにいたら、マユミおねーちゃんと別れられなくなっちゃいまちゅ……。でもっ! 行かなければ、マユミおねーちゃんも殺されちゃいまちゅ! オクマーマは、行かなければならないっちゅ!)
オクマーマの深刻な事情をなにも知らないマユミは、抱いていたオクマーマを両手で高く持ち上げて笑顔で語り掛ける。
「ほらっ、いつもの元気が出たかな~? オクマちゃん!」
「ありがとうっちゅ、マユミおねーちゃん! オクマーマは、元気出まちた」
するとマユミは、カレンダーを指差しながら笑顔で語り掛ける。
「オクマちゃん。私、今度この日にね。あそこの小山へ、植物散策に行く予定なのよ。理科の課題が出されちゃって。日が暮れる前くらいまで、頑張って色々探すつもりなんだけど~。ちょっと、虫が心配よね。ウフフッ」
(その日は、ちょうどテロの実行予定日っちゅね……。こんな、何気ない日々を明るく生きているマユミおねーちゃんを……絶対、死なせるわけにはいかないっちゅ!)
いつもと変わらぬマユミを見て、オクマーマは決意を新たにしていた。
「そうっちゅか。虫には、気を付けてくだちゃい。それじゃ……オクマーマも、そろそろ行きまちゅ」
「オクマちゃんも、気を付けてね! あっ、そうねぇ~。今回の取材が終わったら……また一緒に海にでも行きましょっ、オクマちゃん!」
「ふふう~」
うなずいたオクマーマは、マユミの温かい手から意を決して飛び立ってゆく――。
(オクマーマも、また一緒に海に行きたかったっちゅ……。でも、多分もう行けないっちゅ。オクマーマは命をかけて、マユミおねーちゃんたちを必ず救うっちゅ!)
無表情のかわいいクマ顔のまま、心の中では泣きながら飛んで行くオクマーマであった。




