第五十五話「奇跡のリボン」
体が活性化したオクマーマは、早速能力を試すのであった。
「オクマーマ・レーダー!」
オクマーマの顔の輪郭が、ピカピカと発光する。
「あっ! オクマーマの中で、念波鉱石のある大まかな場所が感じられるようになったっちゅ!」
「おおっ、それなら成功じゃ!」
「シンパチおじいちゃん、ありがとうっちゅ! 今鉱石のある場所は……もう少し近づかないと正確な場所はわからないっちゅが、意外とここからそんなには遠くはない場所みたいっちゅ! それになんだか、常に微妙に移動しているっぽいっちゅ」
「ならばじゃ。おそらくザラス団の誰かが常に鉱石を保持していて、その鉱石を持っている者が動いているんじゃろうな……」
鉱石の場所が自力でわかるようになったオクマーマの体を、今度はスキャニングしながらチェックしていく斉田博士。
「鉱石を破壊するには……鉱石から出ている念波を逆利用して、念波パワーを最大に近い出力で鉱石に当てれば唯一破壊可能なんじゃ。だから常人には困難でも、念波ロボだけは不可能なことではないんじゃ。じゃがしかし、オクマーマちゃんの素体は所長によって大幅なパワーリミッターがかけられているからのう……。ん? こっ、これはっ!」
「どうしたっちゅかっ⁉ シンパチおじいちゃん!」
「オクマーマちゃんの、このリボンの部分はっ! もしやっ⁉」
オクマーマの左耳にある青いリボン部分にだけ、なぜか計器が特殊な反応を示したのである。斉田博士はリボンの部分に、活性化特殊光線を集中して照射を試みるのであった。
「おおっ、オクマーマちゃんっ! このリボンの部分だけ、どういうわけかピンポイントでリミッターが解除されたじゃよっ! ここに念波エネルギーをフルチャージして放出すれば、鉱石をも破壊出来る光が放たれるようになったのじゃ!」
「本当っちゅかっ⁉」
「ただしじゃ。これを一度放ったら、丸一日インターバルを開けないと再びフルチャージするのは無理じゃ。使う時は慎重にするのじゃよ」
「そうっちゅか、慎重にやりまちゅ。シンパチおじいちゃん、ありがとうっちゅ! このリボンは、所長ちゃんがキミナちゃんにぬいぐるみオクマーマをプレゼントする時、愛情込めて付けてくれたものらしいっちゅ。親子の絆っちゅ」
「そうじゃったのか……。所長の愛情が、こんなところにまで奇跡をもたらすとは……ウウウッ」
「このオクマーマ・リボンは、大和一家の奇跡の象徴っちゅ。だから、技の名前は『大和ミラクルスパーク』と名付けまちゅ」
「それと、オクマーマちゃん。体を活性化させたせいで、このリボンはエネルギーをフルチャージしていない状態でも、ある程度の念波を常時出力出来る状態になっておる。オクマーマちゃんの軽い体なら、このリボンを経由して念波を出力すれば飛行も可能になっているはずじゃ」
「そうっちゅかっ⁉ 試してみまちゅ!」
オクマーマは試しにジャンプしてみると、そのまま空中浮遊で停止したのである。
「あっ! 空を飛べるようになったっちゅ~!」
そのまま、斉田博士の胸に飛び込むオクマーマ。
「オクマーマちゃん。無理かもしれないんじゃが、ワシも最後まで希望は捨てずに自分がやれることを最後まで頑張りますじゃ。試算ではどんなに早くレーダーの結果が出ても、タイムリミットの数時間後になってしまうのが……兵器の場所がワシのへっぽこレーダーでも判明次第、国の特殊部隊に解除に向かってもらいますじゃ」
「お願いしまちゅ、シンパチおじいちゃん。なんらかの事情でテロの実行が遅れたり、オクマーマが時間稼いで遅らせられる可能性もあるかもしれまちぇん。特殊部隊が解除に間に合う可能性も、ゼロじゃないはずっちゅ!」
「今のワシには、これしか出来ないじゃ……。すまないっ、オクマーマちゃん! もはや、オクマーマちゃんだけが人類の希望じゃ。オクマーマちゃんがもし一生懸命やっても止められなかったら、その時はワシも一緒に潔く死にますじゃ。ウウウッ……」
「大丈夫っちゅ。シンパチおじいちゃんも、マユミおねーちゃんも、ノリオちゃんも、全国の罪もない人々も……念波ロボのオクマーマが、必ず命がけで守りまちゅ! オクマーマがテロを防いで死んだら……この体から解放されたキミナちゃんの魂を慰霊すると共に、小さなオクマーマの墓でも作ってくだちゃい……」
「オ、オクマーマちゃん……ウウウウッ……」
「名残惜しいっちゅが、そろそろ行きまちゅ。一日だけだったっちゅが……最後にシンパチおじいちゃんに会えて、オクマーマは嬉しかったっちゅ。オクマーマのことは、忘れないでくだちゃい。じゃあ、行ってきまちゅ!」
「オクマーマちゃんっ!」
こうして、涙する斉田博士の胸から空へ飛び立つオクマーマであった。




