第五十一話「放棄される不死身の命」
刻々と迫るタイムリミットに、焦るオクマーマ。
「もう、時間がないっちゅ。……そ、そうっちゅ! 念波鉱石を破壊しちゃえば、念波兵器も全部無力化出来まちゅ!」
もはや、エネルギーの源である念波鉱石そのものを破壊してしまうしか手段がない。そう考えるオクマーマであった。
「でも……。念波鉱石が破壊されたら、オクマーマも念波エネルギーが切れて死んじゃいまちゅ……」
もちろん、鉱石を破壊せずにそのまま奪い返せれば――鉱石と共に宇宙へ避難し、念波兵器を無効化しつつオクマーマも助かることになる。しかしあのザラス団が、そう簡単に鉱石を奪わせてくれるわけがないのだ。
「鉱石をそのまま取り返すのは、まず無理っちゅ。おそらく、強引にでも鉱石を狙って破壊するしか手はないでちょう……。オクマーマが死んででも、確実に人々を救うにはそれしか方法がないっちゅ!」
オクマーマは自分が不死身であることを放棄し、死を覚悟で念波鉱石の破壊を決意するのであった。
(オクマーマの魂は、キミナちゃんの魂っちゅ。念波エネルギーが尽きて、魂が体から完全解放されちゃったら……オクマーマの自我は完全消滅して、もう二度と復活しまちぇん。その時、魂の中で目覚めるキミナちゃんの自我には『これまでのオクマーマの活動が、夢を見ていたような記憶として断片的に残る』らしいっちゅ。キミナちゃんの代理で、念波ロボ・オクマーマが生きていたという証は……それで十分っちゅ)
そう決意したオクマーマであったが、肝心な念波鉱石が現在ある場所や破壊方法もわからない状態なのである。
「鉱石は、今どこにあるんでちょうか……。それに、場所がわかったとしても破壊方法もわかりまちぇん。資料には、かなり特殊な方法を使わないと壊せない頑丈なものと書いてありまちた。……そうっちゅ! 研究所の元副所長ちゃんなら、鉱石の場所を調べる方法や破壊方法も知ってるかもしれないっちゅ!」
早速オクマーマは得意の潜入捜査で情報をかき集め、斉田博士が現在匿われているらしい場所へと向かうのであった。
そこに到着すると、表面上はとても厳重な警備がなさていた。しかしそこに斉田博士が本当にいるかどうかはわからず、カモフラージュ場所の中の一つなのかもしれないのである。
とりあえず建物の入り口で、ガードマンに話しかけるオクマーマ。
「本心通信の特別記者・オクマーマと言いまちゅ。斉田博士に面会したいっちゅ」
「えっ、君は記者なのかい? 本心通信だって? そんなメディア、聞いたことないなぁ。素人の自称ジャーナリストとかが個人レベルでやってるだけの、勝手メディアかなにかかい?」
「違うっちゅ! 例え小さくても、偏向だらけの大手メディアなんかよりマトモな報道してまちゅっ! あっ……今は、そんなことはどうでもいいっちゅ。とにかく、急いでまちゅ! 斉田博士に、会わせてくだちゃい!」
「ダメダメ! 私には詳しい理由はわからんが、斉田博士は今すごく特別な国家的重要任務に関わってるらしくてね。アポなしメディアの取材は、基本的に一切お断りしているんだ。まあアポの予約を入れたとしても、早くて数か月後に会えるかどうかってところだよ」
「数ヶ月後じゃダメっちゅっ! なんとか、今すぐ会わせてくだちゃいっ! どうしても今でないとダメな事情の、急用っちゅっ!」
「あ~あ~、ダメダメ~っ。なんと言われようが、ダメですよ。大手ならともかく、そんな誰も知らないようなメディアなんか相手にしてられないから! さっさと帰った、帰った!」
「そ、そうっちゅか……」
弱小メディアということもあり、必要以上に雑に扱われて門前払いされてしまったオクマーマ。仕方なく、トボトボと一旦ノリオの元へ引き上げるのであった。




