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第四十五話「人間・大和テツの怒り」

 

          挿絵(By みてみん)



 内心では元所員・今井を助けてあげられないことを悔やみながらも、口答え出来なくなってしまうテツ。


「では、しょうがないですね。彼らは、当日中に即死させなければなりませんから……時間がかかる毒殺ではなく、絶対に判明出来ない場所からのスナイパー攻撃にさせてもらいます。……やれ!」


 モニターに映っていた今井元所員は、突然ビクッ! と反応した直後――出血もせず、その場にバタリと倒れ込むのであった。


「ああっ! い、今井君っ!」

「今、ザラス団が開発した特殊弾を彼に撃ち込みました。致命傷を与えた直後、元素レベルにまで即分解する針のような弾です。ですから……今の警察の技術で検死しても、犯人も死因も絶対にわかりません」

「ウウウッ……」

「ただし、この方法はですね。相手に痛みをほとんど与えず即死させてしまう点だけが、我々としては残念な兵器なのですよ。今の彼は、ほとんど痛みを感じることなく即死しています。まあ楽に死ねたのですから、彼はある意味幸せですなあ~。クックック」

「て、テメーらっ! 人の命を、なんだと思ってるんだーーーっ!」


 最年少だった今井元所員の死を目の前に、絶叫するテツ。


「まあ、なんとでも叫べばいいですよ。明日も、明後日も、この方法で元所員には一人ずつ死んでいってもらいます。あなたが態度を変えない限りは……」


(み、みんな……。俺が、エネルギーの既得権益者やマスコミから理不尽に叩かれていた一番苦しい時期でも、信頼して念波研究を支えてくれた同志のみんなが……。お、俺は……。念波という強力なエネルギーを発見しながら、まず平和利用ばかり先行して考えてしまった俺は……甘すぎたんだ! こんな悪魔を滅ぼせる程の強力な兵器でもまず先に開発しておいて、罪もない人々を『力』で守るべきだったんだ!)


 あらためて、力を持っておけなかったことを悔やむテツ。


(こういう改心の見込みのない悪は、世の中には必ずいる……強力な兵器そのものが悪いのではなく、運用方法の問題なんだ! 力がなければ、一方的に俺みたいにされてしまってお終いなのが現実なんだ! くっ、くそうっ! 無念だ!)


 家族や同志が殺され、もはや理性を超えた『人間の、人間らしい生々しい本音の怒り』がこみあげるテツであった。


「お前らぁっ! 俺はなっ、俺はっ……! 人生で初めてっ、お前たちなら、俺が法律違反で死刑になってでも、本気でっ、お前たちなら全員ブチ殺してやりたいと今は思っている! それが、俺の人間としての感情だぁぁぁっ‼」


 平時には思いもしなかった『正義の心で運用する、強い力の必要性』を、テツは痛切に思い知ったのである。力がなければ、実際問題このザラス団のような凶悪組織を抑えることは出来ないのだ。それは、非力ゆえに散々な目にあったオクマーマも、規模こと違えど同じであったのだ。




 そして、それからも毎日一人ずつ容赦なく殺されていく元所員たち……。数日後には、テツより年下の元研究員たちが全員殺されてしまうのであった。




 最後に一人だけ、唯一テツより遥かに年上の最長老であった『斉田さいだ新八しんぱち』博士が生き残っていた。研究所の副所長でもあった斉田博士だけは国からも最重要人物として保護されており、どこかの施設で一番厳重に匿われているという。さすがのザラス団も、斉田博士の保護場所だけはまだ特定出来ずにいるのであった。


「斉田博士だけは、国も必死の保護ですなぁ。クックック」


(せめてっ、斉田博士だけでも……なんとか、助かってくれっ!)


「まあいい。今に斉田博士も、見つけ次第同じような運命を辿るだけだ。クックック」




 そこに、別の黒装束の団員による報告が入る。


「報告します。大和博士の娘が、毒で死亡致しました」




「…………! キッ、キミナーーーーーーーーーッ‼」




「ご苦労。子供の方が、毒の浸透が早いですからね。まもなく妻の方も、そろそろ発病するでしょうかね。クックック」




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