第三十一話「危険な取引情報」
体も小さく、ぬいぐるみのフリも可能で、大ダメージさえ受けなければ二十四時間・三百六十五日・無補給でフル稼働し続けられる『念波ロボ・オクマーマ』。
いや、例え大ダメージを受けても、眠ったり傷を縫ったりすれば一日もかからず回復してしまう。殺されて灰にされた状態からですら、ほんの数日で完全復活してしまう。痛みこそ感じるが、鉱石から届く念波さえ受け続けていれば不死身の体なのだ。
その利点を生かし、あらゆる悪事のありそうなところへ『特別記者』として忍び込み――深い情報を探る時間も、徐々に増え始めていった。
すると偶然にも『暴力組織による麻薬取引』という、かなり危険な情報を掴んでしまったのだ!
「ノリオちゃん! 危険な情報を見つけたっちゅ!」
ノリオの編集室に飛び込んで来たオクマーマは、興奮しながら詳しい内容を伝えるのであった。
「ええっ⁉ オクマちゃん、それは本当なのかい⁉ 警察も知らないと思われる情報だけど、一般人が手を出すのは、かなり危険な案件だなあ……」
「警察に通報したら~、多分阻止出来ないっちゅ」
オクマーマの情報によると――ダミーの取引が同時に何か所かで行われ、本当の取引場所は一か所だという。警察にまかせても、おそらく簡単に成功してしまうような『超巧妙な方式』で行われるというのだ。
「そうなのか、オクマちゃん……」
「こういうことは、ノリオちゃんのような普通の人間が動いたら危険っちゅ。こういう姿をしたオクマーマだけにしか、情報の収集は出来まちぇん。怖いっちゅが、オクマーマが取引場所を発見するっちゅ!」
オクマーマは真の取引場所を探るために、暴力組織に潜入することを決意するのであった。
(でも、無理するなよ……オクマちゃん……)
編集室から元気に外へ出て行ったオクマーマを、心配そうに見守るノリオであった。
(ノリオちゃんにはああ言ったっちゅが、もし悪人にバレた時が問題っちゅ。オクマーマは不死身でも、痛みはありまちゅ。痛みで気絶しちゃったら、場所も知らせられなくなっちゃいまちゅ。それに大ダメージを受けたら、回復にも時間がかかるっちゅ……)
万が一そうなった場合でも、確実に場所を知らせるまで意識を保つ方法はないか――と考え、ドカッとその場に座り込むオクマーマ。
その時、あることに気付く。
「あっ! そうっちゅ、シッポっちゅ! シッポにも、感覚は一応あるっちゅ。でも、ここだけは、踏まれても痛覚が鈍感で……痛くないっちゅ!」
これは――オクマーマの姿に変化した念波ロボでも、魂は人間であるキミナのものが宿っていることに由来する現象であった。シッポの部分は元々人間には存在しない部位のため、そこだけは痛覚がほとんど適用されていないのだ。
(もしかして~。トカゲちゃんのように……シッポだけは切れちゃっても、なんともないんでちょうか~?)
試しに実験してみようと、オクマーマはマユミの元を訪れるのであった。
「ええっ⁉ 実験で、シッポを切ってみてくれですって⁉ オクマちゃん!」




