第三十話「特別記者オクマーマ」
オクマーマの話を色々と聞いて、驚愕するノリオ。
「ひゃ~! じゃあ、やっぱりオクマちゃんがっ、殺害を防いだ殊勲者だったんだね⁉」
「そういうことで~。議員事務所へ訴えに行った後、オクマーマがあの現場に出くわしまちた。それでなんとか妨害して、運良く防げたっちゅ」
「オクマちゃんは、被害者のナミさんから『警察や政治家への直訴に協力してもらった上、命がけで助けてもらった』と大感謝されていたよ。オクマちゃんを探してもなかなか見付からないので、もし会えたらよろしく伝えてくれって」
「そうっちゅか。ナミちゃんが無事で、良かったっちゅ」
「そもそもメディアにとって、これは大きく報道して当然な内容のはず。それなのに……。どうしてそのことを、どこの大手メディアもまったく取り上げてないんだ⁉ あまりにも不自然だし、おかしいよ!」
実は、そうなった真相は――。
警察や政治家が事件前から『このままでは殺される』と何度も相談されていたのを、みすみす見逃したという責任を裏から揉み消していたのだ。大手メディアには『その点を極力スルーするように』と、大きな圧力をかけていたのである――。
「例え大手メディアはスルーしても、僕はこの事件の真実を報道するぞオクマちゃん! 先に警察や政治家に助けを求めていたという『事実』を晒して、世の中に問題を提起しなきゃね。そういうのが、例え小さくても『自由なネットメディア』を、僕がやっている目的なんだ」
「ノリオちゃんは、偉いっちゅ! オクマーマのことは~。事件の妨害に協力した者がいたということで、匿名にして報道しておいてくだちゃい。オクマーマは~。事件が防げれば、それでいいっちゅ」
「そうかい、オクマちゃん……。君は、本当に偉いっ! 僕は、感動したよ!」
「そ、それほどでもないっちゅ。ちょっと、恥ずかしいっちゅ」
オクマーマは――マユミに続いて、小さくてもまっとうな報道をする正義漢ノリオと出会えたことにより――心がホッとするのであった。
「そうだ、オクマちゃん! よかったらだけど……」
「なんちゅか~」
「僕のところの『特別記者』になってくれないかな? 拘束条件は、なにもないから! なにか世間に広めるべきことが起こった時や、スクープを見つけた時とかだけ、自由参加で! どうかな⁉」
「オクマーマが、記者っちゅかっ⁉」
ノリオからの提案に、驚くオクマーマ。
「オクマちゃんは『世の中を良い方向にただしていく』のがライフワークということなら、僕と方向は同じだ。なんでも、個人の力で全部やるのは難しいし……。言論の面でも、社会への問題提起や注意喚起、道徳心を広めたりしていくのも『もう一つの道』として、並行してやったらいいんじゃないかな?」
オクマーマは、ノリオの言葉に大いに賛同するのであった。
「そ、そうっちゅね! 個人で直接やれることには、限界があるかもしれまちぇん。ノリオちゃんのような方法も、もう一つの大切な道っちゅ!」
「じゃあ、なにかあった時は協力してくれるかい? オクマちゃん!」
「よろしく、お願いしまちゅ」
こうして、本心通信の特別記者も兼任することとなったオクマーマ。
大手メディアが故意に扱わなかったり、伝えなかったりする闇を暴いていくことで『非力な個人でも、なんとか世に貢献することが出来る一つの道がある』と、希望に燃えるのであった。




