第二十八話「突き刺されたオクマーマ」
ザクッ‼
「きゃあああーーーっ!」
悲鳴をあげたナミが、目の前で見たものは――自分の身代わりになって、ナイフを突き刺されたオクマーマの姿であった!
ナイフが貫通し、背中に刃先が少し突き出てしまっている!
「いっ、今っちゅっ! ナミちゃんは、逃げてくだちゃい! 警察にも、連絡するっちゅ! オ、オクマーマは……心配しなくて、大丈夫っちゅ……」
恐怖におびえるナミ。ナイフが僅かに当たった肘を、片手で押さえつつ――オクマーマを信じて、言う通りに『ウン、ウン』とうなずきつつ、その場から逃走するのであった。
「こっ、コノヤロー! 離せっ!」
ストーカーは、オクマーマに刺さったナイフを必死に引き抜こうとする!
オクマーマは、ナミが安全な距離に逃げ切るまで――わざと自分に刺さったナイフが抜けないよう、両手で必死にしがみついて妨害するのであった。
刺さったナイフがグリグリと動き、死の痛みがオクマーマを襲う!
(い、痛いっちゅ~っ! マ、マユミおねーちゃん……助けてくだちゃい……)
念波ロボであるオクマーマからは血も涙も流れないが、声は完全に泣いているような悲痛のうめき声であった。
「ウウウッ……」
オクマーマが命がけの時間稼ぎをしたことによって、遠くへ逃げられたナミ。
即座に通報すると、ほどなくして警察が現場に到着するのであった。
警官たちが到着したのを見たオクマーマは、死にそうな声をふりしぼって叫ぶ。
「こ……これが犯人っちゅ……。捕まえてくだちゃい……」
それを合図にするかのように、突撃する警官たち!
揉み合いの中――ナイフが刺さったオクマーマごとストーカーの手からこぼれ落ち、地に落ちた衝撃でオクマーマの体から抜けるナイフ!
警官の一人がそのナイフを確保すると、他の警官たちはようやくストーカーを取り押さえるのであった。
そして、ストーカーを確保した警官たちが犯人を連行していく中――ナイフを確保していた警官が、倒れていたオクマーマに駆け寄った。
「きっ、君は⁉ あの時の……! だ、大丈夫かっ⁉」
その警官は、先にナミとオクマーマが助けてほしいと直訴した時の担当警官であった。
オクマーマは死ぬほど痛がりながらも、意地で答える。
「だ、大丈夫っちゅ……。オ、オクマーマのことは……ほっといてくだちゃい……」
切り口を片手で押さえながら、ヨレヨレと必死に現場を去っていくオクマーマ。
(だ……だから……。先に……危ないって……相談したじゃないっちゅか……。ウウッ……)
警官は苦虫を噛みしめるような表情で、その苦しそうな後ろ姿を見守るしか出来ないのであった。
そして、その現場のかなり後方では――。
たまたまここを通りかかり、捕まった犯人が連行されていくのを見かけた『カメラを持った一人の男』が、ずっとこの現場を見守っていた。
(今の、この事件は……。これは、追ってみる必要がありそうだぞ!)




