第二十七話「わかっているのに防げぬ凶行」
オクマーマが議員事務所に行くと、たまたま議員本人が事務所に滞在していた。
「はい~、次の方。ん? なんだね君は⁉ ワシは忙しいんだ、意見なら早くしてくれたまえ」
オクマーマを見て『有権者ではなく、票にならない』と思った議員は、急に横柄な態度で事務的にオクマーマと接するのであった。
「ストーカーに狙われていて、今にも殺されかねない知り合いがいまちゅ。警察に助けを求めたっちゅが、警察は実際に事件が起きない限り動いてくれまちぇん。そういう人を守れるように、ルールを変えてくだちゃい。お願いしまちゅ」
横柄な議員に対してでも、頭を下げて熱心に語るオクマーマ。
事実――事前に警察へは散々助けを申し出たのに、警察がなにも動かなかったせいで防げなかった暴行事件も全国ですでに多発していたのだ。こうしてオクマーマが掛け合いに来る前にも、似たような意見はすでに議員の元へ沢山寄せられていたのである――。
しかしその議員は、結局自分の保身が第一であった。
自分が議員である期間は極力余計なことはせず、期間が終わったらどこかに天下りたいと考えるタイプの『典型的な、事なかれ主義の議員』であったのだ。
オクマーマの必死な訴えも、横柄な態度で『ハイハイそれは考えています』とはぐらかすのみ。一切、本気ではとりあってくれないのである。
(こんな議員でも、例え投票率が低くても、国民によって正式なルールの選挙で選ばれた政治家っちゅ。国民が選んだ代表が聞き入れてくれないんでちゅから、国民が変わらない限り、どうしようもないっちゅ……)
やり場のない落胆で肩を落とし、事務所をトボトボと後にするオクマーマであった。
そして、ナミのところへ報告に戻った、ちょうどその時――。
ナイフを持ったストーカーが、後ろからナミを襲う犯行寸前であったのだ!
「あっ! 危ないっちゅー!」
オクマーマは、必死に走りながら叫んだ!
その声でナミが後ろを振り返ると、目の前にナイフを持ったストーカーの姿が!
「キャアーッ!」
とっさに逃げようとするナミだが、ストーカーによって逃げ場のない物影の方へ追い込まれてしまう。
短足で必死に走るオクマーマだが、もう間に合わない!
「ダメっちゅ~っ! オクマーマ・シールド!」
オクマーマは走りながら、先の訓練で引き出したいくつかの技の中にあった『盾』を発生させた。しかし硬さは皆無で、クッションのように柔らかいものである。
それでも『ないよりはマシ』と、フリスビーのように投げつけた!
だがストーカーのナイフは、飛んで来たシールドをあっさり貫通してしまう!
「ウッ⁉」
痛みの声をあえるナミ。凶刃が命中してしまったのだ!
だがナイフの先端は、肘の硬骨に浅く刺さるに留まっていた。
シールドが投げつけられたことで、僅かに突撃のコースやタイミングがズレたのである。
しかしストーカーは一度引いたナイフから、シールドを取り払ってしまう。
そして狂気の表情で、逃げ場のないナミに向けて再びナイフを振り上げた!
「やめなっちゃい~っ!」
ナミを庇うように、身を躍らせてストーカーの前へ飛び込むオクマーマ!




