第二十六話「非情な社会構造」
それからもオクマーマは、融合度を高めようと毎日必死に訓練を続けていた。
短期間でカタイナーの技を模倣出来るほどに急成長したものの、自分自身が直接的なパワーを持てたわけではない。元々リミッターがかかっており、パワーはどうやっても子供並しか出せないタイプの念波ロボなのだ。
それでもあきらめず、自分が出来る範囲だけでもやっていこうという思いは変わらなかった。今日も相変わらず、街中をトコトコと歩いていくオクマーマである。
すると、なにやら女性が必死に訴えている声が耳に入っていた。
交番の中からだ。
「このままでは、いずれ私は殺されてしまいます! 明らかに危ないストーカーから狙われているんです、助けてください!」
「いやですね~。お気持ちはわかるんですがね。警察は事件が起こってからでないと、なかなか動けないんですよ。もちろん、相談はお聞きしますが……」
警察官はいかにも公務員的なお役所仕事で『ハイハイ』と聞くだけで、親身な態度になっていないのは明らかであった。
(あの女の人は、間違いなく必死っちゅ。なのに、警察官は本気で聞いてくれてまちぇん……)
じっとしていられなくなったオクマーマは、その場に首を突っ込むのであった。
「今、話が耳に入ったっちゅ。警察は、助けてあげてくだちゃい」
「あっ⁉ ありがとう……。お願いしますっ、お巡りさん!」
いきなり自分を味方してくれるオクマーマが乱入し、驚きながらも感謝する女性。
しかし、オクマーマの加勢があっても警察官の反応は変わらない。
「そりゃ私も、個人的にはなんとかしてあげたいんですけどね」
「だったら、どうして取り合ってくれないんですかっ⁉ お願いしますっ!」
「でもねえ。現行法でそのように決まってますし、どっちにしろ、現場末端の私では……。下っ端の個人じゃ、どうすることも出来ないんですよ」
結局その女性は、警察に相談書だけは一応提出したものの――それだけで、肩を落として去っていくのであった。
その女性が心配になったオクマーマは、思わず後を追っていた。
女性は、見ず知らずなのに擁護に入ってくれたオクマーマに感謝し、詳しい事情を話してくれるのであった――。
彼女の名前はナミといい、現在一人暮らしをしているという。
裕福ではなくセキュリティを雇う余裕もないので、公的な警察以外に頼みの綱がないというのだ。
「そのストーカーは、放置したら間違いなく危険っちゅ! 警察は、一体なにをやってるんでちゅかっ! 酷いっちゅ!」
マトモに扱ってくれなかった警察に対して、憤慨してしまうオクマーマ。
しかし――確かに、警察の事なかれ主義や怠慢があるにしても『法自体が元々不十分』であることも事実であったのだ。
警察も含め、ルールを決めているのは『選挙で選ばれた政治家』であり、そこが動かない限り改善は見込めないことになる。ナミは今までも、議席を持っている各与野党に対して意見は送っていたが『のれんに腕押し状態』で、まったく反応がないということであった。
「だったら~。オクマーマも、政治家と掛け合ってみまちゅ! いきなり総理大臣は難しいっちゅから、まずは地元の議員からっちゅ!」
オクマーマは『議員に直訴した結果を、後で伝えにいく』ということで、ナミが普段いる場所を教えてもらうと――早速、地元の有力議員事務所へ向かうのであった。




