第二十三話「自己中な迷惑駐車」
ある時オクマーマは、いつも心の支えになってくれているマユミに対して『感謝の気持ちを込めて、なにかプレゼントを贈ろう』と考えていた。
(オクマーマは、今お金を持ってまちぇん。アルバイトするっちゅ)
オクマーマは早速街に繰り出し、街中の店に交渉するが……。
ただでさえ不況の中、オクマーマの小さな非力の体で雇用してくれるところはなかった。
(困ったっちゅ……)
オクマーマは街中から出て、人の少ない畑だらけの道とトボトボと歩いて行く。
すると、畑で必死にイチゴを収穫しているおばあさんを発見。
「おばあちゃん、これはイチゴっちゅか~?」
「あら~? かわいいクマちゃんね! そうよ~。収穫に力はいらないんだけど、低い位置に小さくて沢山あるもんだからねぇ。私じゃ腰が痛くて、大変なのよ~」
「あっ! それなら、オクマーマに収穫のアルバイトさせてもらえまちぇんか~⁉」
「ええっ? やってもらえるのかいっ⁉ こういうのは人手不足で、若い人がなかなか来なくて困ってたのよ~。バイト代は弾むから、ここの列だけでもやってもらえるかね~?」
「やりまちゅ!」
「ありがと~う。じゃあ、このカゴに入れてね」
「わかりまちた~。い~ちょっ、い~ちょっ……」
――こうして、いくらかのお金を入手したオクマーマ。
再び街中に繰り出すと、たまたま花屋の前を通りかかっていた。
「あっ! あの花は、綺麗っちゅ。あの花に、決めまっちょ~」
気に入った花束を購入し、そのままマユミの元へ向かうオクマーマであった。
しかしその途中で、駐車された車を前に困っている人を見かけてしまう。
「どうしたっちゅか~?」
「いやね、ここに誰かが迷惑駐車しちゃっていて……。私の車が通れないんですよ」
「困った車っちゅ。警察に連絡して、どかしてもらえばいいっちゅ」
「もう通報はしたんですが……。ここは私道だから、公道しか取り締まれないと」
「じゃあ、この車は~。運転手が来ない限り、どうにもならないっちゅか⁉」
「警察は、アリバイ的に口で注意する程度ですよ……」
「法的には、どうなんちゅか」
「一応、共用私道でも通行権の侵害にはなるんですけどねぇ。最高裁の判例もすでにあるんですが、これを裁判で徹底的にやるのは敷居が高いから……似たような境遇の人も、みんな泣き寝入りなんだろうなぁ~」
そんなところに、やっと迷惑駐車の運転手が出現する。
困っていた人は憤慨しながら、迷惑駐車主に叫んだ。
「あっ! あなたですか、ここに車止めたのは⁉ 私が遅刻してしまいます! 困りますよっ!」
しかし迷惑駐車主は、謝るどころか逆ギレしてしまう。
「なんだっ、ひょっとしてテメーか⁉ さっきポリ公に通報した奴は! 俺はこの近所に家があってな、いつもここは俺が停める場所だって決めてるんだよ! この外様野郎!」
あまりにも自己中な迷惑駐車主を見て、オクマーマも憤慨。
「なんなんでちゅか! 他の人は、みんな自分の土地を削って停めたり、お金払ってちゃんとした駐車場に停めてまちゅ。ここは法的にも、みんないつでも自由平等に通行する権利があるっちゅ!」
「そうですよっ! このクマちゃんの言う通りだ!」
「それにっちゅ、もし一分一秒を急ぐ救急車や消防車の障害になって、そのせいで人命を左右する重大問題になったらどうするんでちゅかっ⁉ ここに、無断で駐車する権利はないっちゅ!」
「なんだっ! このクマ野郎っ!」
迷惑駐車主は、いきなりオクマーマを花束ごと踏みつけてしまった!
「アーッ!」
「ああっ! いきなり、なにをするんですかあなたはっ! とにかくっ、とっとと、どいてくれっ!」
「チッ!」
迷惑駐車主も、なにか用事で急いでいたようで――不機嫌そうに舌打ちして車に乗り、怒ったように車のドアを『バタンッ!』と大きな音で閉め、そそくさと走り去っていくのであった。
「だ、大丈夫か、君っ! 怪我は⁉」
「かっ、体の方は、大丈夫っちゅ……」
「そうかい、とりあえず良かった。……ああっ! そっ、そうだっ、私もこのままでは大遅刻してしまう! それじゃっ!」
オクマーマの無事を確認すると――迷惑していた彼の方も、早急に車で走り去っていった。




