第十八話「オクマーマはスーパーロボット⁉」
――そのような、キミナの自我に残っていた『超合金ロボ・カタイナー』と遊んだ記憶が――訓練をしていたオクマーマの自我に、なんとなく断片的にフラッシュバックし始めたのである!
(これは……なにかのロボットが、パンチを発射しているイメージっちゅ!)
オクマーマにそのイメージが引き出されると、なんと腕の付け根が突然変化を始め――プラスチック製の、パンチ発射ボタンのようなものが付加されたのだ!
「あっ! オクマーマの腕に、ボタンのようなものが出現したっちゅ!」
自分でも驚いてしまうオクマーマ。しかも、変化した手の部分は――まるで、部分麻酔でもかけたように――痛みも感じない状態になっていたのだ。
早速ボタンを押してみようとするオクマーマだが、どうせならロボらしく技のネーミングもしてみようと考えた。
(マユミおねーちゃんは~。オクマーマの手が、きな粉の『おはぎ』か『いなりずし』に似てると言ってたっちゅ)
心の中で技名を決め、右腕を構えたオクマーマ。
「おはぎパンーチ!」
そう叫びながら、ボタンを押すと――おはぎのようなオクマーマの手が、切り離されて前方に飛び出した!
「あっ、腕が飛んだっちゅ! それに、この状態だと痛くないっちゅ。成功っちゅ!」
一瞬、大喜びしたオクマーマだが……。
「でも……。柔らかい手が、オモチャのような威力で飛び出すだけっちゅ。これじゃ、紙箱を倒す程度のパワーしかありまちぇん」
そして少し前方には、飛ばしたパンチが転がったままである。
「それに、まだ飛ばしたパンチの制御も出来ないっちゅ。飛ばしたら、自分で回収しないといけなくなっちゃいまちゅ」
トコトコと前に歩き、自分の腕を拾って元通りに差し込むオクマーマ。
「でも、せっかくっちゅ。こっちの手も実験しまちゅ。こっちは『いなりパンチ』っちゅ。いなりパーンチ!」
しかし、こちらはボタンを押してもパンチが飛ばなかった。
「左手の方は、壊れてまちゅ。いなりパンチは、不発っちゅ。でも、せっかくネーミングしたっちゅから……左手で普通にパンチする時には、いなりパンチと叫ぶようにしまちゅ」
これはもちろん――イメージの元となっているカタイナーの片腕も故障していたのが、忠実に再現されたせいである――。
「この技は、使いにくいっちゅ」
オクマーマは本来の腕の姿を念じると、スーッとボタンが消えて元の状態に戻った。それと同時に、腕の感覚も元に戻るのであった。
それでもオクマーマは初めて、眠っているキミナの自我にある記憶を引き出すことには成功したのだ。
「まだ、他にもありそうっちゅ!」
それからオクマーマは、どれもこれも玩具並の威力で役に立たないとはいえ――キミナの記憶にあったカタイナーの武装を、何種類かは習得したのである。




