第十三話「オクマーマの弱点」
「それでオクマちゃん。この、魂が宿る前のノッペラボウ人形のことだけど……。いい子ちゃんの魂が宿ってオクマちゃんになった、この小さい人形の後ろの方に、大きいノッペラボウ人形もあるわよね? やっぱりこっちも、魂が宿せる念波ロボの素体人形なのかしら?」
「そうらしいっちゅ。こっちの大きい人形は、オクマーマと違って『パワーリミッターがないタイプ』みたいっちゅ」
「オクマちゃんは、なにかパワー制限がかけられているの?」
「オクマーマは~。例えどんな強い念波を受けても、子供並のパワーしか出せないようにされてまちゅ」
「受け取れる念波の強さって、やっぱり強弱があるの?」
「念波は、鉱石からの単純距離に比例したパワーを受けられまちゅ。鉱石との距離が離れれば離れるほど、受けられる最大パワーは減退するっちゅ。逆に至近距離なら、重機も軽々動かせるような超パワーっちゅ」
「鉱石から出る念波って、そんなに凄いパワーなの⁉」
「だから~。もしこの大きい人形に魂が宿って、念波ロボとして誕生したら凄いっちゅ。鉱石の近くにさえいれば、超パワーが出し続けられるスーパーロボットになるはずっちゅ。ただ……」
「ただ?」
「こっちは誰かのDNAが入っている特殊人形で、そのDNAを持つ特定個体の魂以外は宿れない専用品らしいっちゅ。万が一悪人の魂が宿っちゃうと逆にまずいっちゅから、その防止かもしれないっちゅ。所長ちゃんの資料には『そのDNAを持つ個体は、まだ生きているので未実験』と書いてありまちた」
「じゃ、少なくともその人が死なない限り、こっちはロボ化することがないのね」
「この大きな人形は、今もまだノッペラボウのままだったっちゅ」
「とにかく現時点では、オクマちゃんだけが人間の魂を宿した念波ロボとして、世界で唯一の存在ということになるのねっ⁉」
「でも、念波ロボにも弱点がありまちゅ……」
「弱点?」
「鉱石からの念波が、常に届く範囲内に入っていないと……念波を受けられなくなっちゃいまちゅ」
「そっ、そういえばそうね! 範囲って、どれくらいなの⁉ それに、鉱石は今どこにあるの⁉」
「念波ロボが体を維持出来る、最低限の念波パワーが届く有効範囲は~。地球から月くらいの距離までなら、ギリギリ大丈夫っちゅ。かなり、広範囲っちゅ」
「ホッ。それなら、範囲外に出る心配はなさそうね!」
「でも万が一、遠い宇宙に鉱石が持ち出されたら……オクマーマも鉱石と一緒に宇宙へついていかない限り、念波が切れちゃいまちゅ」
「そ、そっか……。で、今鉱石のある場所はっ⁉」
「多分、国内のどこかにあるっちゅ。国が保管してまちゅ」
「国が?」
「念波研究は、国から危険視されてたらしいっちゅ。それで、ある時に研究所は半ば強制的に解散させられちゃいまちた。所員の全員には国から僅かな手切れ金が支払われたっちゅが、研究所を作った所長ちゃんだけは……それじゃ全然足りなくて、莫大な借金が残っちゃったみたいっちゅ。その時に、鉱石も含めた研究所の所有物が、ほとんど国に没収されまちた。それ以降は、国の管理下っちゅ」
「そうだったの……。でもそれなら、鉱石の保管についてはとりあえず安心だけど……。もし、万が一念波が届かなくなったら、オクマちゃんはどうなっちゃうの⁉」
「人形に魂が宿った時から、魂と人形本体はリンクされた紐付き状態になってまちゅ。だから、例え本体がバラバラな灰になっても、集結して復元されまちゅ。もしそのリンクを持続させている念波エネルギーが尽きると、リンクが切れて……人形から魂が抜けて、元のノッペラボウ人形に戻っちゃいまちゅ」
「そ、そんなぁ!」
「抜けた魂の中では、オネンネしていた元のいい子ちゃんの自我が目覚めまちゅ。でも、念波ロボとして活動している間だけの『期間限定な代理』でしかないオクマーマの自我は、その時に完全消滅しちゃうらしいちゅ……。だからオクマーマとしては、そこで完全に死んじゃうということっちゅ」
「ええっ!」




