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風変わりなVRMMO(仮)  作者: 渡歩畝
第二章 セトの里
8/8

#008

久しぶりの更新。一身上の都合で申し訳ありませんが、執筆時間を他のことに充てております。


今話前半にて、昆虫食についてほんの少し触れる場面があります。詳しい描写は全くありませんが苦手な方がいらっしゃいましたらごめんなさい。

 浮遊感が覚めるとベッドに横になっていた。

 さっきまで重い荷物を背負っていたのに、その重さからの解放された感じがしない。今も重さを感じるというわけはない。最初から何もなかったような、ただ寝ていていたような感覚である。

 現実と仮想空間での感覚の落差による障害を起こさないための処理でもあったのだろう。私の場合、違和感を覚えないのが違和感という感覚になってしまっているのだけれども。

 まあ続けていれば、そのうち慣れるかもしれない。


 時間を確認すると七時四十分前。お昼前に再開すればいい感じになりそうなかな。

 それまで何をして時間をつぶそう……あ、食事情がよろしくないようだし、その辺を解消する方法を調べておこう――。


 立地的に森や山で手に入りそうな食材などを調べた結果。

 山菜、宜しい、おいしいよね。有毒の見分け方や灰汁(あく)抜きとかで大変そうなのもあるけど。

 鳥獣、捕獲や処理を考えると出来れば避けたいけど、まあ良しとしよう。

 昆虫類、無理。貴重なたんぱく源であろうと無理は無理。調べるんじゃなかった、記事だけかと思ったら画像付とは……向うで出てこないことを祈ろう。


 そろそろいい時間になったし、気を取り直してちょっと早めの昼食を取ろう。……食事前になぜかアレな画像見てしまったことに後悔しかない。

 冷蔵庫をあさると、ゼリーな栄養補助食品を発見。もう、これでいいや。


 ちゅうちゅうと食事も終わって、再びヘッドセットを付けて横になる。

 さあ、夜まで遊ぶぞー。


 毎度の浮遊感と暗転後、緑映える風景と共にズシリと後方へ引っ張られる感覚。

 視界の端に「ログインしました。~」の文字が見えたが後回し。

 サッと素早く右足を一歩下げ、腰を落として体勢を整える。同じ過ちは犯さない。


「ふふんっ」


 転ばなかったことに拳を握り、思わず笑いが漏れる。


「ひっ」

「――ッ」


 誰もいないと思っていたら、後方から引きつった声が聞こえ硬直する。逸る心を落ちつけながら、聞こえた方へゆっくりと首を回す。

 その視線の先には、建物の陰からこちらを見る6歳前後の赤いローブを纏った幼い子供がいた。

 この里の森人の子供だろうか。肩まである艶やかな金髪から特徴である長い耳を覗かせ、張りのある頬と一緒にプルプルと震えている。まあ震えているのは全身みたいだけど。あと、目元が心なしかうるんでいる気がする。

 念のため、素早く周囲を観察する。うん、向けられた視線の先、私の近辺に目を惹くものは私以外ない模様。

 確認が終わったのでもう一度、視線を子供に向ける。


「ひっ」

「……」


 また目が合ったせいか、さっきより目元のうるうる感が増した。否定しようもない、これは私を見て怯えていらっしゃる。

 いつから見ていたかわからない。最初から見ていたのなら、人気のないところにポツンと微動だにせず立っている人が、突然動き出して一人笑っている姿を見れば不気味である。

 最後の方だけ見られていたとしても、物陰で一人笑っている。普通にお近づきになりたくない。人によったら通報物であろう。

 なので、急ぎ説明してを無害なことを理解してほしいけれど、下手に声を掛けたり近づけば、さらに怖がられる可能性が高そうな状況でもある。ひとまず笑顔で手を振っておこうかな。笑顔は円滑なコミュニケーションを助けてくれる――


「だ、だいじょうぶ。こわくないよー?」

「ひぅっ」


 ――とは限らないらしい。

 状況により強張った笑顔と言葉を送ったら、光るものを残して子供は建物の陰へと完全に隠れた。察するに恐怖の限界を迎えて走り去っていったのだろう。

 何がいけなかったのか、笑顔で手を振るはずが声を掛けてしまったことか……この場合、最初から全部かな。ハハハ……ハァ。

 迷惑を掛けないように物陰に来たはずなのに、余計な事態を引き起こした気がしないでもない。

 子供に接するのは難しい。もし、さっきの子を見かけたら謝っておこう。見つけても、逃げられなければの話になるだろうけど。

 そういえば、話術スキルの補正はどうなっているのだろう。声かけたのに逃げられる現状だと大して役に立っていない気がする。でも、さっきのは会話自体成立してないから意味ないか。言動の動の部分が原因の大部分だと思うし。いやいや、別に問題になるような行いをしたつもりはないから――って、いつまでも時化ていても仕方ない。意味ある行動をすることにしよう。決して治安に係わるような人が来る前に移動しようなんて思ってませんよ?


 正午前に再開したからこっちでは九時になったかならないかくらいだろう。このくらいの時間ならお店も開いてるはず。

 昨日の彼に挨拶しておこう。ついでにというか本音は、さっきの子がどこの子か知っていたら教えてもらたいところである。お礼の追加も(やぶさ)かではない。


 昨日歩いた跡を辿って表に回る。表の通りにはちらほらと人が歩いているが、大人の姿ばかりで先程の子供の姿はない。

 店の扉をみると「閉店」の看板がぶら下がっていた。どうやら、まだこの店の営業時間ではないらしい。


「ごめんくださーい」


 念の為に扉を軽く叩いて声を掛けてみる。

 暫く様子をみるが反応はない。留守かな。残念だけどまた時間を見て訪ねればいいか。

 あとの予定としては宿屋と雑貨屋だけど、ここは宿屋が先かな。この時間ならさすがに開いてるだろうし。

 では宿屋へ――ってどこ? 雑貨屋もどこよ。

 通りに沿って建物は幾つもあるけど、全部見て回るには手間が掛かりそう。近くの人に聞いこうかな。

 見回すと広場へと向かって歩いてくる森人がいたので、こちらからも近寄り声を掛ける。


「すみません。少し道を尋ねてもよろしいでしょうか?」

「ふむ、異人の方か。して、どちらまでですかな」


 白に植物の刺繍があるローブを纏った壮年の男性であった。後ろ手に腕を組んだまま立ち止まり、一瞬上下に目配せをしてこちらを観察されたが、尋ねても大丈夫のようだ。


「あ、はい。ここから宿屋と雑貨屋までの道順を教えていただきたいのですが」

「宿屋へならば、この道沿いを進めばよい。そのまま進むと里の出入り口に当たる。その手前、左側二階建ての物だ。雑貨屋ならば、途中に右手に分かれ道があるのでそれを進み二件目だ」


 男性は振り返り、片腕を上げ道を指し示してくれた。


「ありがとうございます」

「なんの。では失礼」


 礼を言うと掲げた腕を軽く払って立ち去るので会釈しておく。


 場所も分かったことだし早速歩いて向かうとしよう。

 道中、この里の様子をそれとなく見ていく。

 道の幅は二メートル前後、すれ違うには十分であるが狭い印象。わずかに右手に曲がっているので、出入り口や分かれ道とやらはここからは見えない。芝のような草が生えているが、中央寄りに歩くことが多いのか、その部分は固い土がむき出しになっている。この道幅や路面を見るに主な交通手段は自前の二本の脚なのだろう。

 道の両縁には建物があるが、それぞれは建物と同じかそれ以上の間隔が空いている。建物自体は平屋と二階建てがあり、付随で小さな小屋のようなものもあるが全て木製のようだ。

 建物の間にある空間には、たまに菜園のようなものを見るが、ほとんどは背丈の低い草に覆われ活用されている風ではない。おまけに垣根のようなものが無い。土地の所有権をめぐっての争いはないのかな、不思議な感じがする。


 出歩いている人はそれほど多くない、先程の人を含めれば両手で数えられるほど。誰もが似たり寄ったりの背格好、身に着けている物はローブや貫頭衣ようなものが殆ど。二人ほど弓を手に持ち剣のようなものを腰に下げている。

 その全員が森人である。うすうす感じていたけど、ここは森人中心の里らしい。

 弓を持っていた一人が真っ赤な髪をしていたが、あれは異人(プレイヤー)だろう。ほかは黄系統である中で浮いて見えた。

 ……何気なく髪を一房摘まんで目の前に。萌黄色を目指したの髪の毛が目に映る。うん、「黄」と付くしこれは黄系統、問題ない。すれ違った人が視線を向けていた気もするが気のせいだろう。もしくはただ単に知らない人を見たせいだろう。……心の購入予定リストに帽子を追加しておく。


 気持ち早足になるとすぐに、先程教わった雑貨屋があるという右への分かれ道に差し掛かった。


お読みいただきありがとうございました。



次の更新も時間が掛かりそうな予感です。一か月以内を一応の目安とさせていただきます。


一か月どころではなかったです。申し訳ございません。


2018/9/25 一部表現や誤字等修正のため改稿。


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