プロローグ
本屋で立ち読みをしている。
今読んでいるのは異世界ハーレムチート系。主人公にしかないユニークスキルで敵を倒していくお話。そんでもって女の子と仲良く物語を進めていくとてもおもしろい作品だ。
『やっぱり異世界には夢があるよな。』
本を読み終えた俺は、戸棚に本を戻し家に向かった。早く途中まで書いた小説の続き書かなければ。
これから先はどうしようか。女の子とどうやってくっつけようか。それともライバルを出現させて戦わせようか。
そんなことを考えながら横断歩道の信号が青になった。目の前に横断歩道上で止まってしまったトラックを邪魔に思いながら渡っている時、悲劇が起こった。いや、もしかすると俺からすれば幸運だったかもしれない。
トラックの後ろを通過し終えた瞬間、対向車線から猛スピードでこちらに向かってくるバイクを見た。やばい、動けない。バイクと体が当たるまで、後数センチ。そこから光を失ったように俺の視界は閉ざされ、思考は闇に落ちていった。
ものすごく頭が痛かった。まるでフライパンで頭を叩かれるような、そんな痛みのせいで目を覚ました。周りを見渡すと、そこには俺を優しく見つめて微笑んでいる男と女が居た。そして女に持ち上げられた時に俺はようやく気がついた。自分が死んで生まれ変わっているということに。
ここは竜騎士の国アラドラの辺境にある、小さな村カヤック。俺の第2の人生はここから始まろうとしていた。