第五十三話 親子
今回短いです。
「離しなさい!命令よ!何処に連れて行くの!?嫌よ!」
どうやら本命が来たようだった。
「ただいま連れて参りました!」
「下がってよいぞ」
「ハッ!」
騎士はカイゼルの言葉に従い部屋を出ていった。
そして話題の王女様はと言うと、直樹達の方を睨むように見てきた。そこにいることすら認めないような目付きでだ。
「お父様!何故そのような愚民達がここにいるのですか!」
「クリスティーナよ。お前に訊ねたいことがあるのだ」
「何でしょう?私が答えることができるのならお答えします」
カイゼルが咎めるように聞いた。だが、クリスティーナは状況を掴めているのか堂々とした態度で言い返した。
直樹達はまだ何も言わない。ここはカイゼルに任せ、どうしようも無くなれば動こうと決めた。
理由としては、自分達は会話の駆け引きなどできないからだ。わざわざ相手の得意分野で戦っても相手にいいようにされるだけだ。それなら他の得意な人に任せた方がいいに決まっている。
という自分達への言い訳を思い浮かべながらながらじっと黙って話の行く末を見守っていた。
「では、まず1つ目だがこの者達に見覚えはないか?」
カイゼルがそう言いながら直樹達と暗殺者達、そしてビビを見た。アルフィンに見なかったのは、テラーブル帝国の第一皇子と分かっているからだろう。
「いえ、誰一人ご存じございません。先程も言いましたよね?愚民達と」
最後には嫌みすら付け加えてクリスティーナは答えた。どうやら直樹達は召喚者だがいなくなったので愚民に降格したらしい。
聞いていた直樹達5人ははムッと眉をしかめるが、他の人達はそう答えるのがわかっていたようで普通の表情だった。
それを見てやはり俺達には駆け引きは向いていないなと直樹は思った。
「そうか。2つ目だが最近お前は誰かを恨んだりしたか?」
「いえ、特にありませんね。むしろ王族と言うだけで恨んでくるお方がいるかもしれませんね」
またしても一言嫌みを付け加える。だが今度は直樹達も耐えることが出来た。それだけでもちょっと嬉しく感じてしまう直樹達だった。
「それではこれで最後の質問だが、これらに見覚えはないか?」
そこでカイゼルが見せたのは1つはビビに着いていた『隷属の首輪』で、もう1つは男の死体だった。
直樹達も『隷属の首輪』は何故取り出したかはわかる。先程カイゼルに説明した時に渡したからだ。だが男の死体に関しては知らなかった。だから直樹は隣にいる良平に小声で聞いた。
「(なあ、あの死体って一体誰だ?)」
「(俺も分からないんだよね…)」
「(俺は知ってるぞ)」
後ろにいた宮本がニョっと顔を前に出し言った。
「(マジかよ!?誰なんだ?)」
「(と言うよりも覚えていないお前が意外なんだが…)」
宮本は死んだ男に憐れむような目を向けてから答えた。
「(あの男は俺らと同じ召喚者だ。元クラスメイトの周防息吹。俺らと一緒に行動したかったようだがお前が断った男さ)」
「(え?マジで?そんな奴いたっけ?)」
「(奴は影が薄かったと言うよりも、目立つタイプでもない俺らと似たようなタイプだったからな。良平が覚えていないとは思わなかったけどな…。まぁ佐東はわからんが、智哉は覚えてるんじゃないか?)」
直樹は同じ事を佐東と智哉に聞いた。
「(ん?そんな奴いたか?)」
「(あー言われてみれば彼に顔がそっくりだね。確かにいたね。けど、どうして死んだんだろうね?)」
前者は佐東で、後者は智哉である。宮本の読みは正しかった。ただ直樹は智哉が言ったどうして死んだのかそれが気になった。
「知らないって言っているでしょう!!」
「そうか。あくまでシラを切るか。ではこの者を殺した者を呼び出そうではないか」
直樹達が男のことを話しているとカイゼル達の話が進んでいた。どうやら男の話のようだった。
カイゼルがモルガンに何か耳元で言うとモルガンが部屋を出て行った。
「暫し待て」
それだけ言ってカイゼルは黙った。直樹達も黙った。だが暗殺者達の中の数人はゴニョゴニョと話しているのが見えた。アルフィンやビビは必要な時以外喋らないので今も黙りだった。
それから数分後モルガンが騎士2人と男1人と戻ってきた。騎士2人は近衛騎士団団長のマックスと副団長のエリーナだった。その2人に抑えられながら男が歩いている。その様は大罪人のようだった。
「ただいま連れて戻りました」
「ありがとう。最後に聞くぞ?クリスティーナよ本当の事を言うつもりはないか?」
クリスティーナの始めにあった余裕が、どんどん無くなっていることに直樹達は気付いた。
どうやら連れてこられた男はクリスティーナにとって問題のある奴らしい。暫く沈黙の時間が続いた。そしてクリスティーナは答えた。
「私は何もご存じありません…」
最後の方の言葉は掠れて聞こえなかった。ただしそれを聞いたカイゼルがこめかみを押さえながら首を横に振った。
「お前は最後のチャンスを棒に振ったか…。娘可愛さに私はお前の悪事を知っていたが止めることは出来なかった…。だが今回の事で私も腹を括ったよ。残念だ」
カイゼルは本当に悲しそうな顔で言った。
「刑を申す。クリスティーナ=ロゼフォール=ラスウェルよ。お前は禁固20年だ。連れていけ」
「「ハッ」」
自分の娘に言うのは苦しかったのだろう。カイゼルを見ると先程までは30歳そこそこに見えたが今は40歳後半に見える。
「お父様!お父様は騙されているんです!止めなさい!触らないで!」
クリスティーナの声がどんどん遠ざかっていくのをただ黙って直樹達は聞いていた。
ちょっと以上にグダグダに感じたかもしれません…
すみません…上手く表現が出来ません…
次回の更新は2月25日の20:00頃を予定しています。




