第四十七話 正体
誠に申し訳ありません。
言い訳をさせて頂くと自動車での技能本免試験が受かった為安心して昼寝をしてしまったのが原因です。
読者の皆様本当にすみませんでした。
直樹達がたどり着き中で見たものは一条とアルフィンの決勝戦だった。
「ふぃー。なんとか間に合ったみたいだな」
「途中のやり取りがなければもっと早くに着けたはずなのに」
直樹がかいてもいないのに汗を拭う仕草をしながら言うと、不満そうに良平が呟いた。
良平がそういうのも当然で直樹達は(達と言っても直樹、宮本、佐東の3人だが)道中があまりにも暇なので出てきた魔物をどれだけ倒したかという遊びをしながらやって来た為ギリギリな時間になってしまった。
正直出てくる魔物が多すぎて途中で止めるという話も上がったが、それを言った直樹は宮本、佐東から判りやすい挑発をされ見事に乗ってしまった。良平、智哉も止めようとはしたが3人が暴走してしまったので無理だと早々に諦めて、魔物を虐殺しているのを眺めるだけだった。後に2人は悟りが開けた瞬間だったと語る。
「にしても2人共いい勝負してんな」
舞台を見ながら直樹が羨ましそうに、でも嬉しそうに言った。
一条が真正面からアルフィンに斬りかかるとそれを受け流すようにアルフィンも剣を合わせる。そこで一条の体勢が崩れてしまうかと思われるが受け流されるのは予想済みだったようにそのまま流されアルフィンが胴を狙って斬りかかってくると、体を捻らせて躱しそのまま側方に飛び距離を取った。
「剣術ではアルの方が上かな?」
「でも一条はまだ身体強化してないからどうなるかわかんねぇぞ?」
良平と直樹は試合のことに対して話をしていた。
「俺はアルが勝つ方に金貨1枚」
「じゃあ一条に俺も金貨1枚賭けよう」
「そこは普通、何日分の昼飯代とかじゃないの!?金貨1枚は高すぎない!?」
だが宮本、佐東は試合のことなのだが何故か賭博の話になっていた。それに相変わらず智哉がツッコミを入れるが2人共無視して聞き流し――――流さなかった。
「智哉何を言っているんだ?」
「そもそもこの試合に決着は付かないんだろ?」
2人ともそこで同時に息を吸い込み1度ニヤリと笑ってから言った。
「「だって襲撃されちゃうんだから!!」」
2人は智哉が絶対何かしらのツッコミを入れてくるとわかっていて賭け事の話をしていた。すると案の定、智哉がツッコミを入れてくれた為にそこから逆にツッコミを返した。その返された本人はというと…
「ウォォォォ…。まさかこんな奴らにツッコミを返されるなんて…」
まさしくorzの格好になっていた。ただ智哉の言葉を聞いた2人はツッコミ返しを成功させた喜びよりも、「こんな奴ら」と思われていたことに衝撃を感じていた。智哉が自分達を「こんな奴ら」と見なしていると思わず2人も智哉の横でorzの格好になっていた。直樹と良平は隣が静かになったことを疑問に思い、隣を見てみると落ち込んだ3人がいるので2人で顔を見合わせてみても何も判らないので放置しとくことにした。智哉は気付いていない。自分も今は「こんな奴ら」と見なされていることに。
宮本達が変な事をしている間に一条とアルフィンの試合も局面を迎えていた。
距離を取っているアルフィンが得意魔法の『ライトニング』を詠唱省略し矢継ぎ早に放っていく。それを一条は身体強化を用いて放たれる瞬間にその射線上から飛び退き少しずつ間を詰めていた。
「どちらの魔力が持つかかな。それか一条があの『ライトニング』を攻略して接近するかでもあるかな」
「俺の見立てだとアルの『ライトニング』が攻略される方だな」
「へぇ~。それは何で?」
「一条の動きを見てみろよ。少しずつ躱すタイミングが合ってきてるし、それにそろそろ仕掛けるっていう表情してんぞ」
直樹がそう言って、アルフィンが『ライトニング』を放ち、一条がそれを躱すと同時に前に出ようとした時だった。
闘技場の直樹達がいる場所とは反対側から声が響いた。
「おーおーやってるねぇー。ちょっと俺らも混ぜてくんない?」
直樹の容姿をした奴が喋ったようだ。以降、容姿が似た奴らを偽~とする。それに続いて隣にいる、偽良平が喋った。
「俺を退学にさせるくらいなら壊しちゃってもいいよね?まずはそこでいつも近くに来てうざったかったアルフィン=ネムスレッド=テラーブル第一皇子から殺っちゃおうかな!!」
そして喋り終えたと同時に偽良平は飛び出し舞台上に降りた。それに続くように偽直樹が手で残りの偽宮本、偽佐東、偽智哉らに合図を出して3人は散開し偽直樹は舞台上に降りた。
他の生徒は突然現れた偽直樹達に罵詈雑言を浴びせていく。その生徒達には偽宮本、偽佐東、偽智哉が接近し攻撃し黙らせていた。
罵詈雑言が悲鳴に変わりA、Sクラスの生徒や先生が出張っているのが見える。観客席は慌ただしい雰囲気だが舞台上は静かだった。
「やぁアル。1日ぶりだね。決勝まで行くなんて凄いね」
「リョウヘイ?お前はリョウヘイなのか?」
「ほら。しっかり良く見てみなよ。別人に見える?」
偽良平がその場でクルンと回る。襲撃してきた直樹達は全員が制服を着用していた。基本、顔か手しか見えないので、本物にしか見えなかった。
「良平君!何故戻ってきたんだ!!」
「何故?そんなの決まっているよ!俺は退学にされた腹いせにこの学園に復讐しに来たのさ!!まずはランキング戦を滅茶苦茶にしてやりたくってね」
「君はそんな人間じゃないはずだ!一体どうしてしまったんだ!!」
「一条に何がわかる?何もわからないだろう?」
どんどんヒートアップしていく口論に痺れを切らした偽直樹が声を出した。
「御託はいい。さっさと殺るぞ」
「ふぅ。わかったよ」
偽良平はやれやれという感じではあるが頷いていた。それからの2人の行動は早かった。偽直樹は一条に攻撃を、偽良平はアルフィンに攻撃をし始めた。偽直樹は片手剣で斬りかかり、偽良平は短剣で斬りかかった。
このままではまずいと事態を見ていた直樹達も思い、まず落ち込んでいる3人を良平が渇を入れ起こし、直樹が各個撃破とだけ伝える。そこには捕縛とは言わなかった。正直5人は自分達の格好で襲撃事件を起こされご立腹な状態だった。その中で実際に見ると今まで殺人はしてこなかった(機会が無かった)が今回に限っては我慢する必要は無いと判断した。最終的な判断は各々に任されることになるので文句も無い。
その意味が全員に伝わり頷いてから行動開始の合図を出した。手ではなく口頭でだが。
「行くぞ!」
「「「「おう!!」」」」
直樹と良平は観客席から舞台に飛び降りた。他の3人は生徒を襲っている偽の自分達の所に駆けて行った。
飛び降りた直樹は先の偽直樹と同じ言葉を発した。
「おーおーやってるねぇー。ちょっと俺らも混ぜてくんない?」
突然の本人の登場に偽物達の動揺した表情が見てとれる。一条とアルフィンは同一人物が現れどうすればいいか迷っているようだった。
「お前ら何者だよ?」
直樹はこの学園に来てから殺気も混ぜた1番怒った声で聞いた。聞く者が聞けば恐怖で腰が抜けるだろう程の声だ。これにはあまり聞こえないであろう観客席の生徒達ですらもその殺気に怯え止まった。
「俺の名前はナオキだ!!」
偽直樹が答える。その瞬間にこの偽直樹の運命は決まった。
「あっそ」
素っ気ない言葉と同時に放たれた斬撃。気力と魔力を織り混ぜた特殊な斬撃だった。その攻撃は偽直樹を一瞬で切り飛ばした。
「んで、お前は?」
次は偽良平に直樹が聞いたがそれは良平に止められた。
「君は誰かな?」
直樹と同等の殺気を放ちながらも、静かな声で良平は聞いた。
「はぁーあ。本人登場とかマジで萎えるなー。私はねー、君達にわかりやすく言うならビビ、だけど本名は木村菜々だよ。よろしくねー」
直樹と良平も愕然とし、また同じ召喚者である一条も愕然とした。
次回の更新は2月15日の20:00頃を予定しています。
しっかり間に合うように致しますので、これからも読み続けて頂けたら幸いです。




