第四十六話 走れ◯◯◯
タイトルふざけました。すみません…
光が収まり目を開くとそこは昨日同様の昼間の森だった。
過去に戻ると言っても過去の自分達と出会うことはない。その時の自分が今いる自分の方に置き換わる。だから1日半には森にいた直樹達はもう今ここにいる直樹達になっているということだった。
それぞれが動きなどに問題がないか確認し
「そんじゃ、学園に戻るとするかね」
「特に反対もしなかったけど、どうして1日半しか戻らなかったの?2日半にすれば退学も免れることは出来たよね?」
良平が抱えていた疑問を問い掛けた。それに対して直樹は少し悩んでから答えた。
「うーん…まぁ悪いと思うが学園生活に飽きたってのが1つ。寿命を対価にするわけだからあまり戻りたくなかったってのが1つ。自分達が2日半前にいたのは学園だったからどうやって戻るか考えるのが面倒臭かったのが1つ。そして、俺達の真似するやつを真正面から叩き潰したいからだな。それなら一々探す手間もかかんないだろうし、やることはハッキリするから簡単だろ」
直樹が悩んだのは良平に正直に学園に飽きたと言うかだった。悩んだ結果正直に言った。そして言い終わって良平の顔を見ると、いつもの優しい表情で頷いていた。
「怒ってないのか?」
「まぁ、多少残念かなって思ったけど別に薬学とかなら自分で本を購入して学習すればいいしね。それでも嫌って言うなら自分だけで過去に戻ることも出来るわけだし。しないけどさ。あくまでリーダーの決定に従うよ」
最後には笑みを浮かべながら言った。その表情には不満が1つも見当たらなかった。
「時間が無くなるし一気に走り抜けるか!」
「ちょっと待て」
直樹が即刻たどり着くために魔法を使おうとすると宮本が呼び止めた。
「んだよ?」
「このまま学園に行ってどうする?俺達はもう学生じゃないんだぞ。不法侵入じゃないか?」
「そういう時の"隠密"だろ?」
「それでも不法侵入にはかわりないんだがな…」
渋々という感じで引き下がった。納得はしていないようで難しい顔はしているが、方法は少ないということも理解しているのだろう。
直樹達が学園で「これから襲撃されるぞ!」と言っても先日のような態度ならまず間違いなく相手にされない。それが全員分かっている。分かっているからこそ宮本は引き下がった。
「今度こそ行くぞ!」
「待て!」
再度魔法を使おうとしたら今度は佐東に呼び止められた。
「今度は何だよ!?」
「そろそろ装備しないか?」
「た、確かにそれは重要だな」
そう言って直樹達は魔法を唱えた。『完装
』と。
完装───完全武装の略であり魔法名とした。どうやって武装するかと言うと時空魔法を用いて別次元に装備を置いてあり、その状態のまま自分に転移させるという魔法である。何よりもイメージが大切で、少しでも他のことを考えるとパンツ一丁になったりする。
完装と同じように力を使い『ボックス』という別次元にアイテムなどを入れておく魔法もあるが、普段は良平の持っているアイテムボックスを使用している。一応の非常食や衣類が入っているだけでこれから増えるかは未定である。
全員が赤に少し銀色が入った感じの装備だった。
それは以前出て来た赤竜から獲れた素材にミスリルという銀色光沢を持った魔力親和力が高くそこそこ硬い金属を用いて作られたからであった。
それだけの物を使っているのでベルクに作って貰うと特殊級3等級になった。本人は伝説級2等級を作りたかったと嘆いていたが、特殊級だけでもかなりの物だと直樹達は思っている。
そして直樹達が装備している装備の見た目は…
直樹は全体的に軽めだけどしっかり防御できそうな装備を。剣はトリニティブレイドから変わってはいない。
良平と宮本は似たような感じで、ラメのように銀色に所々光っている赤色のローブを来ていた。正直目立っているが本人達は防具自体は良いものだからこのままでいいとのこと。
良平の杖はミスリルを主でその中に赤竜の爪を磨り潰して混ぜて強度を高めた。色は鈍い色の銀だ。
宮本は槌なので重さに重きを置きミスリルを圧縮し杖と同じで爪を磨り潰して混ぜた。
佐東は動きやすい防具を望んだので、赤竜の翼膜を使い動き易さに特化した防具になった。色は薄い赤で橙色みたいな色に見える。それに黒色で染色し、暗闇でも大丈夫なようにしてもらった。何気にこの染色が大変だったそうだ。
智哉は赤の鎧や盾といった重装備で真っ赤である。重装備という見た目に反し、結構軽い。赤竜の素材がそのまま生かされておる防具である。
「いやー、久し振りに装備したな」
「装備する必要あんまり無いからね」
「今回も必要か?」
「インパクトは与えられる」
「正直言って過剰戦力だよね」
宮本と智哉が言ったように今回はそこまで必要性はないと全員が思っているが佐東の言いたいことも十二分に理解できるので装備したままで行こうという話になった。
「次こそは行くぞ!」
直樹はそう言って智哉の方をチラチラと見た。しかし智哉は何も言わずただ見つめ返してくるだけだった。
「何か言えよ!!」
「言って欲しいの!?」
理不尽に切れた直樹に智哉はツッコミを入れる。周りの4人はそれを見て溜め息を吐くのだった。
「本当に行くぞ!」
「………」
「本当の本当に行くぞ!!」
「………」
「本当の本当に言っちゃうんだぞ…?」
「随分弱気になったな!?」
「「「早く行けよ!!」」」
直樹がふざけていると智哉のみならず他の3人からもツッコミを貰った。ツッコミを貰った直樹が嬉しそうにニヤァァァと笑うと4人から殴れたのは言うまでも無いだろう。
そして殴られた直樹が回復してから本当に学園へ向かった。
森の中でも"隠密"を使い敵を避け、魔法を用いてスピードの底上げをしていた。
『ウィンド』という風の魔法があり、これは掛けられた人の敏捷が上がるという効果がある。それに直樹達は改良を加え、敏捷がより上がる様に考えまた空気抵抗を防ぐ風の膜を作りよりスピードが出るようにした。
その魔法の名は『ウィンド改』だ。改とかにしておけばわかりやすいだろうと思ってこの名となった。ダサいとか思わないで欲しい。この世界にはそれこそ数百個と言った魔法があるのだ。それらの魔法に加えて自分達が創る魔法の名前を全て覚えるのは容易ではない。その為安直な名前にしたのだ。
そしてものの僅か数分で森から出て、街まで走った。先頭は佐東。それに続くように直樹、良平、宮本で最後尾は敵がいつ襲ってきても大丈夫なように智哉となっている。単に遅いという理由もあるが…
「そろそろ街と壁が見えてきたから学園がある西側に回り込んで壁から侵入するぞ!!」
直樹が先頭を行く佐東に聞こえるように声を出し、それに佐東は「承知!」と答えた。
"隠密"を使って壁に沿いながら走る。そある場所まで行くと直樹が「ストップ!!」と声を出した。
「ここら辺ぐらいからボチボチと壁を登っていこう」
「「「「了解!!」」」」
そして壁を脱走したときと同じ要領で登り壁の上を走り出した。
壁は1~2mと分厚いため直樹達でも安全に走ることができた。と言ってもずっと気力を使っているので幅があっても無くても変わらない。
そして走り続けていくと学園の敷地だとわかる、寮が見えてきた。寮は闘技場とは逆の位置にある。それがわかっているので壁を降りて寮から闘技場に向かった。
直樹達は闘技場に着いて見回りの先生もいることに気が付き下がダメなら上からということで、天井というものが存在しない闘技場を壁を走り上から侵入した。
直樹達がたどり着き中で見たものは一条とアルフィンの決勝戦だった。
次回更新は2月13日の20:00頃を予定しています。




