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いつもの仲間と異世界道中!  作者: ミドリムシ
学園編
43/70

第四十二話 ランキング戦 予選

遅くなってすみません…


そして先程の教頭が話をして、予選が始まった。


第1予選に出場するSクラスの生徒は一条とキルロだった。2人にあまり緊張した様子は見えない。それはあのダンジョンの訓練以降にそれぞれが努力してより強くなったからだ。


直樹達も手伝った。直樹達の指導が終わる度に倒れていた。それほどSクラスのメンバーが頑張っていたのは知っているので是非それが実って欲しいと思っている。


A~Gクラスの生徒も集まり後は審判である先生の開始の合図を待つだけとなった。他の生徒は闘技場と言うだけあってコロッセオのような感じになっており、沢山ある椅子に各クラスごとに座っている感じだった。ただ次の試合がある生徒は待合室で備えて待っている。


そして今直樹が見ている舞台上ではそれぞれのクラスで固まっているのが見えた。バトル・ロワイアル形式なら協力して自分達より強者を倒すのも1つの手だろう。それは作戦であるから誰も咎めるものなどいない。勿論それは一条とキルロも同じで近くで話し合っていた。


生徒達の武器は訓練用になっていて、刃はしっかり潰してあるのでもし切りつけられたとしても打撲程度で済む。酷い場合は水、光属性の回復魔法が使える先生が控えているから魔法で治すらしい。


そして少し経ち審判が全体を見回してから声を出した。


「それでは第1予選始め!」


全員が動き出すかと思いきや誰も一歩も動かなかった。


いや動き出した者はいた。それは舞台の上にいる者では無かったが…


『いやー、始まりましたね!まずは様子見と言ったところですかね?あ、実況は私宮本と』


『佐東でお送り致します!』


依然直樹達が使うかは分からないが創った拡声魔法を宮本と佐東は使った。


ここまでは誰もが呆然としているだけで誰も動けずにいた。だが、佐東は急に声のトーンを低くしてから全員に(先生も含め)言った。


『文句があるやつは掛かって来い。俺達を負かせる事が出来るのなら止めてやる。ただやる理由は暇だからっていうだけだからな』


これに対して動いたのは教頭(マリアに確かめたら教頭だった)と直樹と良平だった。智哉は仕事の持ち場を全員で離れる訳にはいかないと考えて待機し、マリアとSクラスのメンバーはやれやれと呆れたように首を振り、それ以外の人はどうすればいいか分からずにあたふたとしていた。


「こら!君達!馬鹿なことをやってないで持ち場に戻りたまえ!しっかりと与えられた仕事をしないか!」


教頭は予想通りに注意を呼び掛ける為だった。だがそんな注意を受けるのは予想済みだった佐東は突っぱねるように言い返した。


「しっかり仕事はしている。見てみろ。あそこに俺らの影がいるじゃないか。あれは何か試合中に違反行為が見られたら俺らに知らせるようにしてあるから問題ない。どうだ?文句あるか?」


佐東は自分の闇魔法で作り上げた影で出来た分身を指した。そして自分でも満足のいくできなのを再確認し挑発するような目で教頭を見た。


だがその言い方や目に腹を立てたのか、それとも言い負かされそうで恥を感じたのか、顔を真っ赤にして唾を飛ばしながら教頭は言い返してきた。


「う、うるさい!生徒は黙って私ら職員の指示に従え!従わなかったら退学させるぞ!」


退学させると脅されても佐東はどこ吹く風という感じで真に受けなかった。いや、真に受けなかったというのは少し違う。真に受けてもどうでもいいのだ。


実際に佐東は学園に来た理由が特にない。直樹達との多数決で決まってしまった。ただそれだけである。だから別に退学されても問題ないので普通に答えた。


「あっそ。じゃあすれば?俺はどっちでもいいぞ?そしたらこの退屈な仕事ともおさらばできるしな」


それに待ったを掛ける人がいた。


「流石にそれは俺が困るよ。分かってる?佐東?」


この学園に来て色々なことを学びたいと考えていた良平だった。


「俺はまだ学び始めたばっかりで全然理解してないことが多いからまだいたいんだけど駄目かな?」


少し語気を強めながら佐東に問い掛けた。直樹は冷や汗をかいている佐東を見ながら周りの状況を確認した。


他の人は今の状況を把握しきれていなくただ黙ってみているだけだった。一応試合は始まっているのだがそれで良いのだろうか?と直樹は考えながら佐東の言い訳を待った。


「い、いや、そそそれはだな…あ、あれだよ……はい、すみませんでした。退学は言い過ぎでした」


直樹の予想を裏切り佐東は素直に認めた。それにより良平の機嫌が戻り、教頭に向かって言った。


「教頭先生。あいつは馬鹿でアホですが、ふざけてやった訳では無く、ランキング戦を盛り上げようとしていたのだと思います。しっかり仕事もするようですので多目に見てくれませんか?」


下手に出て問い掛けると教頭もあまり強く言い返してはこないが、しっかりと釘だけは刺された。


「ま、まぁ、しっかりと仕事もするようですしいいでしょう。しかし、少しでも問題があると思ったら即退学させますからそのつもりで!」


「はい。それで構いません。聞いてたよね?佐東?」


良平が圧力を掛けながら再度問い掛ける。それに佐東は高速で何度も首を縦に振っていた。


教頭は打合せした場所に戻り、良平も先程の場所に戻った。だが、直樹は残っていた。


「俺も混ぜて~」


直樹が甘えるような声で言った。


「キモい」


「ウザい」


しかし、2人にはおきに召さなかったようだった。


「駄目とは言わなかったからいいよなー」


直樹は何も言われなかったと思うようにして、挫けそうになった心をなんとか立て直した。


「ってかさ、一体いつ実況しようって話し合ってたんだよ?」


さっきから抱えていた疑問を訊ねる直樹だが、宮本はマイクを持って叫んでいるようなポーズに、佐東は解説をするような人のポーズになるだけだった。


「いや、つまりどういうことだよ?」


分からなかった直樹がもう一度訊ねると今度はしっかり答えてくれた。


「持ち場に着いた時、佐東の方を向いたら視線があってその時に今したようなジェスチャーをしたら2人同時にやろうって思った」


「俺はもうするしかないなとまで感じた」


変なところでシンパシーを感じる2人を見て直樹ですら呆れたような表情になった。だが自分も実況をやりたいのでその仲間なのかと考えると、どういう表情をすればいいのかなどと割と本気で考えてしまった。


「それでは第一予選始め!」


そのせいで直樹達は舞台上で仕切り直しされていることが分からずに審判である先生が開始の合図を出してから気付いた。


「うわっ!始まっちゃうじゃん!佐東、俺の分の影分身よろしく!」


直樹が頼み、佐東は仕方がないという表情で影分身を作ってくれた。そして直樹達3人で軽い打ち合わせをしてからの実況&解説が始まった。


『それでは気を取り直して、実況の直樹と』


『同じく実況の佐東』


『解説の宮本が務めさせて頂きます』


誰からの反対も無いので直樹達は続けた。


『いやー、まだ誰も動きませんね。様子を窺いすぎではありませんか?』


『これは窺ってると供に牽制をしているのでしょう。ですがそろそろ動きそうですよ』


佐東がそう言うと実際に動くものがいた。


『あれはキルロ選手でしょうか?何やら口が動いているので魔法でも使うつもりですかね?』


『そうですね。おっと。キルロ選手を止めようと他の選手も動き始めたぞ!』


しかしそれは叶わなかった。キルロの前に一条が守るように出てきたからだ。


『一条選手が10人くらいを相手にしている!なんと鮮やかな剣術でしょうか!』


直樹が一条を際立たせるように言う。それにつられるようにどんどん調子が上がっていく佐東が言った。


『他の選手に比べて早い!早すぎる!Aクラスの生徒でも追い付けない!一条選手はイレギュラーだ!』


「「「「「イレギュラーはお前達だ!!」」」」」


しかし、他のSクラスのメンバーからツッコミが入ってしまった。そして心なしか一条の頬が赤くなっているように見えた。


『いえ一条選手だけじゃありませんよ。どうやらキルロ選手の魔法の発動準備が整ったようです』


直樹がSクラスからのツッコミを見事にスルーして言った。


『どうやらあれは、風属性の魔法ですね。それも中級じゃないでしょうか?』


それに宮本が解説を加えた。


その直後にキルロの魔法が発動した。それは風属性で、小さいが嵐を連想させる魔法だった。


『あれは「ハリケーン」だぁ!キルロ選手は中級の魔法を使用したのに疲れた表情を見せていないぞ!』


実際に舞台上ではその嵐が他の選手に近付き回避、若しくは防御出来ない選手はどんどん飛ばされていく。


「ウワァァァァァ」

「ヒェェェェェ」


37人いた筈なのにそれが過ぎた後にはたった人10人程になっていた。一条とキルロは無傷である。他の選手はどこかしらに傷を負っていたりするのだが。


そこからはもう一条とキルロの独壇場だった。一条が接近戦を仕掛け、キルロは遠距離から魔法を放つ。キルロは別に魔法が大得意でも無かったのにしっかりと役割分担をしたらしい。時々近付いてくる敵にはキルロも接近戦をしていた。


それが10分程経った頃、勝者が決まった。


『『決勝トーナメント出場者は一条選手とキルロ選手に決定だぁぁぁ!!!』』


直樹と佐東の息が合った。宮本はあまり解説することが無くて不満顔だったので、それはまぁ仕方ないと言うと、


「お前のせいだろ!」


と、至極全うな正論を言われたため、直樹は次からの実況&解説は宮本と佐東だけでいいと言い残して持ち場に戻った。


そして第二予選が始まり、それからはそこそこ真面目に仕事をして第八予選まで終わったのだった。




次回の更新は2月5日の20:00頃を予定しています。


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