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いつもの仲間と異世界道中!  作者: ミドリムシ
学園編
41/70

第三十九話 続 親睦と誤魔化し


直樹は微笑して自分の寝るところを探すのだった。


ダンジョンで一夜(大体の感覚)過ごして食事を取った。直樹とリックは携帯食料で黒パンに干し肉だ。どちらも固くて美味しいものでは無いが動くためには食べない訳にもいかずただ黙って食べていた。


一方キルロ達はと言えば白パンに野菜や肉が入ったスープを食べていた。白パンは黒パンよりも柔らかく美味しいのでやや高価だ。スープは何と意外にもガルロが作ったようで、尻尾を振りながら調理している姿は犬のようだった。本人に言ったら間違いなく噛まれるので言わないが…


4人は仲良く食べていたのだが、時々直樹の方をチラチラと見てきていた。それに直樹が気付かない訳も無く、そちらの方を向けば目を逸らされる。何回か同じことが続いて、とうとう相手方が折れたというよりも決意したような顔付きで直樹の元へ来た。


「なぁ。今更だが一緒に食べないか?ほ、ほら。こっちに来たらスープもあるしさ」


そのキルロの態度は他の3人も知っていたのか特に驚いた様子は無かったが直樹はキルロが昨日の態度のまま接してくれて嬉しくなり笑みを浮かべながら答えた。



「おう!食べようぜ!」


他の3人もホッとしたようであった。そして仲良く5人でキルロ達の居たところに移動しようとした。


「いいよな。お前達は仲良くできて…」


拗ねている声が聞こえた。そんな彼を全員が見て気遣い、声を掛けた。


「み、皆で食べようぜ?」


「ど、どうぞこちらにいらしてください」


「り、リックさんも一緒に食べましょう?」


「む、寧ろそちらの方が良いな。交流できるからな」


「し、ショボいけどな…料理としては…」


そんな直樹達の言葉にリックは喜び、笑顔で答えた。それも直樹が今まで見たことがないほどの笑顔で。


「ありがとう!」


直樹達は引きつった笑いを我慢し、自然に笑おうと頑張っていた。リックはそれに気付かずに、冒険者はあれだこれだと、今までで一番大変だった敵は直樹達だったとか色々話をして場を盛り上げ全員で食事を摂り寝る前には無かった良好な関係が全員と作れたような気がした。そして感覚的には2日目の訓練に向かった。


「ん~、昨日に比べたら少しは魔物がいるかな~」


「ナオキは魔物の存在を感じることができるのかい?」


気の抜けた直樹の声に怒りはせずにしっかり言葉を聞き、そこで得た情報を冷静に判断してからキルロは聞いた。


「ああ。そういうスキルがあるんだよ」


直樹はこう答えたが実際にはスキルよりも探索魔法を用いていた。探索魔法はレーダーのように広範囲に魔力の波を送り反応があったものを正確に特定することができるのだ。人や魔物、宝箱もわかるし壁の位置も理解できる。だが範囲は自分の脳が処理できる範囲内なので500m位が範囲だ。それ以上ならば"策敵"を使った方が精度は下がるがレベル1つにつき250m伸びるのでより広範囲を調べるときには効果的である。


「やはり君は凄いな…。できれば師事願いたいね」


「師事?教えて欲しいってことか?」


「君に教えてもらえたら誰よりも強くなれる気がするからね」


キルロの言葉に同意を示すかのようにリックを含めた4人が頷いた。だが直樹はあまり良い顔をしなかった。自分は人に物を教えるのが苦手だと知っているからだ。理論派ではなく感覚派。習うより慣れろのタイプである。だからいつも通りの言葉を言った。


「良平に頼んだ方がいいぜ?」


だがそれを言われた方は自分に教える事が嫌なのでは?と感じてしまう。今回もそうだった。


「僕に教えるのが嫌なのかい?」


だからお決まりの言葉を言う。


「そうじゃない。教えるのが苦手なんだ」


その時に苦笑いをしながら言うと殆どの人は引いてくれる。この事も直樹は理解して行っていた。しかし、キルロは甘くなかった。


「そんな事は百も承知だよ。だけど君に教えて貰いたいんだ」


まだ昨日知り合ったといっても過言では無いのにこの信用具合である。直樹はどうしてこうなった…、と頭を抱えたいのを我慢し言った。


「キルロは何で俺に拘るんだ?俺じゃなくてもいいだろ?」


「それは、あの、だな。君は僕に初めて…だから」


「ん?何だって?」


後半に行くにつれどんどん声量が小さくなり聞こえずもう一度聞き返す。


「だからだな、君は僕に初めて出来た友達だから」


「ん~?何だって~?」


「絶対今のは聞こえてるだろ!!」


「聞こえてたよ。だが1つ訂正をしておこう。お前の友達は別に俺1人じゃないぞ」


「え?」


「周りを見ろよ。いい仲間(友達)がいるじゃん」


キルロが周りを見るとローは苦笑いを浮かべ、セリヌッスは当然という顔で、ガルロは呆れたような表情でキルロを見ていた。何故かリックも期待したような目で見ていたが全員から無視をされ1人打ちひしがれていた。


「お前は真面目過ぎるんだ。もうちょっと緩く行こうぜ?」


「ああ。皆すまない…」


「すまないじゃないって。こういう時はありがとうって言えばいいんだよ」


いつぞやの自分の事を棚に上げて直樹は言った。


「そうか…。うん、皆ありがとう」


「うし!」


「これからもよろしくね」


「気付くのが遅いぞ」


「フンッ」


「別に無視されたからって寂しいとか思ってるわけじゃないもん…」


直樹は周りの反応を見て、


(いや~、危なかったわ。しっかり話が逸らせたようでなによりだ。正直どうしようかと悩んだな。何故俺に拘ると。上手く話が繋げられたし俺の勝ちだな。ただローとセリヌッスの反応は理解できるが、ガルロは可愛すぎだろ。尻尾が凄い勢いで揺れ動いてるじゃん。あれ、嬉しいってことで間違いないよな?ってかリックよ。お前はもう色々とダメだ。「もん」って何だよ。いい歳こいた男が言っていい語尾じゃねぇよ)


などと考えていた。直樹はしっかり自分の得するように動いていたのだった。


それから直樹が魔物の位置を教えて4人が狩り、1戦闘終わるごとに直樹がアドバイスを言うという風に進んで行き、ある程度時間が経ってお腹が空いてきたら休憩し、また奥に進んで、そろそろ戻らなくてはいけない時間に近付いているとキルロが判断し戻ることにした。それに直樹達の誰1人も反対せずに従った。リックが「俺の出番は…」などと呟いていた気もするが誰も気にせずに進んだ。


9層まで行ったので帰るのも大変だな~、と直樹は考えていたがガルロが通路に目印を残していたのでそれほど苦も無く戻る事ができた。


最後の方はまたゴブリンなどが出てきたが、キルロ達は苦戦もせずに楽々と倒していて自分達の訓練の成果を実感する事が出来たようだった。


地上に着くともうそこには夕方頃で他の班がキルロ達を待っている状態だった。そしてキルロ達が皆の所に着くとマリアが全員に聞こえる声で言った。


「全員揃ったな。それではこれを持って実践訓練を終わりとする。明日は休日だからしっかり休んで反省しておけよ!明後日は今回の反省を生かして武術や魔法の授業に臨むように。以上、解散!」


その言葉でそれぞれが帰路に着いた。直樹はキルロ達やリックと一言交わして別れ良平達が集まっている所に向かった。


「どうだった?」


そして開口一番にこれである。良平達も相変わらずな直樹を見て何故かホッとしていたりと2日間離れただけでこの反応だ。結構参ったことがあったのかもしれないと思った。


「こっちはね、本当に大変だったんだ。女子が周りに群がってきて色んなことを質問してきたよ…。でもビビだけは遠目から見て笑ってくるだったかな。ん~観察してるような視線は相変わらずだったけどね」


「良平は夜って言うのか分かんないけど、どうやって一晩過ごしたんだ?」


「1日1日戻ってきたよ。だから特に問題は起きなかったね。誰よりも俺が安心してたかもしれない…」


その女子達を思い出しただけでもゾッとするのか良平は震えていた。そんな良平を見て直樹は


(女子達の班じゃなくて良かった!!最初は男子班で嫌だと思ってたけど良かった!!)


と思っていた。何とも現金な男である。


「俺の方の女子達は特に何も無かったぞ?ただ俺の方を見て来たから見返すと何故かすぐに逸らされるんだ。そしてワーキャー騒いでいて、意味がわからん」


少し不機嫌な態度で言ったのは佐東だった。だがその内容はもしや!と思わせる内容だったので全員が喰いついた。


「お前何をした!?」


佐東が何かしたことは間違いないと断言した口調で直樹が聞いて、


「俺よりもそっちの方がいいなぁ。佐東君?」


自分よりも楽に感じて羨ましくなった良平がどす黒いオーラを纏って問い、


「佐東もフラグを建てたのか?一体誰ルートだ?」


宮本がどうなるか予想もつかないので興味深そうに聞き、


「もしかしたらこれで仲間が!?」


自分と同じで恋人が出来て仲間が出来ると思った智哉が興奮し、


「フム、帝国貴族に名を連ねるかもな?」


そこそこ冷静に考えたアルフィンが可能性の話をした。当の本人は全く気にしていないというよりも気付いていないので、ただ直樹達が迫ってきて?しか浮かばないのが残念でならない。


「佐東だからなぁ。まぁどうなるか見ものではあるけど佐東だからなぁ」


落ち着いてから直樹が言うと他の人も納得の表情で頷き本人だけ気付いていない。


「どういうことだ?」


「いずれわかる時がくるよ」


良平が諭すように言うと佐東もそれ以上は追求せずに首を捻りながら考えていた。自分で答えを出そうと頑張っているが全員が無理だなと思ったのも無理は無いだろう。


「宮本達はどうだったんだよ?」


直樹が大体は予想が付くが一応はという感じで聞いた。


「俺達は特に問題もなくただ進んだだけだ。意外だったのがアルの実力がCランクには届かないがDランク上位程にはあったんだよ。だから15層位でアルを戦わせてた」


「へ~。面白そうだな!!」


「もうあんなに戦うのはこりごりだ…」


アルの意識がトリップしそうなのでどんなことさせたんだと思いつつも、刺激を与えてはいけないと思い直樹は話題を変えた。


「最後に俺だが、キルロ達と仲良くなれたぜ!」


「なんか一番まともなのが腹立つんだが…」


宮本が不機嫌さを隠さずに言った。


「俺がいつも問題を起こすと思ったら大間違いだ!!」


「「「「「それはない」」」」」


ツッコミが早かった。いつもより1.5倍程早かった。


「うるせぇ!」


そう言って直樹は5人に襲い掛かる。最初の餌食になったのは一番弱いアルフィンだった。そしてアルフィンが終われば、智哉、宮本、良平と続いた。佐東は寮に着くまで逃げ切り事なきを得た。そしてやっぱりこいつらだなと直樹は思う。何だかんだ言ったりしたが自分も良平達を見た時にホッとしていたのだった。


そしてそれから日が流れ、翌月になった。


~???? Side~


「どう?順調?」


優しく問いかけられた。その声だけで自分がどれだけのプレッシャーを感じるかわからないだろう。


「完璧です。計画は予定通りに進行しています」


「そう。なら良かったわ。期待しているわね」


その期待だけで自分は頑張れる、と言い聞かせる。無理矢理言い聞かせる。後戻りはもう出来ない段階まできてしまっている。だから後はもう行動に移すしかない。


「では、例の部隊をお借りします」


「ええ、結構よ。その分しっかり仕事を果たしてもらうから」


「勿論でございます」


黒く光る首輪が一瞬月の明かりに照らされ鈍く輝いた。自分もその首輪に触れ従順であることを示すためにひれ伏す。この人を不機嫌にさせないために。


「もう行っていいわよ。後はよろしくね?」


頷いてから窓を伝って降りて夜の闇に消えて行った。


~???? Sideend~




私のお茶目な文章を分かって頂けましたか?

みどりむし、ですよ?


次回更新は2月2日の20:00頃を予定しています。


冒険者ランクとレベル基準

SSSランクー110以上

SSランクー90以上

Sランクー70以上

Aランクー50以上

Bランクー40以上

Cランクー25以上

Dランクー15以上

Eランクー10以上

Fランクー5以上

Gランクー1以上

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