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いつもの仲間と異世界道中!  作者: ミドリムシ
学園編
40/70

第三十八話 親睦

直樹が全員に呼び掛けると先程まで静かだった3人も頷き、ダンジョンを進んでいった。


「それにしても敵がいねぇ~な~」


呑気な声で直樹が言った。それに苛立ちを抑えられずにいるキルロが強い口調で言い返してきた。


「さっきからナオキ君は何なんですか?そんなに戦いたいなら単独行動でも良いですよ?」


「いや、そういう訳じゃ無いんだけどさ…暇すぎない?」


直樹がキルロにでは無く全員に問い掛けるように聞くと全員がそうだと思っているのか軽く頷いた。


直樹達はかれこれ3時間以上も交戦しないで歩き回っているだけの作業だった。何故かと問われると直樹は絶対にこう答えるだろう。


「宮本と佐東がやりました」


友を仲間を平気で売ろうとすら思える程の暇さ。面倒さ。こんなことになるなら昨日止めておけば良かったと何度も繰り返し思っている最中であった。


そんな直樹が今いる階層は8層であった。キルロは嫌々ながらも直樹にお願いしてきたのだ。


「最短で10層にまで行きたいのですが、お願いしてもいいですか」


それを直樹は快諾したたため8層まで来ていたのだが、6層の途中まではまだ1回戦闘があった。だが7層に来てから1回も戦闘が無くなりただ歩くだけの単純作業になってしまった。


こうなると黙っていられないのが直樹という男であった。そしてまた今回もキルロに怒られているのだったが他の人も同じ考えだった。


「じゃあさ、どうするよ?このままだったら気が緩んでもしもの時の対処が遅れちまうぞ?」


「気を引き締めれば良いだけです。何も問題ありません!」


すぐさま返答してくるのは直樹としてもからかいがいがあって良いのだが現在はそんな事よりも暇すぎた。それじゃあキルロをずっとからかっていよう!という訳にもいかずどうしたものかと考えていた。


「あのぉ~、今日はもうここで過ごすのはいかがですか?」


そんな中、弱々しい声で提案したものがいた。ローだった。


「それが良いと私も思うぞ」


「俺も賛成だ」


それにセリヌッスとガルロが乗ってきた。キルロは難しい顔をして一頻り悩んだのちに首肯した。


「分かりました。休みましょう」


そして近くにある小部屋に入り、一通り周りの危険が無いことを確認してからキルロ達はそれぞれ持っていた寝袋の準備を始めていた。直樹は持ち物を殆ど持ってきていなかったが携帯食料だけ持っているのでそれで何とかしようと考えた。リックも最小限の荷物だけだったようで直樹と同じような感じだった。そして少し時間が経ち落ち着いてから今まで疑問に思っていたことを直樹が唐突に聞いた。


「なぁ。なんでキルロがリーダーみたいになってるんだ?」


「僕に何か不満でもありますか?」


あるなら言ってみろよと挑発的な表情でいるキルロに直樹は苦笑してから言った。


「違う違う。ただここには貴族のセリヌッスがいるだろう?だから何故貴族のセリヌッスがやらないで平民のキルロがやってるのが気になってな」


「そう言うことか…それは僕よりもセリヌッスに聞いてみると良い。快く教えてくれると思うぞ」


直樹の疑問がまともだったため、キルロもいつもみたいな突っ掛かった言い方では無く落ち着いた雰囲気で言われた。


セリヌッスは小部屋の端の方で自分の武器である、片手剣にしては細い剣、所謂レイピアと呼ばれる剣の手入れをしている。その手付きは慣れたもので普段も自分で手入れしていることが伺えた。


「ちょっといいか?」


セリヌッスの隣に腰掛けてから問い掛けた。


「ぬ?ナオキ殿か。いかがした?」


「ど、殿ね。いや、あのさどうしてセリヌッスは貴族なのに班のリーダーをしなかったのかと思ってだな」


「その事か。それはな、私ではリーダーとしての器が無いと思っていたからだ」


「器?別に誰がやったって対して変わらないと思うが…」


セリヌッスはいやいやという風に首を振って答えた。


「それは違うぞ。私がリーダーをやっていたら戦闘での連携も上手くいかないだろうし、必要な役割分担が出来ないだろうからな。キルロは普段の生活、授業で私達の事をしっかりと見ていたからな。それに私は考えるよりも動く方が合っているからな。用は適材適所と言うことだ」


「なるほどな……何か思っていた以上にセリヌッスは貴族っぽくないな」


軽く笑いながら言うとセリヌッスも笑いながら


「そうだな」


と答えた。


「それじゃ、邪魔をして悪かった。セリヌッスとは良い関係が築けそうだな。よろしくな!」


「お前なら誰とでもなれるだろうさ。こちらこそよろしく頼む」


セリヌッスと握手をしてから直樹は立ち上がって次はローとガルロの所に向かった。


「よう」


「あ、ナオキ君どうしたの?」


「どうした?」


「いや、別にどうって訳でも無いんだけど、ちょっと親睦を深めたくてさ」


直樹がそう言うと2人はキョトンとした顔で直樹を見てきた。どうしたのかと首を傾げると2人が慌てて言った。少し離れているリックの方から「俺の時はそんな事無かっただろ!!」とか言われてる気がするが直樹は無視を決め込んだ。


「ちょっと、ちょっと意外だなって思っただけだよ!」


「俺もまさかそんな事を言うと思ってなかったからな驚いただけだ」


「え?俺のイメージって2人の中でどうなってんだよ?」


「それは、あの、えっと……恐い人……」


相変わらずおどおどしながらローは言い、


「絶対的強者で逆らった奴には容赦しないって感じだな」


当然だとでも言うように自信を持ってガルロは答える。


「ア、アハハハ、ハァ……そりゃねぇよ…」


予想していたが実際に言われると堪えるんだなと直樹は実感した。それと同時に何でこれまで自分が何故避けられているのかを完璧に理解した。だからここは自分のイメージ払拭を目指そう!と心の中で決めたのだった。


「俺はな確かに力を持っているから恐いかもしれないし絶対的強者かもしれないが、しっかり力の使いどころは分かってるつもりだ。今まで俺が力で解決したことがあったか?」


敢えて問い掛けるように聞くことにした。2人は考えていた。まずリックが口を開いた。


「だって、勇者の決闘の時とかあったよね?」


「あれはアル…アルフィンが俺達を巻き込んだんだよ…」


直樹もあれは望んでやった訳じゃないとしっかり説明した。すると、ローも成る程と納得してくれ「ごめんね」と謝ってくれ、直樹は「気にするな」と言って返した。そして1人目のイメージが払拭出来た!と心の中でガッツポーズをしていた。


「それじゃあいつも教室でお前が殴られたり、サトウが殴られたりしてるのは何でだ?」


「あれなー。あれはな俺や佐東がふざけすぎてるから制裁?を与えられてんだよ」


直樹が答えたがそれだけでは納得いかないようで更に聞いてきた。


「それは暴力と何が違う?」


「えーっとだな、あれは簡単に言うとじゃれあいみたいなもんで冗談を言ったりしてるだけなんだよ。ただその返しが殴るというだけであってそれ以外は問題ない筈だ」


「冗談か……俺もそういう関係が誰かと築ければいいな」


「ん?いるじゃねぇか」


「誰の事だ?お前か?」


「俺はまだ候補だと思うぜ?ほらローの方見ろよ。構って欲しそうな目で見てるじゃん」


ローを指差しながら言うとガルロもそっちを見るわけで、ローは恥ずかしくなったのか顔を背けた。


「俺には分からないんだが…」


「分かる、分からないじゃない!感じるんだ!!」


「「………」」


直樹がいつも通りふざけてみると2人は黙って見るだけで何もなかった。


直樹は思った。やっぱあいつらじゃねぇとつまんねぇなと。ここで乗ってくるのがあいつらだった。だが今、前にいる2人は驚くだけでつまらないとどうしても思ってしまう。2人は今日が初対面なのでそういう反応をするというのは理解している積もりなのだが、この世界で初て友人になったアルフィンと比べてしまうのだ。


「ウシッ!」


自分へ対しての怒りと2人に対しての申し訳無さを弾き飛ばすように自分の頬を叩いて渇をいれた。そんな直樹の奇怪な行動を見て2人は驚いていたが直樹は気にせず声を掛けた。


「これから仲良くしようぜ!よろしくな!」


そして2人に向かって右手を差し出した。その手を2人供交互に握ってくれた。


「よろしくね!」


「よろしく」


直樹は最後に親睦を深めたいと思っていたキルロの所に向かった。


キルロも端の方にいるのだ。理由としては端の方が落ち着くからと言っていた。誰も深く追求する気はないので問題もないのだが。


「キルロはまだ起きてるか?」


「ああ。何のようだ?」


明らかに不機嫌ですというオーラを出しているので直樹はどうしようか迷ったが一歩踏み出そうと決めていたので退かずに訊ねた。


「何でお前は冒険者が嫌いなんだ?」


するとキルロはいつもの冷静さからは考えられない程焦り、いつもの口調が変わっていた。


「っ!な、なんでお前はそう思うんだ?」


「ただ、やたらリックや俺に対する態度がロー達と比べると違うと思ったからだが、どうやら正解だったみたいだな」


「そうだ。正解だよ。僕は冒険者が大っ嫌いだ。そんな職業無くなればいい、と何度思ったことか。お前にはわからないだろうがな」


「わかんねぇわ。だから教えてくれよ」


「フン。つまらない話だがな」


「構わないさ」


そうしてキルロは直樹に対して話始めた。


「僕の父はBランク冒険者だった。小さい頃は良かったさ。明るく優しい父親だった。だが僕が7歳くらいの時に傷だらけになって帰って来てから変わった。依頼に失敗したってことを父の友達に聞いたよ。それまでは良かったんだ。傷が癒えてからというもの昼間から酒に溺れ、母さんにまで今まで1度も叩いたりしなかったのに叩き、殴り始めた。僕は何度も止めようとしたさ。あのクソ親父のせいで家の金が尽きそうだったから。だが止めようとすると殴って来て、止めて!って言っても止めてくれなかった。日に日に母さんは窶れて行き、とうとう家からいなくなった。僕には母さんまでも止める事が出来なかった。僕の家庭は冒険者だったクソ親父のせいで滅茶苦茶さ。それからは路頭に迷ったよ。金も無いし力もない。どうすればいいかとね。あるときに僕は貴族の人に拾われたんだ。どうも子供が産まれなかった家庭らしくてね。養子にはならなかったが実の息子のように育ててくれたよ。そしてこの学園に通わせてもらってるって訳さ。どうだい?つまらなかったろう?」


自嘲するように訊ねてきた。それに頷いて直樹は答えた。


「ああ。お前の話はつまらなかったな」


「だろう?じゃあ僕が冒険者にどういう感情を持ってるか、理解ししてくれたかい?」


「まぁな。だが俺はそれはお前の父親が悪かっただけであって、俺達には当て嵌めて欲しくないとは思ってるよ。しっかり冒険者としての俺じゃなくて、ただの俺を見て欲しいね」


「だが、君だってどうせいつかは僕の父親のようになるさ」


「そうかもな。じゃあもしそうなったらお前が俺を殴って正気に戻してくれよ」


「ああ。良いだろう。だが!僕は冒険者を認めない。しかしだな、少しはお前自身のことは認めてやる。確かに君は悪い奴では無いかもしれない。でもまだ見極めの段階だがな!」


そう言ってキルロは寝袋の中に潜った。もう直樹の方には向いてくれない。それでもこれで良かったのかな?とも思える気がしたので


「ありがとう。俺はさっきのお前の方がいつものお前よりもいいと思うぜ」


と、一言だけ言って立ち去った。


「うっさい。馬鹿野郎…」


そうやって言っていたように聞こえた。直樹は微笑を浮かべて自分の寝るところを探すのだった。



最近はあまりコメディー部分が少なくなっていると感じております。

やはりいつものメンバーがいなければ!と思っています。


次回の更新は2月1日の20:00頃を予定しています。


そして進行遅くてすみません…


訂正

直樹は微笑して

→直樹は微笑を浮かべて

に変更します。

追加

キルロの台詞で「俺」と呼んでいた部分を「僕」に変更しました。



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