第三十五話 再びダンジョンへ
会話多めです。
授業の話を集中して聞こうとした。だがもう一度同じ事が起きたのだった。
~674年、水の月、第21日~
「めんどくせぇーな!全く!」
「もう一度来るとは思わなかったよ…」
「マリア先生に言って2日間でダンジョンを攻略した方が面白かったんじゃないか?」
「ぬるい!ぬるいぞぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「そういう佐東は熱いね」
「う、うるさい!」
現在直樹達はあのBランクのダンジョンに再び来ていた。いや、来ざる終えなかったのだ。なぜならそれは───
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~674年、水の月、第17日~
「ふぁ~あ、今日もチョークが飛んで来る以外平和だったな~」
最後の授業の基礎薬学が終わり教科担当の先生が退室してから直樹が あくびをしながら言った。
「普通チョークが飛んで来る事なんて無いけどね」
良平がそれに返しているといると担任のマリアが入って来てホームルームが始まった。そして直ぐに生徒全員に言った。
「お前らは技術はあるがレベルが低すぎるし実践経験が少なすぎると判断した。よって、5日後に2日間ここのダンジョンに行くから武器や防具等の装備、持ち物の確認をしとけよ。あぁ装備が無ければ学園のでよければ貸してやるから言えよ。後、班分けはお前らの自由にしていいぞ。それじゃ質問があるやつはいるかー?」
最後は面倒臭そうにマリアは生徒に聞いく。そこで委員長のキルロが手を挙げていた。
「はい、先生」
「キルロか。なんだ?」
「先生は先程、2日間行くと仰っていましたがそれは泊まり掛けですか?日帰りですか?」
「本人次第だな。どっちでもいいぞ。ただ死んだら自己責任とだけ言っておくがな」
「んな!?」
「何を驚いている?今遠征に出ている2年、3年も死と隣り合わせの場所にいるはずだぞ?知らないで入学したとは言わせないぞ」
「そ、それは!!」
キルロが何かを言おうとして言い止まった。だが直樹達は心の中で「知らねぇぇぇぇ!!!」と叫んでいた。そんな事を他の人は知るよしも無いのでマリアが話続けた。
「でもまぁ一応として冒険者を雇ってやるから安心しろ。1~10層までは安全だろう。だが11層からは本当に自己責任だからな?それとクラスバッジは肌身離すなよ。そいつは微量の特殊な魔力が流れているからそれを追ってもしもの時は駆けつけるからな。他に質問はあるか?」
「はい!」
次に手を挙げたのは直樹だった。
「お前か……駄目だ」
「なんで!?」
「碌な事を言わないだろう?」
「いやいや!聞いてくださいよ!」
「……何だ?」
「何でそんな不機嫌なん……っぶないじゃないすか!」
「さっさと言え」
「は、はい。ここのダンジョンって最奥のボスがミノタウロスのダンジョンっすよね?」
「そうだが。それがどうした?」
「えーっと、そこのダンジョン俺達は攻略したんですけどどうしたらいいっすか?」
「は?」
マリアだけではなく他の生徒も同じように呆けた顔になっていた。そして直樹がもう一度同じ事を告げるとマリアが動揺しながら聞き返してきた。
「いや、ちょっと待て!確かにお前はAランク冒険者に勝ったと聞いているし他の奴もBランクだが勝ったと聞いている。なら可能なのか?……ブツブツ」
「え?ちょっと先生?」
マリアが喋り、考えてから2分くらい経った。
「よし!決めたぞ。お前達は、ダンジョンに行く前日学園を休んでいいからダンジョンに行って魔物の頭数を減らしといてくれ。任せたぞ」
「え?え?お前達って俺と良平、宮本、佐東、智哉の5人のことですか?」
「それ以外に誰がいる?」
「あ、はい。面倒くさいけど分かりました」
「一言余計だぞ」
「いや、俺達にタダで動かせるだけ感謝して欲しいっすよ」
「はぁ?何を言っている?」
「普通、俺達に依頼出して動かすなら金貨は10枚程飛ぶんじゃないすかね?」
「だから何を言っていると言っているのが聞こえないのか!」
「聞こえてるっすよ。まぁ隠すような事でも無いんですけど仲間に了承を得ないと後が怖いんで。んで言ってもいいか?」
直樹が周りにいる4人に聞くと、ハァと溜め息を吐いた後に皆頷くのが見えた。それを見て直樹は最近溜め息を吐く人が多いなと思っていた。
「冒険者、Aランクパーティ『グオノット』。それが俺達っすよ」
「んな!!」
「「「「「えええええぇぇぇぇぇぇ!!!!」」」」」
これには先程の比ではない程に全員が驚いていた。それは直樹達とよく一緒にいるアルフィンもそうだし、勇者である一条やその仲間も驚いていた。
「そんなに強いのにお前達は何でここに来たんだ?」
「そんなの決まってるじゃないっすか。勉強するためですよ」
「「「「絶対違うだろ!!」」」」
良平達からの素早いツッコミがやって来た。それに狼狽えるような直樹ではないので直ぐに話を続けた。
「えぇー実際に薬学とかの知識を付けたかったっていうのは本当だからな…う~ん面白そうだったからが一番の本音っすね」
「普通の生徒にならそんな軽い気持ちで受かる筈がないだろう!とか怒れるがお前達には無駄だな……だがお前達にはダンジョンに行ってもらうからな。お前達の実力や学力は申し分無いから行かせる側としても安心だ」
「了解です。勿論これは結構高い評価くださいね?」
「仕方ない。良いだろう」
そしてホームルームが終わり直樹達はダンジョンに行くことが決定した。
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「それにしてもまたゴブリンやウルフ、スライム、コボルトとか雑魚モブばっかりかよぉ」
コボルトは犬が二足歩行で歩けるような見た目をした魔物で、魔物ランクEと大して強くはない魔物だ。
「直樹は文句言わない!受けたのは直樹のせいなんだから。文句言いたいのこっちね」
「うぅぅ。すまん…」
「にしても1~10層とか上の層は雑魚モブが多いから分かれてやらないか?」
「宮本にしては良い案だな」
「佐東、それは言っちゃ駄目だよ」
「なんだとぉ!よし!それなら競争しよう!どっちが多く狩れるか競争だ!」
「乗った!お前など相手では無いことを証明してくれる!」
「じゃあ今から二人ともギルドカードを見せて。そこから数えれば間違いは無いから」
「「わかった」」
2人は智哉にギルドカードを渡し数分待つ。智哉は2人の現在の討伐数を頭に留めギルドカードを返した。
「直樹と良平は何かをある?」
「あー俺達は1~5層やるからお前達2人は6~10層な」
「俺もそうした方が良いと思うよ」
「了解。2人供分かった?」
「勿論だ」「愚問だ」
「それじゃ、ここが7層だからスタートするね。3、2、1、スタート!」
「うぉぉぉぉぉ!」「はぁぁぁぁぁ!」
2人は走って去っていった。魔物を探しに全力で向かっているので直ぐに見つかるだろう。ここのダンジョンは魔物を倒しても旨みが無いので来る冒険者などは大抵力試しだと言われている。1~5層でEランク、6~13層でDランク、14~20層でCランク、21~25層でBランクらしい。だからあまり1~10層には冒険者などがいることは極稀でいるとしても14層からだ。だからマリアも1~10層と言っていた。
「じゃ俺達は5層に移動しますか」
「一応来る途中に間引いたからもうあまりしなくていいかもだけどね」
「俺はあいつらが6~10層の魔物を全滅させると思うよ…」
「俺もそう思うんだ…」
「明日は主に1~5層だけになりそうだね」
と残った3人は話ながら5層に行き、本当に多少だけ間引いてから地上で2人を待つことにした。
2人が戻ってきたのは夕方で寮に帰らなければならない時間に近付いた頃だった。
どちらが勝ったか丸わかりの雰囲気だった。宮本は満面の笑みを浮かべ、隣で肩を落としてトボトボ歩いている佐東をニヤニヤと見ながら歩いてくるのだ。分からないやつなどいない。
「うし。帰るぞー」
直樹は結果を聞かずに寮に向けて歩き出した。それに4人は文句を言わずに着いてきて、話をしながらワイワイと帰る。
またしても魔の手が忍び寄っている事に気付かずに。
次回の更新は1月28日の20:00頃です。
ブクマ数が気付けば100を超えて、総合評価も300を超えていました。読者の皆さんありがとうございます!
訂正
11階層 → 11層
マリア先生に言って他の生徒のお守りをしていた方が面白かったんじゃないか?
→ マリア先生に言って2日間でダンジョンを攻略した方が面白かったんじゃないか?
に変更しました。




