第三十一話 再会
遅れてすみません!
他の生徒達と同じように自分のクラスに向かった。
直樹達がSクラスの教室に入り教室内を見渡すと、そこにはもう半分以上いたがその中に一条達の姿は無かった。多分まだ来ていないだけで後で再会するが、少しでも時間が延びてくれて直樹達は安心したような、残念なような気持ちになった。
更に教室内を見ると後ろの座席の方にアルフィンがいた。しかし、いや、やはりと言うべきだろうか前回と同じようにアルフィンの周りには誰もいなく、ただ遠巻きに見られているだけのようだった。
だが直樹達は躊躇することなくアルフィンの近くの席に座った。席順は一番後ろの窓側の席に直樹、その隣にアルフィン、更にその隣に良平だ。直樹の前には佐東で、その隣に宮本、更にその隣に智哉とアルフィンを囲むように陣取った。
「ごめん。待った?」
直樹が目を閉じてじっとしているアルフィンに声を掛けた。
「いや。ついさっき座ったところだ」
「「「「デートか(よ)!」」」」
良平達4人から一斉にツッコミを貰った。
「そんなつもりは無かったんだが…」
「全くだ」
そんなくだらない事をしていると、教室のドアがガラッと開いた。
そこにいたのは──────茶髪ショートカットでスラッとした体型の女子生徒だった。
またしても一条達で無くて直樹達は溜め息が出てしまった。
だが何故かその女子生徒は教室内を見渡したかと思うと直樹達の方を見て視線が止まった。そしてツカツカと歩いてきたのだった。
「やぁ。久し振りだね!」
と声を掛けてくるが直樹達は顔を見合せて誰の知り合いかを確認しあっていた。だが誰も知らないらしく首を振っていた。ただその女子生徒は聞こえていなかったと判断したのかもう一度挨拶をしてきた。
「久し振りだね!」
直樹達は再び顔を見合せて、最終的良平に視線が向き良平が代表して訊ねた。この時にアルフィンも良平の方を向いていた事からもう既にかなり馴染んでいると言っても過言では無かった。逆に馴染みすぎて誰も気付かないのだが…
「あの、失礼だけどどちら様?」
「え!?も、もしかして忘れられてる!?」
「えーっと以前会ったことがあるのかな?」
「あった!あったじゃない!ほら検問の時よ。思い出して!」
「検問…検問…」
「ああ!思い出した!!お前は俺達の順番を抜いて先に入って行った奴だろ?」
「う、うう…そうだけど、そこまで責めなくてもいいじゃない…」
「いや、責めた積もりはねぇよ!?」
「あー!直樹が女の子苛めてる!せーんせーに言ってやろ。みーんなーに言ってやろ!」
「ガキか!?ってか懐かしいなそれ!?」
「フッ、だろ?」
「何故ドヤ顔してんだ佐東ぉぉぉぉ!」
直樹と佐東のやり取りに女子生徒は置いていかれ、良平達3人は直樹と佐東のやり取りが普段通り過ぎて、先程の一条達と再会する緊張感が解れていった。
「取り合えずこいつは誰だ?」
アルフィンが収拾がつかなくなった2人を無視して、女子生徒に訊ねた。
「あたしはビビと申します。アルフィン皇太子」
「俺の事は知っているのか。それでお前とこいつらの関係性は?」
「知り合いですね。そんなものです」
「ふむ…おい、ナオキ!リョウヘイ!」
そして一考したアルフィンは何やら佐東と勝負をしているように見える直樹とそれを面白そうに見ている良平に声を掛けた。
「ん?何だよアル。今こっちはいいところ何だよ。後にすれよ」
「この女の事を忘れてないか?」
「あ…い、いや。わ、わすれて無いけど?うん、しっかり覚えてたし!」
「ごめんね。忘れてたよ」
「い、いや。あたしなんてそんなもんだもんね…」
「面倒臭い女だな。それじゃお前達に後は任せたぞ」
「サンキュー、アル。そんで名前はええっと…」
「ビビ…」
「ああ、ビビ。久し振りだな」
「ビビさん久し振り」
「うん。あたしの影って薄い?」
最初の元気は何処に行ったのか、すっかり落ち込んでしまったビビに直樹は容赦なく返した。
「薄い」
「グッ!そんな真っ直ぐに言わなくてもいいじゃなぁぁぁぁいぃぃぃ!!!」
するとビビは泣いたふりをしながら直樹達の近くの席に座って突っ伏してしまった。
「あんなキャラだったかな?」
と良平が呟いて直ぐにまた教室のドアが再びガラッと開いた。
入ってきたのは直樹達が出来れば関わりたくないが、そろそろ来るだろうと思っていた一条、山上、村丸、柳室の4人だった。
その瞬間直樹達は目が合わないように机に突っ伏したり、外を見たりして極力気付かれないようにした。だが、そんな事は全然意味が無いわけで…直樹達の方を見ていた。
(流石に気付かれたかぁ)
(きっと気付かれたよね…)
(気付かれない訳がないだろう)
(見られたら相手が強いかどうか分かるようにならないかな)
(はぁ…無理だよねぇ)
などと各々が考えていた。
そしてそれは間違っていないかのように一条達は真っ直ぐに直樹達の方に向かってきた。
これには直樹達ももう観念したように一条達を見ようとした。だが一条達が声を掛けたのは…
「お久し振りです。アルフィン皇太子」
「おぉ。久しいな。イチジョウ殿とその仲間の方々」
「ってそっちかい!!」
直樹、良平、宮本、佐東はキョトンと鳩が豆鉄砲を喰らったような顔になっていたが、智哉だけが普通にツッコミをしてしまった。
「一体誰だい?今声を出した…の……は…ってああ!!」
「どうしたんだ輝!?」
「健人!ほら!熊崎君じゃなかったかな?」
「うぉ!ホントだ!!じゃあ他の奴も…」
「いるな」
「いますね」
山上の言葉に村雲と柳室が続いた。そして直樹達4人は智哉に非難がましい目を向けるのを止めて一条達の方を向き
「どうもぉ~」
「お久し振りです」
「久し振りだな」
「誰が強い?」
「さっきは急に声を出してすみません」
挨拶をした。中には挨拶とは程遠いかもしれない奴もいたが今更だろう。一条達もどの言葉にも応えるように挨拶を返してくれた。
「どうも、久し振りだね」
「誰が強いかって?俺だろう!」
「久し振りだ。山上の言うことは無視していいぞ」
「どうもお久し振りです。多分一番は輝君だと思います」
なんと一条達は挨拶をして質問にも応えてくれた。そんな律儀な一条達だがその目にはたくさん聞きたいことがあるぞ!と物語っていた。だが直樹達と一条達の関係を知らないアルフィンは気になってしまい、つい聞いてしまった。
「ん?お前達は知り合いなのか?一体どういう関係だ?あとクマザキ君とは誰だ?」
「いやぁそれは色々あるんだよ」
直樹は濁らせて応えたが勇者でもある一条は真面目に応えた。
「河内君とは同郷の者でね。熊崎君は智哉君のことさ」
良平が「河内」と言った辺りでサイレントを発動していた。この判断には直樹達はナイス!と思っていたが、一条達には魔力が漏れたのが攻撃の兆しと判断され良平は首元に刃先を突きつけられていた。
「今お前は何をしようとた?」
「はぁ…俺はねぇ、声などの音が漏れないように防音の魔法を使っただけだよ。俺達は普通の学生のつもりだからさ。だからそれは降ろしてくれないかな?」
「む。悪いことをした」
納得してくれたのか村雲は突きつけていた刀を鞘に戻した。
だが今の話をしっかり聞いていたアルフィンは直樹達に驚きの表情で見ていた。そして直樹達が誰にも言わずにいて、アルフィンにはいつか話そうと思っていたことを本人から重々しい声で聞かれた。
「お前達は異世界人なのか?」
直樹達はそれぞれが「ばれるのはやかったなぁー」などと考えて応えることにした。
「ああ、俺達は異世界人だ」
アルフィンはそれを聞いてまだ少し驚いているようだったが、目を閉じて考え始めた。
直樹達はそんなアルフィンを黙って見ることしかできなかった。そして出来れば友達でいたいなぁと思うのだった。
次回の更新は1月22日の20:00です。
アルフィンの反応は如何に!!




