第二十五話 入学試験
炎の月、第15日となり5人はキリヤ学園の入学試験に向かった。
そして5人は現在、キリヤ学園の入り口に立っていた。
「うおぉー!大きいな!」
「ちょっと恥ずかしいからそんな大声出さないでよ」
「これからここに通うことになるのか」
「悪くないな」
「なんで2人は試験が受かる前提なの?」
「そんなの」
「決まっている」
「「俺が天才だからだ!」」
「お前じゃない!俺だ!」
「俺に決まってるだろう!」
「何をー!」「やるのか?」
そう言って宮本と佐東はあるポーズをとった。宮本は腰を落とし右手に力を込めるような体勢となり、佐東も指の骨を鳴らしながら全身の力を抜き直ぐに動けるような体勢となった。
そうそれは…
「「最初はグー!ジャンケンっ」」
ジャンケンのポーズだった。
「パー!」「チョキ!」
その勝負を制したのは佐東で、さも当然と言った顔で宮本を見ていた。
宮本は負けたことが悔しく、「覚えテロよー!」と言って学園に向かっていったがそれはずっと2人を見守っていた智哉が止めた。そして先に進んでいた直樹と良平の方を差し「行くよ」と目が笑っていない笑みで告げられ、宮本と佐東は抵抗せずに大人しく従った。
直樹達は学園入口から見えた大きい校舎に向かって少し歩いたところで入学試験の受付を見つけることができた。
受付でそれぞれが入学試験の料金、金貨1枚を払い数字がかかれたプレートを胸に着けるように言われ渡され、説明を受けてから校舎に歩いていった。
「俺は321番だったな」
「俺は268番」
「269番」
「270」
「271番だね」
「え?俺だけ何で離れてるの?」
直樹だけ何故か番号が離れていて疑問に思っていた。だがそれは良平がしっかりと見ていたようで説明がなされた。
「あの受付の人最初の説明の時に適当にプレートを取ったんだよね。それを直樹に渡されたからで、他は上からどんどん渡されたからだね」
「そんなぁ~…心細いなぁ…」
そう言って直樹はガックリとうなだれながら歩いていると校舎はもう目の前にあり、校舎内に入るとプレートに書かれた数字毎に試験の部屋が違うらしく、1~60番、61~120番、121~180番、181~240番、241~300番、300~360番、……となっていった。
「はぁー。またあとでな…」
「ガンバって」
「落ちないようにな」
「独りぼっちだな」
「なんとかなるよ」
「宮本!落ちるとか縁起でも無いこと言うな!佐東!お前は絶対あとで覚えてろよ!」
などと言い争いながら廊下で別れ直樹は自分の試験部屋に向かったのだった。
部屋に入ると、もうすでに半分以上の人がいた。座席は適当らしく、また大学の教室っぽく席は奥に行くほど高くなっていた。直樹は自分は何処に座ろうかと思って空いてる席を探していると一番奥の窓側が空いていたのでそこに決めた。
直樹が周りの人を見て観察しながら暇を潰していた。するとガラッとドアが開いた音が聞こえそちらを見るとそこにいたのはしっかりとして、いかにも上品そうな服装で美顔の男が入って来た。
その男を見ていたのは直樹だけでなかった。平民と思われる身なりの男女は尊敬の眼差しで見て、逆に貴族と思われる身なりの男女からは黄色い声が上がったり、目上の人を見るような目線で見たりしていた。
そしてその男は周りのその態度が鬱陶しいと思ったのか苛立たしげに鼻を鳴らし、座席が空いていないか見回した。
そうなれば直樹と目が合うのは当然な訳で、直樹の周りは誰もおらず空いていたため直樹の方に来るのも当然だった。
その男は直樹から1つ空けた場所に座り目を閉じて動かなくなった。
直樹は周りの人の様子がこの隣の隣に座った男のせいで変わったことを理解したが、誰だかは見当がつかず本人に聞いてみようと思い小声で声を掛けた。
「(おい。そこで目を閉じてる人。あんた誰?)」
その男は見ず知らずの人から声を掛けられ不信そうにしたが、一応言葉を返した。
「(人に訊ねる前にまず自分から名乗ったらどうだ?)」
直樹は相手が小声で返してくるとも思わなかく驚いた。だがそれよりも驚いたことがあった。それはその小声はその男の口が全く動かずに発せられていたことだった。直樹は自分のミスで恥ずかしいとも思っていたが、小声が面白くてそんなことは気にならなく普通に返した。
「(すまんすまん。その通りだったわ。俺の名前は直樹だ)」
「(これからは気を付けることだな。俺はアルフィン=ネムスレッド=テラーブル
だ。名前から分かると思うがテラーブル帝国の皇太子だ。それも第一皇子だ)」
その男、アルフィンは自分が皇太子と名乗った時の相手のパターンが2つあると分かってた。1つは急に敬いだし敬語になっておどおどするパターン。もう1つはごますりのように迫ってくるパターンだ。そのためどちらで来る?と考えながら相手の様子を伺っていた。だがその相手は普通では無かった。
「(おおー!スゲーな!お前ってお偉いさんだったのか。道理でそんな身なりだと思ったわ。ってかそろそろこっちを見ろよ)」
アルフィンはその言葉を聞いたとき驚きで一杯だった。なぜなら敬語も使わなければゴマをするわけでもない。更には皇太子と聞いても命令をしてくるのだ。驚くのも無理はない。ただ直樹が異常なだけである。そしてアルフィンは驚きながらもそれを表情には出さず、目を開けて直樹の方を向いた。
「(お前は面白いやつだな。俺に命令して来たのは父上と母上くらいだぞ)」
と微笑しながら返してくるので直樹も笑いながら返した。
「(多分これから俺といたらもっとそういうことが数多くあるぞ。怒るか?)」
あまりにも直樹が直接聞きに来たのでアルフィンからすれば好感が持てた。いつもアルフィンが相手をするものは下心や腹の探り合いなどが殆どで面倒臭いのだ。だが直樹はそんなことは必要が無かったのでアルフィンも正直に答えた。
「(そんなことで怒るか。バカが)」
「(初対面でバカとか酷くないか!?)」
「(ふん。うるさいぞ。おっとそろそろ担当の者が来たようだな)」
「(酷いな!?俺の扱いが雑すぎるぞ!)」
アルフィンは直樹の文句を無視し、壇上にいる担当の人の話を聞いた。そして最後に「それでは筆記試験を始める」と言い、問題用紙と解答用紙を配り始め入学試験が始まったのだった。
直樹は筆記試験が60分×3で行われることを聞き減なりしたが、いざ問題用紙を見ると良平に習ったことが出て来て余裕で半分以上の時間を残し机に突っ伏していた。
同時刻、良平達も似たような感じであった。
なぜなら良平の教えは王城にあった歴史書を見ているので他の人が教わることよりもより鮮明に書かれているのだ。当時の状況、原因、感情など。そういうことを全て積み込まれた直樹達にとっては余裕以外の何物でもなかった。
そして筆記試験が終わりその後は魔法の試験で最後に武術の試験と言われた。
現在は同じ教室で受けていて友達になったと思われるアルフィンと魔法の試験がある訓練場に向かって歩いていた。
「あーこの後の試験面倒臭いなー」
「ん?ナオキは魔法が苦手なのか?」
「んー普通」
「じゃあ何が面倒臭いんだ?」
「どれくらい加減すりゃいいかなーってさ」
直樹は良平達と一緒にいると思っていたのでどれくらいの力量を出せばいいか悩んでいたのだった。
だがアルフィンは何を言っているんだ?という感じで言い返してきた。
「全力でやればいいだろう」
「全力ねぇ~。じゃあ全力でやろうかな!もしもの時はアルフィンに責任を取ってもらおう」
「??一体何を言っているんだ?ああ、それとアルフィンとは呼びづらいだろうからアルでいいぞ」
「お!マジで!?やった!」
「そんなに喜ばなくても良いだろうが」
「いや~呼び名で呼ぶって友達感があっていいじゃん」
「ま、まぁそれもそうだな」
そうやって話ながら訓練場に向かっていった。
アルフィンはこの時の会話で全力を出せと言わなければ良かった…と後悔したとか。
そして訓練場に直樹とアルフィンが着き暫く待っていると担当の者が来た。
担当の者曰く魔法を全力で的に向かって打てとのことで試験が301番から始まった。
321番の直樹と、なんと直樹の前の番号だった320番のアルフィンはそれまで暇だったので魔法を見ながら時間を潰していた。
そして…
「320番前へ!」
アルフィンが呼ばれ、前へ出て魔法を唱え始めた。
「───雷よ、轟け───ライトニング!」
それは詠唱が省略され、さらに威力も普通の『ライトニング』より2倍ほど違った。
光輝いたと思うと次の瞬間には的に当たっていた。それを目で追えたのは直樹くらいだろう。その直樹は「おおー!!」と言いながら拍手をしている。そして
───ゴロゴロ、ドッカーン!───
という音が鳴り響いた。
そして的は跡形もなく無くなりそこには焦げ跡だけが残り担当の者が「よ、よし!いいぞ!それでは次は321番前へ!」と驚きながら直樹を呼んだので直樹は「よし!」と言い前へ出た。その時すれ違ったアルフィンに「凄かった!」と言い通りすぎて行った。
そして直樹は魔法を全力で放とうと少しだけ準備をするのだった。
中途半端で申し訳ありません!
時間が時間が無かったんです…
次回の更新は1月12日の19:00です。




