第一話 勇者召喚
光が収まり目を開けたら、そこは洋風の城の中だった。
全員辺りを見回すように首を動かしているが、部屋の扉で動きが止まった。そこには、自分たちと同じくらいの年齢で、一目見て美しいとわかるほどのお姫様らしき人物が一人、何人かの兵士らしき人物が4人いた。
「ようこそおいで下さいました。勇者様、そしてご同胞の皆様。私はラスウェル王国王女のクリスティーナ・ロゼフォール・ラスウェルと申します。召喚の儀式で皆様を召喚いたしました」
神が先に教えてくれたお蔭か取り敢えず全員静かに話を聞いている。というよりも、クリスティーナを見て惚けた顔になっていた。クリスティーナはその状態を一瞥して鷹揚と話し始めた。
「皆様を召喚したのは他でもありません。最近魔王が復活して魔物の脅威が迫っています。このままでは人族が滅びるかもしれないのです。そのために魔王を倒して頂きたいです」
それを聞いて全員がざわざわし始めた。召喚されるのはわかっていたがその理由までは考えていなかったか、考えるほどの余裕が無かったのだだろう。今まで普通の生活をしていた高校生にしてはこれまでの出来事が非日常すぎだ。しかし、何人かはニヤニヤしていた。
「急に戦いとか嫌よ!帰しなさい!」
「俺たちはただの学生だったんだよ!」
「俺たちの世界に帰しやがれ!」
「そうだそうだ!」
魔王を倒すことや戦いは無理だと考えたのだろう。そして、やはり帰りたいと思っている人がいるのも当たり前の事だった。急に知らないところに飛ばされて不安なのだ。一人を皮切りに全体に伝わっていった。
「申し訳ありませんが、皆様を返す方法はご存知ありません。しかし安心してください、魔王が知っていると女神様から神託されました。そして召喚された皆様は多い人で5つ程、少ない人でも2つ程スキルを持っております。それにステータスもこちらの世界よりも高いのです。まずそれを知っていただくために皆様にステータスプレートというのを配っていきます。ステータスプレートが手元に来たら「ステータス」と呟いてください。そしたら自分のステータスが表示されます。」
この時点で直樹はこの王女のことを不審に思った。明らかに言っていることが確実ではない上に選択肢を絞っていくやり方であるためだ。直樹が考えているうちに兵士が後ろの箱に入っていた物を配った。それぞれの手元にステータスプレートが行き渡り、生徒達が「ステータス」と呟きプレートをまじまじと見ている。直樹や4人も「ステータス」呟いた。
すると…
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河内 直樹 年齢 16 性別 男
レベル:1
種族:人間 天職:魔法剣士
体力:187
魔力:32
筋力:38
敏捷:26
耐久:31
魔攻:34
魔防:27
属性 炎 風 無
スキル 鑑定Lv1 成長Lv1 統率Lv1
エクストラスキル 全言語翻訳
称号『異世界人』
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プレートに文字が表示された。
まるでゲームのような世界だと思いながら、直樹は自分のステータスを見る。他の生徒達も自分のステータスを先程よりも集中して見ている。
クリスティーナが手を叩き全員の意識を自分に移す。そしてステータスの説明が始まった。
「皆様しっかり確認できましたか?それでは説明をしたいと思います。まず初めに"レベル"があります。それは1上がるごとに各ステータスも上昇します。上限はわからりませんが過去最高で532だと言われています。その人は勇者だったと言われていますがただのお伽話と言う話もあります。」
レベルの話を聞き再びゲームのようだと直樹は考えていた。
「次に"種族"がありますがそのままの意味です。この世界には様々な種族がいるためです。」
これには全員が興味を持ったように聞いている。
「次に"天職"というのがありますね?それは各人がもつ才能です。その天職の領分では比類なき才能を発揮します。」
直樹は自分の天職について考えていた。魔法剣士なら剣と魔法の世界を十分に堪能できるのでは?と。そのためには王城だと思われるここに囚われてはいけないと考え始めていた。
「次に各ステータスですが、これもそのままですね。成人でレベル10くらいですが、その平均は体力100、魔力20、筋力,耐久,20、敏捷,魔攻,魔耐が15くらいです。召喚者の方々なら成人の平均を超えていると思います」
この世界では、成人はレベル10くらいらしい。取り敢えず直樹は自分のステータスが平均を越えていてホッとしていた。次いで近くにいる4人に視線を送った。4人とも頷いて返してきたから大丈夫らしい。
「次は"属性"ですね。属性は主に魔法を使うときや武器、防具などに属性を付与る時に関係してきます。種類は炎、氷、水、雷、風、土、光、闇、無の9種類あります。大体人族なら無属性+1属性持っています。それ以上ある人は稀です」
直樹は周りを見渡すと結構な人がニヤついているのを見ていた。そして思ったのだ、あーこれ結構な人が乗り気になっているなと。だからこそ先程考えていたことを実行しようと決断した。
「後は"スキル"と"エクストラスキル"ですがこれは皆様の経験などがスキルになります。スキルはレベル10までで、1,2が初心者、3,4が中級者、5,6が上級者、7が熟練者、8が達人、9が人外、10が超越者と言われています。そしてエクストラスキルは基本自分で手に入れることはできないと考えられています。なにか特定の条件下で手に入るらしいです。最後の"称号"はなにか成したときに女神様よりいただけると言われています。説明は以上になります。」
そしてひと呼吸置いてクリスティーナは言った
「それでは皆様のステータスプレートを見させていただきます」
この一言は直樹に焦りを与えた。