第十八話 オークの集落
直樹が再び声を出し、4人に聞くが答えることができる者はいなかった。
それから5分くらい経ってから直樹達は動くことができた。それほどまでに今見た光景は平和な世界から来た直樹達を怯えさせるのに十分だった。
「なあどうする?」
直樹が4人に聞くと
「さっきは面白そうとかテンションが高かったから言えたけど流石にこの戦力差じゃ厳しいよ」
「ざっと見ても5対1000。勝てる気がしないな」
「負ける戦いはするもんじゃない」
「この依頼は調査なんだしここで引いて良いんじゃない?」
「それじゃもうかえ────」
と4人からもこの戦いはするもんじゃないと言われ直樹は帰ろうと言おうとした時だった。
「来ないで!いや!やだ!やだっ!」
「やめてぇー!誰か!誰か助けて!!いやぁぁぁぁ!!!」
直樹達の耳をつんざくような女性の悲鳴がオークの集落から聞こえてきた。
直樹はオークの集落に振り向くとどこから聞こえたのか探した。
そして集落の中心くらいにある家に目星をつけた。周りの家などなくその家くらいから聞こえたからという安直な考えだったが直樹の直感もそこだと言うのでそれに従い、6mくらいある崖を足場になる岩を探し飛んで降りていった。
「お、おい!直樹!」
良平が慌てて止めようとするが時既に遅く、直樹は崖を下っていた。直樹が良平達の方へ振り向き言葉をかけた。
「俺はここで見てみぬ振りをしたら自分で自分を許せなくなりそうだから。これから楽しめなくなりそうだからさ行くわ!お前達は帰ってていいぞ!あ!良平はあのクソジジイから貰った剣を俺の方に投げてから帰ってくれ!」
直樹は良平達にも本当はきて欲しいが命の保障は無いためついてきてくれとは言えないでいた。だから精一杯の笑顔で良平達に別れとなるかもしれない言葉を告げたというのに…
「こんのバカ野郎が!!お前そこで待ってろよ!!絶対に動くなよ!」
良平はいつもは言わない口調で怒り、
「水臭いなー。俺も混ぜろよー」
宮本はちょっとおちゃらけた感じで、
「楽しそうじゃないか!!」
佐東は本当に楽しそうに、
「はぁ…本当にウチのリーダーは面倒ごと増やしてくれるよねぇ!」
智哉は 呆れたように言いつつも面白そうに崖を下ってきた。
それを見た直樹は嬉しそうにしていたが良平が下に降りた瞬間に直樹に詰めより、
「ゴベラッ」
マックスから貰った片手剣の柄の部分で顔面を殴った。
「ウッドウルフが14匹いたくらいでビビっちゃうようなやつが一人で突っ走るんじゃねぇよ!ほら!」
良平が単独で挑もうとした直樹に怒りつつ片手剣を渡した。
「お、おう、サンキュー…」
剣を受け取った直樹はその剣を杖にして立ち上がった。そしてその剣を始めて"鑑定"した。
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トリニティブレイド
等級 2等級
魔力 +15
筋力 +30
魔攻 +20
効果 ????
????
????
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今までは使う機会が、つもりが無かったため"鑑定"はしていなかった。だがそれに今は後悔していた。性能の差が大きすぎるのだ。直樹が今装備していた剣は
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鋼の剣
等級 8等級
筋力 +15
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であり自分の迂闊さを思い知った。だがそれを直樹はおくびにも出さないように注意しながら、最後の確認と言う感じで4人に言った。
「嬉しいけどさ、死んでも知らないぞ」
それを聞くと良平がさらに怒り言い返した。
「くどい!お前は俺達のリーダーだろ!なら俺達に命令しろ!それでいいんだよ!」
直樹がハッとし、気持ちを切り替えてから4人に命令した。
「俺についてこい!ただ死ぬな!勝って俺達は5人で帰るんだ!分かったか!」
「当たり前だ!」
「分かってる!」
「了解だ!」
「それしかないでしょ!」
それから直樹を筆頭に5人で50m先くらいにあるオークの集落に密かに向かった。先程から声を張っていたから気付かれているかもしれないが…
そしてオークの集落の周辺に着いた直樹達気付かれていなかったことを確認し最後の確認した。
「いいか。生き残ることが大切だ。だからまずは命を大事にだ。そうしながら目指すはあの家だ。あそこにきっと助けを待っている人がいる。その人を救出したら退却だ。それが無理そうなら応戦するしかない。ケースバイケースでいこう」
直樹の言葉に4人が頷いた。それを見た直樹はこれで最後だと言い自分の想いを伝えた。
「こんな俺について来てくれてありがとう。やっぱお前らは最高の仲間だ!」
「うるさい!」
「静かに言え!」
「死亡フラグ…」
「佐東?何不吉なこと言っちゃてんの!?」
いつもの雰囲気を醸し出しながら5人はオークの集落に挑む覚悟を決めた。
「そんじゃ行くか!」
「「「「おう!」」」」
そして直樹が買い物に行くような気軽さで4人を誘い、4人もそれに気軽に答えた。
オークの集落に入りオークが数百体見える所で直樹が提案した。
「まず作戦なんだが、魔法で数を削りたいからオークを集めたい。そのオークを集める役を佐東頼んだ。」
「任せろ!」
「オークが集まってきたら宮本と智哉の土属性の魔法で以前言ってた合体魔法をしよう!真ん中に頼むわ」
「うわーぶっつけ本番かー」
「失敗しても文句言うなよ!」
「お前らが失敗するとは考えてない!んで最後に俺と良平の炎と風の合成魔法で両サイドを殺る」
「俺らもぶっつけ本番じゃん!」
「出来るって!はい、そんじゃ作戦開始!」
直樹が合図をすると佐東が今出せる最高速度でオークに突っ込んでいった。
「いやー楽しいね!」
と聞こえたのは気のせいではないだろう。
佐東がオークを集めるために奔走している時、宮本と智哉は緊張感なくいつも通りでいた。
「俺達、上手く合わせられるよな」
「きっとなんとかなるって」
佐東を見ながら2人は合体魔法が成功するかどうか話し合っていた。
合体魔法とは2人以上で同じ魔法を発動し、その威力を大幅に増幅するという魔法であり、息が合わなければただの単発の魔法となってしまう。魔法を覚えてから30日程度しか経っていない者が使うような技術ではない。
だがそんなことを2人のリーダーはやれと言うのだ。それも失敗は考えていないと言われれば成功させるしかないだろう。
そしてとうとう2人が動く場面が来た。佐東がざっと見て400体くらいのオークを連れてきたのだ。
オークは2mくらいの身長をしていて凄い大軍が迫ってきているようにも見えた。そのオーク達がブヒブヒ声を出しながら佐東を追っかけていた。
宮本と智哉はオークが予想以上に数がいて驚いたが、これはもうやるしかないと自分自身を叱責し、呼吸を合わせて魔法を唱えていた。
「「───土よ、高く高く空に集い、星の形と為して、敵に落ちよ───メテオ!」」
そして直径約10m、重さは140tを越える岩の塊を高さ500m位の高さから敵の中心に落とした。
それを見た直樹と良平は逃げろ!と声を出すが間に合わず、佐東は全力を越えた走りを見せ直樹達の所までたどり着き、メテオの衝撃に耐えようと思っていた時だった。宮本がもう1つの魔法を発動していた。
「アースウォール!」
それが聞こえたと同時に直樹達の前に巨大な土の壁ができ、その後に凄い衝撃が襲った。
ドゴォォォォォォォオオオン───────
その衝撃になんとか土の壁が耐えきり直樹達は自分達の無事に安堵していた。
そして土の壁から顔をだしオークの集団を見ようとした。
だがそこには1体のオークもいなかった。そこにあるのはただ数十メートルに及ぶ穴たと周りの木が吹き飛んだ光景だった。
先程よりも大分広くなったオークの集落を見て誰も何も言えなくなると思われたが直樹がそんな雰囲気をぶち壊すかのように言った。
「いやーお前らすげー魔法作っちまったな。羨ましいわ」
直樹の言葉の意味が理解できない宮本と智哉は呆然としていたが、良平と佐東は直ぐにそれに乗ってきた。
「お前らのせいで俺の役割が無くなったけどどうしてくれるのさ」
「俺なんてお前らに殺されかけたよ!?」
そんな仲間達の声かけに宮本と智哉は感謝しながらいつもの調子で返した。
「佐東は殺す気だった」
「もう俺達の役割は無いかな?疲れたんだけど」
などと、言い合っているとレベルが上がった感じがして5人はまだ目標は達成できていない事を思い出し、オークの集落の中心部に向かった。
オークの集落は広くて先程のメテオの影響は中心部に届いていなかった。そうは言っても、メテオの衝撃は届いていたのでオーク達も臨戦態勢になっていた。
「レベルアップしたら魔力が半分程回復するかもか…」
宮本と智哉が中心部に移動している最中の話を直樹は思い出していた。
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「直樹!ステータスプレートをみたら魔力が尽きそうだったのが半分くらいに回復してる」
宮本からそれを聞いて直樹は新しい作戦を考えたのだ。
「魔法はあまり広範囲のを使わずに少ない魔力で的確に仕留める。そしてレベルアップの回復を使って攻めきるそれなら真ん中の小屋には被害なく救出できるんじゃないか?」
だがそれに待ったをかける者がいた。
「発見は出来ても救出は厳しいと思うよ。だってその女性たちが自分で動けない状況だってありえる。俺達は他人を守りながら戦うなんてしたこと無いじゃないか。それなら誰かを囮にしてそっちに敵が集中している隙に助け出す方がいいと思う」
「確かにそうだな…じゃあその囮は俺がやるよ」
「俺もやる」
「俺もだ」
直樹と佐東が名乗り出た。それに思うところがあったのか宮本も名乗り出たが…
「それは駄目だ」
良平に却下された。そして良平が話を続けた。
「宮本は救出した女性たちに回復か鎮静の魔法をかけて欲しい。それは水や光の属性を持つ宮本しか出来ないんだ。それにさっきのメテオで魔力が半分しかない宮本は厳しいと思う」
「わかった……」
良平に正論を言われ宮本は渋々引き下がった。
「じゃあ宮本と智哉は俺達の魔法で攻撃するからそれが始まって少し経ったら行動してくれ。見つかるなよ!」
そう言って5人はそれぞれ動き出した。
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直樹は思い返すのを止め
「準備はいいか?」
と、2人に問いかけると愚問だというように頷き返された。それを見た直樹は
「じゃあまずは、っとファイアトルネード!」
直樹の合成魔法で直樹、良平、佐東が囮役。宮本、智哉が救出役として作戦が始まった。
今年も今日で終わりますね~。
来年も皆さんに楽しんで読んでもらえるように頑張りますので応援よろしくお願いします!
次回の更新は1月1日の19:00です!
合成魔法は次回その正体が明らかに!
わかる人がいるかと思いますが…
それではオークの集落の続きをお楽しみに!




