第十七話 再び森へ
昼食を買ってから昨日と同じ、南門から森へ向かった。
森までの道を先程買った焼き串や饅頭を食べて直樹達は歩いていた。
「この焼き串といい宿の飯といい、結構美味しい物が多いよな」
直樹がそんな事を言った。
「調味料や香辛料がふんだんに使われてるからじゃないかな」
良平は自分の推測で直樹に返した。 直樹はそこでふと疑問に思ったことを4人に聞いた。
「なんでこの世界の建物や技術は中世くらいなのに、料理や服は現代くらいに進んでるんだろうな」
直樹の疑問にすぐ返す者がいた。
「多分だけど、以前も召喚者がいたって聞いたでしょ?その人達が伝えたんじゃないかな」
それは智哉だった。多分と言葉では言っているが確信めいた雰囲気なのでもう自分の中では絶対思っているのだろう。
智哉の言葉に納得が言ったのか直樹はもう何も聞かなかった。
そんなゆったりとしていた時だった。佐東が辺りを見回した。前回と違い今回はその佐東の行動に宮本が気付いた。
「どうした?佐東」
「なんか視線を感じた…前にも1回あったんだが、その時は気のせいかと思った。だけど今回は俺の"索敵"も発動してあるから間違いはない」
佐東にしては珍しく真面目なトーンで言った。そんな佐東に対して宮本が本当のことだと考えを改めさらに訊ねた。
「どっちの方角かわかるか?」
「多分あそこの木ぐらいだと思う」
そう言って佐東は森に行く方角にある木を指差した。
直樹達は道ができた草原を歩いていたが、所々に木や茂みがあるのだ。草原は見晴らしがいいため魔物や人がいても大体は見えるのだが、その木や茂みは別だった。
その木の位置を宮本が目を凝らして見ても何も見えず、さらに周りを見てもそこは広々とした草原で何も見えなかった。
「何もいないようだが…」
「俺も確実とは言えないから警戒だけしておこう。直樹達には後で知らせよう」
「わかった」
宮本と佐東がそう話していると歩きながら話していた直樹達との距離が開いており駆け足で直樹達を追いかけた。
~???? side~
「ふぅ~危なかった。もしかしたら見つかってたかもしれなかったな。本当にあの五人は一体どんな強さなんだよ…」
直樹達が過ぎていった木に登っている男がため息を吐きながら言った。
この男は先程見つかりそうになったとき魔法で姿を眩ませたのだ。直樹達が
そして自分の与えられた任務を再認識し気持ちを切り替えて直樹達の後を追った。
「本当になんで俺はこんなめんどくさいことをしてるんだろうな…」
愚痴や独り言は止まっていなかったが…
~???? side end~
「はい?誰かに見られていただと?」
現在、直樹達は森の前で休憩していた。そこで佐東が先程感じた視線について話していた。
「あれは間違いじゃなかったから警戒をしといて欲しいって感じだな」
「それは了解だ。むしろ事前に察知してくれて助かったくらいだけど、一体どこの誰が俺達なんかを観察?してるんだろうな?」
直樹の問いに全員が考えたがその数は多く分からなかった。
「むしろ俺達の味方って誰かいるのか?」
「味方っていうか、良くしてくれる人はいるけど味方って言うほどでもないよね…」
「俺達って全然他の人たちと関わりを持たなかったもんな…」
「智哉はいるじゃないか!メリアさんという人が!」
「今ここで言うこと!?」
「今しか言えない!!」
直樹と良平が全然交流無かったな~とか思っていると宮本が智哉のことをからかい出した。
「いいよなーお前は。俺なんか猫が全然いなくてつまんない思いしてたのにさー」
「そういえば前に王城で見つけた猫ってどうなったの?」
「逃げられてから見つかってない…」
宮本が逃げられたことを思い出してか項垂れてしまった。それを見た智哉はいたたまれなくなってしまい肩に手を伸ばした。だが宮本はそんな同情はいらない!とばかりに手を払いのけ直樹と良平の元へ泣きつきに行った。
「お~お~どしたどした」
「智哉がいじめるぅ~」
「あー。はいはい落ち着けって」
「猫が!猫が欲しいよぉぉぉ」
「良平。これなんとかして」
「仕方ないな~」
良平が周りを見回して警戒していた佐東を呼んだ。
「ねぇ佐東。ちょっと宮本の前で猫の真似してきてよ」
「え…やりたくないんだけど」
「いいからヤレ」
「はい…」
良平は目が笑っていない笑みを浮かべながら佐東に命令すると、佐東は逆らうことを止め命令に従った。そして佐東を宮本の前まで持ってきた。
「にゃあ」
「ふざけてんのかてめぇぇぇぇ!!!」
「グフッ」
佐東が猫の似てもいない真似をすると、宮本の渾身の右ストレートが決まった。
「あー佐東殴ったらスッキリした。よしもう先に進もう。早く猫系の魔物を探さねば」
宮本がスッキリしたように先に行こうとしそれに直樹達もついていこうとするとそれを止めようとする奴がいた。言わずもがな佐東である。
「ちょっ!いくらなんでもグーは酷くないか!?おい!いやちょっと待てって!!置いていかないで!俺頑張ったじゃん!」
最後には佐東の心の声が混じっていたような気もするが誰一人気にすることなく森の中に入っていった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
森に入って数十分が経過していた。
「なぁ一体どこにオークの集落なんてあんだよ?」
と直樹がイラついた声を出した。
「うーん分かんないな…」
「なんか魔法創れねぇかな」
「創れるとは思うけど魔力が減るのはよろしくないと思うよ。だってオークの集落を見つけたとしても直樹のことだから調査だけで終わらないでしょ?」
「うっ…いやー確かにそうやって一度は考えたけどほら命の危険もあるしさーみんなのこと考えるとそうもいかないしさ」
「何めんどくさいこと言ってんだよ。いつもみたいに俺達を巻き込んでくれて結構だよ」
良平が何を今さらと言うように返した。それに周りの3人も深く頷いていた。
「じゃあ俺はいつも通りにお前達を巻き込むかな。そっちの方が面白そうだしな!!」
「そうこなくっちゃ!」
「またかーまたなのかー面白いといいなー」
「楽しければ問題ないな」
「頑張んなきゃな」
そうして再びオークの集落を探し始めた。
そう意気込んでいたが全然見つからず、しまいには違う魔物が出てきていた。
直樹達の周りを50cm程の蜂が3匹飛んでいた。
「ブンブン煩いな!良平!」
「その魔物はキラービー、レベルは3で魔物ランクはEだけど毒針に気をつけて!」
「おうよ!魔力を使うな!物理で行くぞ!」
「「「「了解!」」」」
キラービー1匹が直樹達に毒針を向けて飛んで来た。直樹は躱してすれ違い様に胴体を切りキラービーを絶命させた。
あと2匹いる片方には佐東が素早い動きで近づき短剣を頭に突き刺して倒した。
最後の1匹は飛んで来たので智哉が盾を使い防ぎ、その防いでいる無防備なキラービーに宮本が槌を振り下ろして仕留めた。
そして戦闘が終わるとお互いに怪我をしていないか確かめ合い、良平がキラービーの死骸をアイテムボックスに入れていく。それを直樹達は眺めていた。そして疑問を浮かべて宮本が良平に聞いた。
「大体そのアイテムボックスとか物いれる系の物って中の時間が止まるっていうのを小説で見たがそれはどうなんだ?」
「それが分かんないんだよね…あの王様にそんなこと説明されてないし」
「でもさっきの昼飯買ったとき温かいまま出てきただろ。それは?」
「そう考えると時間が止まってるのかな?」
「今度検討してみよう」
「そうだね」
2人が話していると周りを見に行っていたのか3人が2人が話す前とは違う場所にいて驚いていた。
「おいどう…し……た……」
3人の元にやってきた宮本と良平が声をかけようとしたが、2人は目の前の光景に驚き声が止まってしまった。
「アハハハ、俺達見つけちゃったな。オークの集落…」
直樹が乾いた笑いをしながら呟いた。5人の視線の先には崖の下にあるオークの集落に向いていた。
そこには1000体くらいのオークがいた。
「魔法でなんとかなるかな?」
直樹が再び声を出し、4人に聞くが答えることができる者はいなかった。
物語の進むペースが遅くてすみません…
次回の更新は明日の19:00です。




