第十六話 パーティ登録
直樹がそう言い5人で掲示板に向かった。
「なんか良い依頼ないかなー?」
「そうそうあるわけ無いって」
「そんな都合良いわけないわー」
直樹が期待を込めてDランクの掲示板を見ていると良平と智哉が期待するだけ無駄という感じで返した。
その横で宮本と佐東が無駄に全力で依頼を探していた。
「俺は見つけるぞぉぉぉぉぉぉ!!!」
「俺が先だぁぁぁぁぁぁ!!!」
そんな2人を見て良平が呆れたように 言った。
「どんだけ張り切ってんだよ!」
良平が2人にツッコミを入れても2人は止まらない。Dランクを見ていた2人はDランクに良いのが無いのを知るや否や、隣にあるCランクの掲示板に行き普段見せない早さで確認していった。
直輝達が全然無いなーなどと話し合っているとCランク掲示板を見ていた2人から
「「見つけたぁぁぁぁ!!!」」
とういう声が響き渡った。
それに良平と智哉は驚きの表情を浮かべ、直樹は楽しそうな表情を浮かべ2人の所に向かった。
直樹達が得意気な表情を浮かべた宮本達の近くに寄って見ると、2人は別々の依頼を見つけたらしく直樹達はその内容を2人に聞いた。
「まず宮本からどんな依頼か聞こうか」
「俺が見つけた依頼は森にオークの集落があるらしくそれの規模などの調査だ。なんでもその集落にはオークキングまたはオークの変異種がいる可能性があるということで、もしものことを考えてランクを少し高くしてる感じだな。達成報酬は金貨2枚だってさ。他のCランクは多くても金貨1枚位だしこれ結構良くね?」
ここで出てきているオークとは豚の顔部を持った魔物だ。ランクはDとあまり強くは無い。だが、オークは他種族の女を犯しその繁殖力はゴブリンに次いで高い。そのような訳があり集落になられては厄介である。
そしてオークは上位種がいるが上位種だけでは集団にはなっても集落にはならないのだ。キングと王の名を冠する者やキング並みに強くなる変異種と呼ばれる者がいなければ集落は作らないとされている。
オークの上位種のオークナイト、オークアーチャー、オークメイジ、オークプリーストは魔物ランクC、オークジェネラルはB、オークキングは生まれてからの時間にもよるのでA~BとされていてBでもAよりのBだ。変異種もキングと同じくらいだ。
変異種は見た目に顕れる。例えば色が違うや大きさが違うなどだ。ただ逆を言えばそれくらいしか違いが無いわけで馬鹿な冒険者の中には小さいから余裕だとか、変な色して面白い近くに寄ってみようなどの被害が年に1、2回はあるらしい。
直樹は過去に王城で読んだ魔物図鑑を思い出して考えていたが、佐東が早く俺に聞け!と言っているような目で見つめて来たので佐東に聞いた。
「確かに俺達ならそこまで心配もないかもな。んで佐東のは?」
「ハッハッハ!聞いて驚くんだな!」
佐東がそこまで言った段階で4人はもう冷たい視線を佐東に向けていた。だが依頼を見つけて興奮している佐東はそれに気付かず話を続けた。
「なんと!達成報酬が金貨20枚なんだよ!!」
「うわー」
「嘘くさっ」
「ダメな気しかしない」
「碌でもないんだろうな」
「いや、ホントに書いてあるんだって!ほらここ!あるでしょ!ほら!」
佐東が全く信用しない直樹達に依頼書の達成報酬のところを指で差して見せた。
そこには本当に達成報酬が金貨20枚と書かれていた。
「そんなバカな!?」
「嘘だろ!?」
「ありえない…」
「偶にはまともなこともあり得るのか?」
と4人は戦慄が走ったかのように驚いた。その反応を見て佐東は心外だと言わんばかりに言い返した。
「俺だっていつもふざけてるばかりじゃないんだ!!」
少し勝ち誇っていたかように見えるのも幻覚ではないだろう。ただそれは長くは続かなかった。
「ん?んん?ねぇこの依頼内容は……」
智哉が何かに気付き声を出した。
「依頼内容はいたって簡単!5個の小包をそれぞれの場所で渡せばいいだけ!それも王都内だから俺達一人一人がそれぞれの場所に渡しにいけば直ぐに終わる!」
佐東が依頼内容を言った。だがそれを聞いた4人は呆れや可哀想な者を見るかのような目で佐東のことを見ていた。
「佐東…これは多分日本でいう麻薬みたいなものじゃないか?」
「受け渡し場所がスラムや裏道とかっていかにも裏取引みたいだと思わなかったの?」
「この金額は明らかにおかしいと感じろよ!」
「佐東らしいけどさぁ~お金だけに意識が向くのは」
「確かにそう言われれば…いや、でもこの金額は魅力的でも…ごめんなさい…」
4人からの発言に納得できる部分もあり言い返せないでいる佐東であった。
「そんじゃあ受ける依頼はオークの調査でいいか?」
直樹が4人に確認を取り異論がないことを確認してからみんなでモースの受付に向かった。
「モースさん、俺達はこの依頼を受けたいです。あとパーティ登録をお願いします」
依頼書を渡しながら直樹が言った。
「皆さんなら大丈夫かと思われますが、皆さんより1つ上のランクですので十分お気を付けて。失敗した場合は違約金が発生しますので、あ!!」
モースが話の途中で急に大きな声をだしたので直樹達はビクッと驚いた。
「私としたことが申し訳ありません!違約金のことについて話をしていませんでした!違約金とは依頼を失敗した時に頂くお金です。違約金は達成報酬の金額の一割です。ですので今回の皆さんだと銀貨20枚ということになります。お伝え忘れて申し訳ありませんでした」
そう言ってモースは深々と頭を下げた。直樹達は自分達の2倍くらい年を取っているようなモースに頭を下げられ、慌てて頭を上げるようにお願いするしかできなかった。
「それでは、次はパーティ登録の件ですね。皆さん5人のパーティで良いんですよね?」
「それでお願いします」
「承りました。パーティのランクはパーティメンバーの平均で決まります。皆さんの場合は全員DランクですのでパーティランクはDとなります。それでは誰がパーティのリーダーなのか、またパーティ名を教えて下さい。パーティリーダーを教えて頂くのは有事の際に指揮を執れる人や代表の人を把握するためで、パーティ名を教えて頂くのは指名依頼の時や名声などで世間に報せやすいからですね」
「なるほど…ちょっと時間もらってもいいですか?」
「わかりました。それでは話し合いが終わりましたらまた受付にいらしてください。」
直樹達は話し合うためにギルドに併設されてある酒場に向かった。
今は昼前と言うこともあり多少ながらの人はいたが席が確保できないという程でもないため5人は1つのテーブルを陣取ることに成功した。
「さっきの話だけどどうする?」
「パーティリーダーは直樹で良いんじゃない?」
「俺もそれで良いと思う」
「さんせー」
「まぁ妥当だよね」
「アハハ~照れるな~とか言いたいんだけどなー。お前らの本音は?」
「リーダーとかめんどい」
「自分以外なら誰でも良い」
「自分じゃなければどうでもいい」
「正直めんどう」
「お前らの気持ちはよ~~く分かったよ!良いよ!俺がリーダーやるよ!」
直樹が4人の本音を予想はしていたが実際に言われ、目に涙を浮かべながら答えた。
「ちくしょー…次にパーティ名はどうするよ?」
直樹がそういうと全員うーんと考え始めた。
少し経ってから佐東が良いのを思い付いたと言いパーティ名を口にした。
「『直樹と愉快な仲間達』」
「間違ってねぇけど恥ずかしいわ!!」
直樹は自分の名前が入っていることもあり否定した。これは誰でも嫌であろう。それを他の3人も思ったのか頷いていた。
「他には?」
「俺達の共通点ってなんか無い?」
直樹が他の案を聞くと、宮本が逆に聞き返してきた。
「共通点って言ってもなぁ。特に思い付かないな…」
「そんなないよね…」
「やっぱないよな」
「際限がない?」
「そうかもね。際限はないかも」
「あと成長し続けていることもかな」
「んじゃその2つをまとめてみようぜ!」
そうして再び考えていると佐東が口を開いた。
「『バカーズ』」
「間違ってないんだけど!さっきの話を聞いてたか、おい!」
「いや、5人に共通してると思って」
「正しいけど、パーティ名にはできないよね!?」
「頑張ったんだが…」
「頑張る方向を間違ってるわ!」
直樹と佐東が漫才のようなことをしていると、先に話し合っていた3人が考えついたのか良平が代表して言った。
「『グオノット』。グロウオブノーリミット、を省略してみた。ちょっと意味は成長の限界がない者でさっき言ってたのとは違うけどね」
「『グオノット』ね。まあ良いんじゃないか?みんなは?」
そう聞くと佐東はちょっと残念そうにしていたが反論は無かった。他の2人は言わずもがなだ。
そうして直樹達はモースの所に向かい、先程の件を教えた。
「パーティリーダーはナオキさん、パーティ名は『グオノット』ですね。わかりました。それではギルドカードをお貸しください」
直樹達はギルドカードをモースに手渡し、モースはギルドの奥に入っていった。少し待っているとモースが戻ってきてギルドカードを返してくれた。
「それではパーティ登録完了です。頑張ってきてください」
モースは笑顔で直樹達を送り出した。直樹達も気分よくギルドを出て、昼食を買ってから昨日と同じ、南門から森へ向かった。
今回は仲間との話を取り入れたいと思いました。
佐東がボケ担当のようになってきていますが…
何か良いパーティ名があったら教えてほしいです!
本気でお願いします!
次回の更新は明日の19:00の予定です。




