第十二話 続 冒険者ギルドと鍛冶屋
上から降りてきたのはここのギルドのトップであるテッケイルだった。
「それで?何をしているんだと聞いているのだが?」
テッケイルが怒りを隠さずに言った。周りの人が言い澱んでいると、直樹が普通に告げた。
「なんか、そこにいる人達が俺達のことをガキ扱いして、アイドルのレナちゃん?に話かけたとか言われて殴られそうになったから、躱して寸止めしたっけ怒って剣を抜きそうになった」
それを聞いたテッケイルは手で額を押さえながらため息ついて、直樹を殴ろうとした男の方に向いて言った。
「今回に限ってはリック、お前達の方が悪いのはわかっているな?」
リックと呼ばれた者やその仲間達はぐぬぬと唸りながら肯定も否定もしなかった。
「今度から気を付けろよ!お前達もそれで今回は納得してくれねぇか?」
そう言いテッケイルはリック達から視線を外して直樹達を見た。直樹達は揃って頷いていたが直樹と佐東を除いて他の3人は緊張しているようだった。
「ほぉ~確かに面白いやつらだな。俺の"威圧"を喰らっても平気なやつが2人か」
そう言いながらテッケイルは笑っていた。
「まぁ、バカなのか大物なのかはわからねぇがな」
ただその後にテッケイルが言った言葉を聞き5人全員の意見が一致したのは言うまでもないだろう。
「それじゃまずはお前らの戦闘技能を見たいから奥の訓練場に武器を選んでから来い!リック達も来いよ!ギャラリーどもも来たけりゃこい!」
そう言ってテッケイルは訓練場に向かって歩いていった。それに直樹達も続いていった。リック達は戸惑いながらもついていき、他の冒険者は面白そうだとか言いながら訓練場に向かった。
ギルドの訓練場の広さは王城の訓練場の広さよりも二回りほど大きい具合だった。
直樹は貰った剣があるがここでは訓練用の剣を使おうと思い、良平に貰った剣を預けていた。
そして各々が自分の武器を選んでから訓練場に入るテッケイルと直樹達に絡んできたリック達6人、そしてギャラリーがいた。
直樹達はテッケイルの元まで行くとテッケイルが話始めた。
「俺はいいことを思い付いたんだ。さっきのリック達6人とお前達の一対一で試合するって言うのはどうだ?」
「俺達に異論はないです」
「こちらも問題ない」
直樹と相手のリーダーらしき人物が代表して答えた。
「よし!ルールはいたって簡単だ!どちらかがが降参か気絶したら負けだ。異存は?」
「ないです」「ない」
「それじゃ始めるぞ!」
周りではどちらが勝つか賭けが行われていたりした。直樹達の倍率は6.4倍と高かった。
そうして一対一の試合が始まったのだが……
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一通り試合が終わった。リック達は皆揃って気絶していた。試合の内容は先日行った決闘とほぼ似たような内容で違うのは直樹が苦戦せずに勝ったことくらいだ。
周りの冒険者達は賭けに負けたものは嘆き、勝ったものはウハウハとした様子であった。
そんな中、直樹達が物足りなさそうな顔をしているとテッケイルが口を開いた。
「ふ~む…相手がランクDのやつでもやはり苦戦はしないか。お前達はどうする?このままだとランクDからスタートだが、もう少し強いやつらと戦って上のランクを目指すか?」
直樹達に向かって聞いてきたので直樹達は話し合ってから答えた。
「ランクDからでお願いします」
「おう!それじゃお前達のギルドカードを作ってやるよ。それじゃもう解散だ!」
テッケイルがそう言うと訓練場には直樹達とテッケイルを除いて誰もいなくなった。リック達もいないので誰かに連れていかれたのかもしれない。
テッケイルは直樹達以外に誰もいないことを確認してから直樹達に話しかけてきた。
「悪かったな。お前達のことはカイゼルやマックスからの紹介状で多少はわかっていたが、それだけでここにいる連中は納得できねぇんだよ」
「むしろこちらこそありがたかったです。これからここに来る度に絡まれるのは面倒でしたから」
直樹ではなく良平がそう丁寧に答えると、テッケイルが嫌な顔をしながら言った。
「お前達も俺に対して普段通りの言葉遣いでいいぞ。堅苦しいのは苦手なんだ」
「話がわかってるね、おっちゃん!」
直ぐに言葉遣いを変えたのはやはり直樹だった。隣にいる良平からお前黙っとけよという視線を向けられ直樹は気落ちしながら後ろに下がった。そんな直樹を見て周りの3人は慰めた所、直ぐにいつもの調子に戻りまた前に行こうとしたら3人に止められた。
後ろが少々煩かったがテッケイルと良平の話は続いていた。
「聞きたいことがいくつがあるがいいか?」
「大丈夫です」
その良平の言葉遣いを聞き一瞬眉をひそめたが直ぐに戻し話を続けた。
「まず、何故ランクDから始めようと思ったかだな」
ここで冒険者についての説明だが
ランクはG、F、E、……、A、S、SS、SSSとなりGが最低、SSSが最高。Cで一人前、Aで超人、S以上は人外、SSSは3人いれば国を1晩で落とせるレベル(1人でも時間をかければ可能)。
魔物は冒険者が同ランクでパーティーを組んで討伐することを前提としているため魔物がAランクなら同じAランク4人で同等の強さと考えられている。
大体どの街にも支部がある。本部はエトニア自由国の冒険者の街キッダガムにある。
パーティーを組むことができる。6人で1パーティーとなる。
ということを過去に騎士達から聞いていた直樹達だった。
「それは、まだ私達が全然冒険者に必須な知識・経験が無いと言うことと実際は弱いからですね」
良平が淡々と答えた。だがそれを聞いたテッケイルは何言ってんだこいつみたいな顔で見ていた。そんなテッケイルにまた淡々と良平は答えた。
「まぁ、色々とあるんですよ。色々と」
テッケイルは何か深い事情があるのだろうと推測した。直樹達はそこまで深くは捉えていなかったが召喚者でレベル1というのは深い事情と言っても問題ないかもしれない。
「次は、お前達は武器や防具はどうするのかって話だな」
テッケイルは直樹達を見ながら言った。確かに直樹達は武器は直樹が剣を貰ったくらいで武器や防具と言えるものは何も持っていなかった。
「それなんですが、今日中に鍛冶屋か商会に行こうと思っていました」
テッケイルは一度考えてから口を開いた。
「それならここのギルドを出て、右に行き一つ目の曲がり角を左に曲がって真っ直ぐ進めば金槌の看板がかけてある鍛冶屋があるからそこに行くといい。そこで俺が、テッケイルの紹介だと言えば大丈夫だ」
「わかりました。後で行ってみます」
良平は笑顔になりそう返した。
「最後だが今日泊まる場所はどこを考えている?考えてないなら俺の宿に来ないか?」
まるでいい提案だと言うようにテッケイルは直樹達に告げた。
「そこってどんくらいの値段?風呂はある?飯は美味い?ここから近い?」
そしたら今まで黙っていた直樹が口早と聞いた。
「落ち着け。一つずつ答えてやるから。まず値段は飯が朝・晩込みでシングルなら一日銅貨50枚だな。ツインで銅貨80枚だな。風呂はあるのかと聞かれたら無い。だが変わりにお湯をだしてタオルで体を拭いたり髪を洗ったりもできる。飯は美味い!美味いぞ!泊まりじゃなくてもいいから食べに来い。ここから近いぞ。このギルドから見て左に二軒挟んだところだ。ウチの売りは安い!美味い!だぞ」
そうテッケイルが言い終わると、直樹達5人は話始めた。
「どうする?俺的に風呂が無いのは痛いが良いところだと思う」
「俺もそう思うよ」
「基本どこでもいい」
「俺も」
「いいんじゃないかな?」
「んじゃ決定で!」
「「「「おう!」」」」
そして直樹達がテッケイルの方を向くとテッケイルが面白そうに笑っていた。それを直樹達が聞くと…
「お前達が昔の俺達にそっくりだと思ってな」
とテッケイルは懐かしむように言った。
「テッケイルさん?マスター?ギルド長?わかんないけどその宿に泊まりたいんだけど5つのシングル空いてる?」
「おう!大丈夫だ!俺の宿に来れるのは基本俺が認めたやつらだからな!あとどうとでも呼んでいいぞ」
そう言ってテッケイルは笑って訓練場を後にした。それに続き直樹達も後に続いた。
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そして直樹達はギルドカードを受け取ってから冒険者ギルドをでて薦めてもらった鍛冶屋に向かった。
そんなに距離も無かったので道に迷うことなく無事に辿り着けた。そして直樹がその鍛冶屋のドアを開いた。
「たのも~!たのも~!」
「道場破りか!」
そんなボケとツッコミをしていると奥の部屋から怒声が聞こえた。
「ええい!うるさいわい!一体どこのどいつだ!」
その奥の部屋から出てきたのは140cmくらいのムキムキな爺さんだった。
「テッケイルっていうギルドマスターから紹介されてここに来たんだ。武器と防具を見せてよ」
直樹が言うと、その爺さんは直樹達をじろっと見てきた。
「テッケイルの紹介のぉ~。お主の得物はなんだ?」
「俺?俺は片手剣かな」
そうやって直樹が言うと爺さんは奥の部屋に行き少し待ってると片手剣を持って戻ってきた。そしてその片手剣を直樹に差し出した。
「振ってみろ」
直樹は頷いて片手剣を受け取り、みんなに少し離れているように言うと、その場で何回か片手剣を振った。
それを見た爺さんは頷きながら他の4人にも同じ事を聞き、同じように振らせた。
そして全員が振り終わり、爺さんはやっと自己紹介をした。
「わしの名前はベルクだ。見ての通りドワーフだ。お前達にはわしの武器を特別に作ってやる。要望は何かあるか?防具はここにあるいくつかのやつを適当に見繕ってやるから安心せい。大きさもあわせてやろう」
テッケイルは最初に会った頃とは違い幾分か落ち着いた声音で言ってきた。それに直樹達はそれぞれ自己紹介して返した。
「俺は直樹!要望はサブ用にもう一つ片手剣が欲しい。サブだけどしっかりしたのがいい」
「俺は良平です。要望は杖と、バトルスタッフと呼ばれる杖も欲しいです」
「俺は宮本、要望は槌が欲しい。大きさは任せる」
「佐東、要望は短剣2本と投げナイフ10本ほど」
「俺は智哉です。要望は片手剣と盾を一つずつお願いします」
「あ、みんなに訓練用の重たい装備を一つずつ追加で」
「それは分かったが、ナオキと言ったか?お前はなぜサブ用なんだ?」
ベルクにそう聞かれた直樹は良平にマックスから貰った剣をだしてもらいベルクに見せた。
「んん?んんん!!そ、それは、まさか!お前!これを何処で手に入れた!?」
「え、これ?近衛騎士団長のマックスに貰った」
「ほ、ほぉ…なるほどな。それなら納得もできるな」
「おい、爺さん。一体どうしてそんなに驚いてるんだ?」
「お前はこの剣の価値がわかってないようだな…この剣はミスリルとオリハルコンでできた合金でできているとは知っているか?」
「ああ、そうやって聞いたからな。魔力の伝導率もいいって聞いたな」
「それもそうだが、もう現在の技術でミスリルとオリハルコンの合金なんぞは造ることができないんだ。その合金ほど魔力の伝導率がよい剣をわしは知らん。あるとすればダンジョンにある剣くらいだろうな」
それを聞いた直樹達はポカンとした後にマックスに貰った剣を見て驚いた。
「「「「えええぇぇぇぇ!!!???」」」」
「お前ずるいな!」
「俺に寄越せ!」
「誰がお前になんかやるか!」
「売って金にしよう!」
「人から貰ったものとか売れねぇよ!」
「んんんっ!!!」
などとふざけているとベルクが咳払いをして止めた。
「ナオキがいらない理由は分かったから取り敢えずお前達に変わりの得物を渡しとく。壊したら弁償してもらうからな」
そう言ってまた奥の部屋に行きそれぞれに合った武器を渡してくれた。
「防具は今見ていくか?」
「お願いします!」
そう言うと「いちいち持ってくるのが面倒だから来い!」と言われて直樹達も奥の部屋に入っていった。
早く魔物を倒しに行けよ!って読者の皆様からいわれているような気がします…
すみません…
そして各話のタイトルが微妙じゃないかと思う私がいます。
要望ですが感想待ってます!本当に待ってます!
そろそろうるさい!と怒られそうなので程々にしておきます。
次回の更新は木曜の19時です。




