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デアイ【4】

そして放課後。授業が終わった後、佳奈はとっとと帰ってしまった。何でも、親睦会の準備をするらしい。で、待っている間、俺とサーシャは暇だから佳奈に呼ばれるまで俺の家で待機していなさいってことなんだそうな。俺は自転車置き場の前まで行き、朝急いで止めた自転車に跨った。ふとサーシャはどうしているのか気になって横を見ると、サーシャも自転車に跨っていた。

 


「サーシャ、その自転車どうしたんだ?」とても気になったので聞いてみた。すると、

 


「あ、これ? 昨日買ったの。良い自転車でしょ?」

 


「そうだな。ところで、サーシャの家はどこなんだ? この近く?」

 


興味本位で聞いてみた。すると、

 


「うん、そうだよ。えっとね、おっきい日本家屋の隣にあるアパートの一階。築三十年でボロボロなんだけどね。一人暮らしするのにお金を使いすぎるのは良くないと思って、なるべく家賃を抑えようと思ったの。そうだ、まずは私の家に寄って。あ、そうだ。悠人の家はどこにあるの?」

 


そう聞かれたので、俺は正直に言った。

 


「ああ、そのおっきい日本家屋だよ」

 


俺がそう言うと、サーシャはとても驚いたようだった。……よせよ、照れるじゃないか。

 


そうこうしている間に、サーシャの家に着いた。そこで俺は信じられないものを目撃してしまったのです。それはなんと、廃墟寸前のアパートだった。というか、絶対出る。何が出るかって、ネズミとか、蜘蛛とか、シロアリとか、人類最強の敵とか、あちらの世界在住の方々とか。

 


「どうかな? このアパートはかなり汚いけど、私の部屋だけは綺麗でしょ? 結構頑張ったんだよ」

 


そう言うのを聞きながらサーシャの部屋を見てみると、確かに綺麗だった。……ほかの部屋と比べてだけどな。



部屋の中も見せてもらったが、これはダメだった。



「おいサーシャ、初対面の人に言うのもなんだけど、お前、俺の家で住め。こんなところで女の子が住んでちゃダメだろ。俺の家なら部屋が無駄に沢山あるから自由に使っても良い。どんなに汚くしても良い。ただ、ここだけはダメだ。俺の家で暮らせ」

 


何で俺がこんなことを今日会ったばかりの女の子に言ってんだろ。いや、どうしても初対面って感じがしない。例えるなら、久しぶりに会った親友って感じか。それはそうと、俺がうちで暮らせと言って、五分ほど何も喋っていない。どうしたんだと思ってサーシャの顔を見てみると、恥ずかしさや、喜び、そして困惑が入り混じったような表情で立ちつくしていた。

 


「え、ええええええーっ! 嘘でしょ? 日本に来て急に愛の告白? 求婚? それとも、きゃーっ! ええっ、どうしよう、とりあえず国の両親に連絡しなきゃだめかな?」

 


だめだこいつ、テンパってやがる。というか混乱している。もしくはパニクっている。まあ俺が悪いんだし、どうにかしないとな。

 


「驚かせてしまったのなら謝る。いや、求婚とかじゃなくてさ、ただ単に女の子が一人でこんな所に住んでいるのが我慢できなかっただけだ。それに、俺の部屋で一緒に寝ろって言ってる訳じゃないんだ。俺が使ってない部屋ならどこでも使って良いし、水道費光熱費も気にしなくて良い。もちろん食費もだ。お望みなら、毎日弁当だって作ってやる。まあ、家賃だけは払ってもらうけどな。一ヶ月一万円で」



そう言うと、サーシャは元のテンションに戻り、しばらくして、一つだけ俺に聞いた。

 


「どうして、今日始めて会ったばかりの私にそこまでしてくれようとしているの?」

 


どうしてって、そりゃあ、

 


「それはさっきも言ったろ。まあ、なんだ。一番の理由は、俺がお前に初めて会ったとは思えないからだ。俺さ、サーシャのこと見てるとこう、懐かしい感じがしてくるというか。俺達、どこかで会ったとかそういうのは無かったよな?」

 


無かった。サーシャは、悲しそうに俯きながら答えた。そしてその後、一言だけありがと、とだけ言って荷物をまとめようとしていた。なんだか、俺も手伝った方が良い気がする。というか、手伝わなかったら人としてどうなんだよって感じだよな。

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