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~③~

翌朝。。


人々の賑わいでる声でアリスは目が覚めた。

「…やだっ!私ったら寝坊じゃない!」

部屋の窓から覗くとお店が並び、人が溢れている。

「早く支度しなきゃ。…今日からお祭りだったの忘れてたわ。。」

三日間続くこの祭りは葡萄畑の収穫を祝い毎年『栄光の3日間』町中がワインの香りで包まれるのだ。



慌てて1階に降りるとルネの姿はなく「おじいちゃーん?居ないのー?」

リビングに行くとオルガの焼きたてエッグパイとメモが置いてあった。

『大聖堂に行ってきます。』


ノートルダムまでの距離は少しあるがルネはこの時期になると毎年の様にミサを捧げに足を運ぶ。

「…教会に行ったのかぁ。…私は仕事の続きをして、早くエマ様のお宅に行かなくちゃ。」


作業台に向かい、昨夜の型紙から布を裁断しはじめた。ミシンの音がリズムよくなり始め何色もの高級生地が机をうめる。


…ここは、タッグをつけた方がいいわね。…シャルルとクロードはこうして…。アランとリディをこの糸で…。

夢中になってミシンを動かしアランの服は大体な形を見せた。

「うん。いいわね!まだまだ途中だけど、アランに合わせに行こう。」

作りかけのアランの服を持ちビーズや綺麗な石を鞄に詰め込むと、庭に咲いた白い花を摘んでエマの家へ向かった。



コンコン!!大きな玄関ドアをノックすると執事のドニが出てきた。

「いらっしゃいませ、アリス様。本日、お嬢様は外出しておりまして…不在ですがご自由に部屋を使って頂きたいとの事です。何か必要な物がございましたらドニまで申し付け下さいませ。」


「はっ、はい!ありがとうございます。」部屋へ通されると、早速アランに途中の服を合わせ

「アラン。この色やっぱり似合うわ。どう?凄くお似合いよ?」

作りかけの服に完成のイメージが湧いた。

「皆のも一緒に作ってるからね?今日はリディ達の飾りを作ろうと思って持ってきた物があるの」

鞄から細かなビーズを取り出し、シャルルとリディの座るテーブルに白い花を生けアランの横で綺麗なビーズ細工を始めた。

「今日はね…町はお祭りで3日間も賑やかなのよ?おじいちゃんは教会に毎年行くから、お祭りを楽しんだ時ないけど…。町の守り神がノートルダム教会に飾ってあるんだって。私も見た時ないし、皆で見に行きたいわね?」

                      ・

                      ・

物言わぬドールに一方的に話かける言葉の数々。でも返事がなくてもアリスは満足していた。

いや、満足しようとしてたのだろう…。幼い頃アリスの遊び相手は人形しか居なく、いつからか祖父に両親の事も自分から聞きづらくなってしまった。…ジゼルを作ってからは祖父に出来ない両親の相談はジゼルが聞き役になっていたのだ。

「アラン…あなたは何て美しく眠るのかしら。もしも…あなたや皆と、ジゼルとお話し出来たら……。

皆と暮らせたら…私…。」

疲れた目を擦りながら、足組みしたクロードの足に寄りかかって瞼をユックリ閉じた。。。

~~フワッ~~

モノではない手でもない感触が細いアリスの髪を撫でた。

心地よいその感触に怖さはなくアリスは瞼を閉じたまま聞く「…とても気持ちがいいわ…クロードなの?」

優しく、そっと何かに包まれる感覚が気持ちく、しばらく動き出せずにいた。。「何だかすごく安心するわ…。」





夕日が窓の外を一色にした頃、完成したクロードのピンとリディの髪飾りを二人に着けてあげた。

「皆、また明日ね。」



玄関に向かうと丁度、馬車から降り帰宅したエマに会う。

「いらっしゃいアリス。家を空けてごめんなさいね…。」

夕日に照らされたエマは一段と美しかったが、その表情は悲しげに見えた。

「ごきげんよう…エマ様。お気になさらないで下さい、私をお部屋に通して頂けただけで充分です。」

…何だかエマ様、お元気がなさそうだわ…

「アリス…。帰る前に少しお相手をして下さる…?」「あっ…はい。」


案内されたのは、二人では広すぎる豪華な大接広間。

気後れしながらソファーに腰掛けるとエマからは、薔薇の匂いとほのかにワインの香りがした。

…オルゴールの素敵な曲…


「アリスもワインでよくて?」

「いっいえ!!私、お酒はまだ…。飲めないので…。」

恥ずかしそうにうつむくアリスを見て、エマの細くて白い手が髪をなで顔の頬に触れる「んふふ…かわいいこね。さ、こっちを見て…?」

「…っ!エ…エマ様…。少しお酔いになられてるのでは…。」

エマの手が触れるとアリスは心臓の音が聞こえてしまうんではないかとハラハラした。

「そうね。。アリス。今日は…アリスに傍に居て欲しかったの。」


「…エマ様。」

「…アリスは愛をご存知?無為な言葉など必要なく…まるで甘い毒。」

困惑するアリスにエマは静かに息をつく。その瞳は遠くを見るように細められていた。

「曖昧で甘美な時間の後には全身に回った毒で夢から醒めてしまう怖さ…夢は夢。現実を知ってしまうとその毒すら時々愛おしく思うのよ…。」

…エマ様は私に何かを伝えたがってるように見えた。だけど…、私にはよくわからない。


--夢は夢-- 










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