~②~
「それでは…この子に素敵なお洋服をお願いね?アリス。」そう言ってエマは部屋をでた。
-----バタン!!-----
静まりかえる部屋の中、今にも起きだしそうに眠る優美な男性をアリスはじっと見つめ続ける。。
素晴らしく人間に似た人形達に目を奪われ仕事に執りかかれなかったが、昨日の祖父の言葉を思い出して口を開く…
「初めましてアリスよ。皆とっても素敵ね…、これから仲良くして下さる?私に…皆の事教えて欲しいの。。」
物言わぬ人形達に語りかけ見つめた首元の先に光る何かを見つけた。
「…ネックレス…?」何か書いてあるわ…
「…ア…ラ…ン?…アラン。あなたの名前なの?」
服の隙間から見えたオニキスのネックレスには名前が彫ってあった。
もしやとソファーに座る紳士の首元を見ると
「あなたにも…クロード…。」窓際の女性には「…リデイ。」もう一人には「…シャルル。」
4体全てにそれぞれ名前が付いていたのだ。
…エマ様が付けたのかしら…
「皆、とってもいい名前ね。大切にされてるのが分かるわ。それじゃあ…アランあなたの服を作り直すから体のサイズを教えてね?」
優しく抱きおこし肩幅や袖など全身のサイズを測り仕事にかかる。
「アラン、あなたは何色が好き…?銀色に光る綺麗な髪色には…この色はどうかしら?」
アリスは色合わせで持ってきた数種類の布生地をアランに合わせ、襟元にかけた。
「…うーん。これじゃ暗すぎるわね…。。」
深紅の高級生地を眺め顔を傾げる。
「ん…?この色…」
立ち上がってクロードに近づき合わせると「うん!ピッタリ!…この生地ならクロードがいいわね。」
黒髪で知的なイメージのクロードは大人の男性だ。
「クロード、あなたはどう?胸元にピンを豪華に付けたらきっと素敵だと思うの。」
リディにはシルクの薄紫色の布を近づけ
「色気のあるとびきり美人なリディには…そうね…瞳と同じ色のドレスはいかが?お揃いのチョーカーも綺麗よ?」
その向かいに座り、リディに引けをとらない美形のシャルルには
「薔薇の様に美しく…ワイン色の長髪…黒のベルベット生地なんてどうかしら?髪がきれいだから引き立つわ…」
エマに頼まれたのはアランの服だけだったが、アリスは内緒で他の3体のサイズを測り書きとめた。
「皆の分も作ってプレゼントするわ。楽しみにしててね。」
アランの色合せが決まらないまま時間が流れ窓の外を見ると…
「こんなに日が沈んでるわ…。大変!おじいちゃんが心配しちゃう。皆、明日また来るからね?アランあなたには明日上等な生地を用意してくるわ!」
アリスは部屋を急いで後にした。
暖炉の前で本を読んでいたエマに
「エマ様!また明日伺います。」
「あら…夕食をご一緒にと思ったのに。帰ってしまうの?」
「ありがとうございます。でも…帰って仕事をしたいので!」
「ふふふ。そうね夕食はまた今度…。ご苦労様アリス。」
門を出ると下り坂をかけおりた。早く帰って皆の服を作りたかったのだ。
「ワクワクするわ!おじいちゃんに話さなくちゃ。」
…どんなドレスにしようかしら…
カランカラン~!
「ただいまー!!」
「こら。アリス!店の入り口から出入りするなと言ってるじゃろ!お客様が居たら…」
「聞いて聞いて!おじいちゃん、エマ様のお宅に行ったら…」
・
・
・
ドニエ邸のバラ園でお茶をした事やお屋敷の話と人形達の話に夕食中も話題が尽きなかった。
話に夢中になりすぎて、オルガの届けてくれたパイの減りも遅い夜。。久々に楽しそうな孫アリスの表情にルネは
嬉しさと何かを確信した。
「おじいちゃん、工房借りるわね。アランと皆のドレスを考えなきゃ!」
「はいはい。夜更かししないで休むんだぞ…」
…はあ。。。彼は何色がいいかなグリーン?ダークブラウンとか?…違うわ。
ジゼルの置いてあった地下の部屋で生地を選んでいた。
「リディのレースも…」
ドスンッ!!!
「きゃっ!」飾り棚から箱が落ち開いた箱を覗くと女性の描かれた一枚の絵と布が入っていた。
「この女性…誰かしら?すごくきれい…。」
深々とした艶やかなブルーベルベットの生地と絵の女性は同じ色のドレスを着ていた。
「この色だわ!アランにきっと似合う!」
…これだけあれば十分作れるわね…
工房に戻ったアリスは早速仕事に没頭し始める。。昼間のサイズを写し全員分の型紙が出来た頃、夜も更けこんでいた「ふぅ…型紙は出来たわね。…疲れた…。」
一息ついたアリスは机の上に倒れこんで目を閉じてしまった。
・
・
・
「Alice……。Alice…Dufoarcd…」
…うぅ~ん…
「…アリス…。アリス聞こえる…?」
「ぅう~ん…??誰??また、この夢だわ…。あなたは誰なの?」
「アリスあなたは人形師よ…。絶対に…人形を愛しちゃだめ。」
「…人間がドールを愛しすぎると…。」
---バタン。---
「こんな所で寝おって。。アリス起きなさい!風邪を引くぞ。」
ルネが心配して入ってきた。
「…おじいちゃん。。私、今不思議な夢を見たの。。女の人が名前を呼んで人形を愛しちゃ…」
「アリス-。もう遅いんだぞ、寝ぼけてないで早く部屋で休まんかぁ。。明日聞いてやるから。」
「…はーい。」
眠気と胸のもやもやを残しアリスは部屋に戻った。
「レオン…メロディ…。アリスもやはりデュフル家じゃの…。」