~⑥~
祭りの最終日------。
その日、一日アリスは注文の仕事が溜まっていたので外に出ず工房で過ごす。
リディは庭の花の手入れをシャルルとしてくれて、クロードはルネの残した本の山を物色しながら喜んで見ていた。
アランの姿は見えながいが、誰も気にとめない。
ジゼルは「アランのせいで部屋が散らかる」と眉間にシワを寄せ掃除を進めている。
仕事をしながら、ここ数日の出来事を思いだしたアリスは浮き世離れしている自分の身の出来事に馴染めずにいた。
「……はぁ。」
祭りの事といい、皆が目覚めてくれたのはとても嬉しいけどうまくやってけるかしら…。。
たまに、賑やかな空間とは反対にアリスの心が不安にかられる。
町は祭りの最終日で急がしそうだが、外に出る気分ではない。
先日の一件を思い出すとまだ背筋が凍るのを感じた…
「アランが来てくれなかったら…。私…。」
とっさに呼んだアランの名を自分でも驚くが、それよりも口を開くと意地悪でイメージしていた彼ではなく複雑だ。
「眠ってるときは、あんなに綺麗なお人形だったのに…」
手に持った針にも力が入る、けど…見知らぬ男にからまれて死ぬほど怖かったがアランの狂気に満ちた力は不思議と怖くなかった。。
「…皆にも、制御されてるけどアランみたいな力があるのよね……」
自分にはない不思議な力を考えていた。
すると何故かアランに抱きしめられた事を思い出してしまう。
-------イタッ…!
…指刺しちゃったじゃないっ…
顔の熱があがっていく。
彼の言った言葉が頭をグルグルまわる------。
その後、その件についてはお互いに一切触れてないので瞳に見えた悲しい光がなんなのかも分からない。
-----消してやる。そう言われたのに棘のないイバラが優しく感じるアリス…
「ああもう…!仕事に集中しよっ!」
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アランのいない夕食を終えてから、いつものように皆で他愛もない話しをし、
楽しい時間が過ぎると「おやすみなさい」と言ってアリスはリビングを後にした。
部屋に戻った窓から静かな月を見る-----。
「眠気がこないってどんな感じだろう…。」皆の声がまだ耳に残るアリスは呟いた。
秋の夜長に見る月は一年前と違って、とても神秘的な明るさを放っている-----。
「…おじいちゃん。」
……今、おじいちゃんが生きていたら。。何て言うかな……
アリスは一階に降りると、リビングのドアの向こうに居る皆に気づかれないように玄関をでた。
外に出て向かったのは両親とルネの眠るお墓。
暗闇の中、月の灯りを頼りにたどった先には、かわらず両親とルネが静かに眠っている----。
そこから見える湖は月光にきらめく水面がとても綺麗だった。
時折水の跳ねる音がして、波紋が広がる…アリスはぼんやりとその光景を見つめていた----。
どれ位眺めていただろう
静かなこの幻想的に見える風景をじっと静かに見つめ、「ふぅ……。」とため息をつく。水面を見つめていた視線がどんどん地面へと落ちていったその時だ。
「!!!」
水面から一斉に水が噴き上がる。高く空へと舞い散る水は、月光の輝きをうけてきらきらと光った。
「なんて……、綺麗………」
静寂の中、月に照らされて輝く水は神秘的で驚きよりも美しさに言葉を失った。
『……今夜だけは特別だぞ。』声のする方に振り返るとアランが立っていた。
「っ…アラン!?…………あなたがこれを…?」
『…本当はあんまり、見せていいもんじゃねぇんだけど、この前怖がらせたからな…。』
月灯りと水しぶきに美しく反射したアランが近づく。
『少しは喜んだか…?今日…祖父さんに会いに来たんだろ…?もう一年だもんな』
アリスはドキッとして返事をする。…いつから居たのか聞こうとしたけど言葉が出てこなかった…
「う、…うん。知ってたの?」
『…あぁ。知ってる、お前が泣いて俺にお願いしてきたのも…』
勢いよく吹き上がっていた水は徐々に収束し、呆気ないほど自然に元の姿を取り戻す。再び静寂に満ちた場に、
柔らかなアランの声だけが響いた。
『元々、俺達が身体を手に入れたときは精霊の力はほとんど封印するのが条件だった…。創造主は俺達が力を使って人間を害する可能性と、オーナーになる人間がその力を悪用するのを恐れていたからな。』
「……そうね。」曾お祖父さんが居なければ、彼らはこの場に存在する事が出来なかった…
きっと精霊の力を知っていたから。。。出来るだけ人間の傍に居させる為にそうさせたんだろう…
「私に…。力を使って大丈夫なの…?さっきのだって…。」
『さぁな。。。お前の曾祖父さんと暮らした時はもうちょい不便だったけど、身体を得た事が嬉しくて力を使いたいとも思わなかった……。今は…、一年前お前は泣いてて…俺は何もしてやれなくて…すげぇ悲しかった…。』
アリスが無理なお願いをアランにした事が、アランを苦しめてしまったのだろうかと下を向く。
アランの呟く声は遠い過去に思いを馳せるように聞こえた、二人の沈黙が湖をよけいと静かにさせる----。
「アラン…?」
『あの日、皆も思っただろうな。涙を流す人間のお前に何をしてやれるかと…、お前の泣くのなんか誰も見たくねぇからな。俺の力も…使う気はなかったけど、こないだお前を前にしたら止められなかった…。今夜だってあんな暗い顔みたら……。だからアリスは笑ってろ。皆の為に』
ドクドクと胸が苦しくなった。。
味わった時のない窮屈な鼓動がアリスの胸を叩く。。
「……アラン………ありがとう。」
一言、そう言うのが限界で微笑みながら月灯りの水面を見た。
アランは立ち上がってもう遅いから帰るぞと私の腕を引っ張り家に戻った。
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--------夜着に着替えたものの、一向に眠気は訪れない。頭の中には色んな思いが渦巻いていて、ちっとも眠れる気がしなかった。
カーテンを開けると、さっきの月も雲で見えなくなっていた。答えの見えない私の心のようだ。
「……ちゃんと分かっていたのに……なんで私は、こんなにワガママになってしまったのかしら…」
夢に見たこれほどない夢が叶ったのに、まだ何かを求めてしまう…
一緒に過ごせば過ごすほど、どんどん欲が出てきてしまう。もっともっと、と思ってしまう。
「……ちゃんと、眠らなくちゃ」今はもう、何も考えたくなかった。
ベットに入ると幼子のように身体を縮めてぎゅっと目を閉じる、朝がきたら…またお別れの日が近づく。
いっそ永遠に夜のままでいいのに------。そんな事を思う自分勝手さが、つくづく情けなかった……。




