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~④~

「ん……」

ふっと覚醒しかけた意識に目を開ける。

「…………?」

いつもより早起きな朝だと感じ身体を起こして皆より先にリビングへ行こうと、ベットから抜け出した瞬間。


------コンッコン!----------

「失礼するわ、お早いお目覚めねアリスさん。」

「………リディ………?」

リディ

『気配がしたので、洗顔用のお湯を持ってきたわ』

「そ、そう…。ありがとう…」


朝が弱い私には少し頑張った朝なのに…起きたのが分かるなんてこれが精霊の能力なのかしら。

「リディは早起きね……」

ため息と共にそう呟くと、リディは困ったような顔で言った。

リディ

『私は、眠りを必要としないのよ…』

…………ああ。

そういえばと今更ながらに思う自分に驚く。……私ったら何を勘違いしてるんだろう。


アリスは寝ぼけてたのかと苦笑いしながら朝の身支度を始める。




----------------------------



朝から祭りで活気ある空気を吸いに外へ出ると。


オルガ

「アリス!」

後ろから聞こえた声に振り返ると、オルガが祭りの準備で店のパイを出す為に外へ出ていた。

「…おはよう、オルガ。」

「アリス、最近少し元気そうでよかったよ。ずっと心配だったんだよ…。そういえば最近、お客様が来てるのかい?」

オルガの質問に対して妙な冷汗がアリスをソワソワさせる。

「……っっと…そ、それは…」 


そこに絶妙なタイミングで外に現われたのは

「…アラン!?…シャルル!?」

何だかよけい汗が出てきたわ…


アラン

『…おい、チビが探してるぞ。朝飯だ早く戻れ。』

シャルル

『ごきげんよう』

「…………………。」

無愛想なアランとニッコリ微笑む長身の二人を見上げ、オルガは呆然とする。

オルガ

「……アリス、こ、こちらは?」

「あっ、その…、」

シャルル

『おはようございます、御主人。私は亡きルネ・デュフルク氏の遠縁の親戚で幼い頃のアリス嬢を知るシャルルと申します。御挨拶が遅れました。彼もその一人のアランです。』

「は…はぁ…。」



完全に浮いてる二人を前に信用してないのが伝わる。そこに、むかいの花屋のニナ夫人まで…

ニナ

「朝からなーにしてんだい!アリス…っこりゃ…どこの貴族さま達だい?!」

「えっと…」動揺するアリスに耳元でアランがそっと耳打ちする。

アラン

『…お前は早く中入れ。俺達でうまく説明しとくから…早く!』

オルガとニナにとりあえず苦笑いをしてお辞儀をすると、アリスは彼らを心配しながら家の中に入った。


------本当に大丈夫かしら------


シャルル

『これは御婦人…。初めまして。店の花達に引けをとらない可憐な方だ、お会いできて光栄です。』

ニナ

「なっ…なに言ってんだよぉ。嫌だねぇ。」赤らむニナを見てアランがおいうちをかける。

アラン

『そうだな、…あんたっ。…あなたの様な方がアリスの近くに居てくれたのなら心配ない。とても安心しました…。彼女とは幼少の頃にあったきりですが、昨年…私の母の従弟のそのまた従兄妹の兄ルネ・デュフルク氏が亡くなったと聞き、すぐに駆けつけたかったのですが仕事で海外を飛び回ってるのでなかなか来れずにいた…。』

シャルル

『そうなのです。。彼女が祖父を亡くされて傷心し、えらく心を塞いでると聞きました…。僕達の仕事が運よくこの国でしばらくあるのでお世話になる事になったのです。みな人形師である彼女の祖父には大変お世話になった者ばかりで、元気つけたく集まったのですよ。』

アラン

『以後…お見知りおきを。』


美しい2人に言葉を無くすニナ。


「…そ、そうかい!なんて心優しい殿方たちなんだろうね…。外国の方でしたか、どうりで見慣れない風貌だわ。」

オルガ

「なるほど…。アリスはおじいさんを亡くしてから、すっと一人で頑張ってきたんだ。両親もいなく寂しいだろうに…。居る間はどうか支えてやってくれな…。」


たんたんと話す二人の様子に疑いは消えていた。



------------------------



「あっ!二人とも…大丈夫だった…??」

シャルルとアランは出来立てのパイと綺麗な花をもって戻って来た。


シャルル

『二人に頂いたよ。美しい花だね?アリス。』

手にしている頂きものを見て胸を撫でおろす。


「……よかった。何とか大丈夫だったのね…ありがとうアラン、シャルル。」


アラン

『お前のあんな動揺ではバレちまうだろーが!ったく…。』

「ご、ごめんなさい…。」

リディ

『まぁ、いいじゃないの。二人のお陰で私達がこれから外に出やすくなったわ…ご苦労様二人とも。』

クロード

『…アリス。私の設定はどうしたらいいかね…。アリスの婚約者とかが無難だと思うが…?』

アラン、シャルル

『…それは絶対にダメだ!!』

アラン

『お前--っ!これ以上、話を厄介にすんなよっ!』



アリスは笑いながら皆を見つめた。

目線をテーブルにやるとアランのもらって来たパイが置いてある----。

けれど久しぶりに大好きだったパイを目の前にしてもアリスは喜べなかった。〔一緒に食べる〕

それは、人間なら当たり前の事だが…………絶対にありえないこと。


みんなと食べてときっと渡されたはずの、オルガのパイは複雑で…人形の皆は眠らないし飲食をしない。

朝食も夕食もご飯を食べているのは自分だけで、改めて不自然なことなのだと思い知らされた気分だった。。。



ジゼルの作ってくれた朝食はいつも通りとっても美味しい。

けれど……、どうしても食が進まなかった。

ふと顔をあげるとリディがこっちを見つめ微笑んでいる。



少しドキッとしたけれど、なんとか笑みを返しすぐに手元の食事に集中するフリをした----。

……いつも通り、のはずなのに。

いままで食事をしている間、見守りながらしてくれる他愛もない会話や料理の美味しさに夢中になったりしていたせいか、あまり気にならなかったのだ。


こういうのは、一度気づいてしまうと止まらなくなる………。

気づけば私は完全に食事のする手を止めてしまっていた。


ジゼル

『アリス?もう、いらないの?』

「あ…うん、ごめんね…もうお腹いっぱいみたい。」


ジゼルはアリスの様子がおかしい事に気づいていたが何も言わずにお皿を下げていった。


……悪い事しちゃったな…。



リディ

『アリスさん、本日のご予定は?』

暗く沈みそうになった気持ちを切り替え考えてると-----

リディ

『ねぇ?今日からお祭りでしょ、アリスさんが忙しくないなら皆で少し行ってみない?……どうかしら?』

「あ!!そうだ…いいわね。」

沈んだように見えたのかは分からないが、リディの気遣いある一言で救われる。クスッと意味深に微笑むとそのまま二階に呼ばれた。


すると-----。


「え……リディ!?待って、せっかく綺麗にしたのに…!」

リディ

『大丈夫。---私にまかせて。』

「…………………」



ブラシの心地よい感触が頭皮を優しく刺激する。

「リディって髪の手入れが上手いのね…………」

『どうかしら、ただ…良い素材を美しく飾ることはとても好きよ。いつもの髪型もお似合いだけれど、もう少し飾ってみたかったのよ。』


「わ、私なんかを飾っても、あんまり楽しくないわ…。」

『ふふふ。あなたを飾るほどに楽しいことはないわよ?アリスさんはもっと自分の魅力を知るべきだわ。過剰な装飾は野暮だけど、自分に似合うものを探すのはなかなか楽しいものよ…。』


「あんまり考えた事なかったけれど…。リディがそう言うなら考えてみるわね。」

一定のリズムで刺激される上下の動きにうっとりため息をつく---。


心地よい感触に、まるでお姫様になったような気さえするアリス。

--------女の人に手入れされた時ないけど、母親がいたらこんな感じなのかな…。


『気持ちよさそうね…。』

「こんなふうに髪を結ってもらえるのは初めてで……。小さい頃、おじいちゃんに手入れしてもらった位だし…。」

自分で初めて髪を結った時の嬉しい話を手を止めず、リディは黙って聞いてくれたのだった。

                      ・

                      ・ 

                      ・

『…………やっぱりここはもう少し…あっ、動いちゃダメよ。』

リディは何度も髪型を確認しながら手を動かす。。

ほとんど仕上がっている様なのに鏡を見せてもらえないアリスは焦れていた。



「リディ、今どうなってるの?早くみたいわ…」

もう少しよ、と優しくなだめられ、私は大人しく口をつぐんだ。

だけど…このドキドキする時間は何だか嫌いじゃない----そう思っていたら。


『…あなたが何かを願っていた様に、私達もあなたに何かをしてあげたい気持ちだったのよ……?私もね、あなたの髪を手入れして結ってあげたいとずっと夢見てたわ……。』

「……リディ。」

リディはニッコリと素敵な微笑みを浮かべて満足そうに仕上げる。

『……さぁ、完成よ。それじゃ鏡をどうぞ、可愛いお姫さま…。』

喜んで手鏡をとり覗き込んだ。


「………。」

映った姿に、色んな意味で絶句した。。。

「ね、ねぇ、、リディ…」

『どうかしら?とても綺麗でしょ?うふふふ!』満足して笑っているが…

「すごく綺麗に出来ていると思うの!だけど…私にはゴージャスすぎるわ。髪型に負けてるわよ…」

『んもう。。アリスさんは地味な髪型ではその美しいお顔がはえないわ!!それに今日はお祭りにいくのよ!?』

「…これでいかなきゃダメ…?」


無言の笑顔で頷かれて服まで着替えさせられ…

リビングに行きたがらない私を無理やり一階におろした。 


----------------



最初に食いついたのはシャルルだった。

『なんて素晴らしい!!美しいよアリス…。さすがリディだね?完璧なセンスだよ!』

リディは満足そうに微笑む。


アラン

『…なんて格好してんだ…アリス。その服ではぜってー外に行かせねぞ!』

クロード

『いや、むしろ行くべきだ。そして世の人々が君への関心が高い事に君は刺激されて---いっそうに美しくなる。。艶やかな女性に…。。』

アラン

『ぉい!お前近寄りすぎだ。。それにリディみたいな女は2人いらねぇだろっ』

リディ

『…………アラン。それは…私の愚弄ととればよろしいのかしら?』

鋭い目で口元だけが微笑むリディ。

リディが怒ってるの初めてみた…。こ、こわい…。

ジゼル

『皆さん、アリスも支度が出来たようだし!早く出て下さい。さ!行きましょうアリス?』


何だかすごいメンバーでのお出掛けに不安がこみ上げる。


平和にお祭りを楽しんでこれますように…。はあぁ…心配。




















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