途中
掲載日:2026/07/20
以前職場が同じだった生田君がボヤいていた話。
ある日、残業で遅くなった生田君が自宅の団地に帰って来たのは午前0時過ぎだった。
あちこちの部屋の窓にはまだいくつか明かりは点いているが、エレベーターの前にはひとけは無く、シンとしていた。
ああ疲れたなぁ、と思いながら自室の階のボタンを押すと、エレベーターの箱は一階に来ていたため扉はすぐに開いた。
乗り込もうと右足を一歩踏み出す。
と、いきなり上から何かが落ちてきて、目の前を通り過ぎていった。人間の様だった。
頭を下にして落ちてゆく途中の若い男で、一瞬目が合った。
「?!」
驚いて思わず後ろに飛びすさり、床を見るとそこには何も無かった。
確かに男が落ちてきて、目まで合ったのだが。
恐る恐るエレベーターの中をのぞき、天井を見上げてみたが天井に穴など開いていなかった。
その団地では今まで何度か身投げはあったが、その男性かどうかはわからない。
が、以来気をつけて見ていると、一階エレベーターの扉の横に、時々盛り塩がしてある事に生田君は気づいた。
盛り塩がしてある時は、生田君は五階の部屋まで階段で上がる事にしたらしい。




