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なろうラジオ大賞 投稿作品

転生悪女は舞踏会で愛の告白とかされないから!

作者: 潮海うみ
掲載日:2025/12/05



 私は転生者だ。前世では売れない役者だった。

 そんな私は、今世でも芝居小屋で役者をしながら食い繋いでいる。

 毎日食べるパンにありつけるだけで幸せだ。客席には着飾った貴族たちが優雅に芝居を楽しんでいる。

 貧乏な今世では、こういう身分の人たちとは、一生関わることはないのだろう。


 しかしある日突然、楽屋に伯爵様が現れた。


「養女になってほしい」


 え、私が貴族に?


「君は姉の婚約者を奪おうとする悪女として、愛娘シモーヌとその婚約者の仲を後押しして欲しい」


 まさかの悪役依頼?!


 紹介された姉、シモーヌは柔らかい雰囲気の美しい人だった。

 そして、初対面でいきなり聞いてもいないことを語り出した。


「筋肉って正義よね」

「は?」

「婚約者のエリック様が、筋肉がこうゴリっとしてて、丸太みたいだったらよかったのにって思うの」


 急にどうした。

 確かに婚約者のエリック様は線の細い美青年。丸太ではない。

 でもそんなことを聞いてしまったら、悪女役やりにくいんですが……。

 



 そんなこんなで舞踏会。

「エリック様、私と踊りましょ?」

 彼を見つけてすぐさま駆けつけると、エリック様ははにかんだ。

 よし、ナイス悪女。


「クリスティーナ嬢。僕は女優時代から君のファンなんだ。仲良くできて嬉しいよ」

「ふふ、そうだったのですね」

「ブロマイドも持ってるんだ」

「あら、照れますわ」

「サインも持ってる」

「へぇ……」

「屋敷にもまだコレクションがあるよ! 限定パンフレットも!」

「……」

 

 エリック様、オタクだな!

 鼻息荒くそう語るエリック様はちょっと意外で、なんだか可愛い……って違う! そういう方向に進むんじゃない!


 シモーヌ早く来て! あなたの婚約者と私、なんかいい感じになっちゃうわよー!

 って、向こうでマッチョを追いかけてる!

 私は盛大にずっこけた。

 

「大丈夫?」

 エリック様は私の手を取ると、優しく抱き寄せた。


「クリスティーナ。君が嫌じゃなければ、恋人になって欲しい」

「えっ?!」

「だめかな?」

「だめっていうか、私はあなたの婚約者の妹だし……」


 ってなんで悪女の私が一番まともなこと言ってんのよ!


「ちょっとシモーヌ、これでいいの?!」


 私は慌てて姉を問いただす。

 しかし彼女は笑顔で言った。


「自由恋愛万歳! お幸せに!」

「ありがとうシモーヌ! 幸せになるよ!」


 だめだ。この人たち自由すぎる。


「私まだ、恋人になるなんて一言も言ってませんからね!」



(終)



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