転生悪女は舞踏会で愛の告白とかされないから!
私は転生者だ。前世では売れない役者だった。
そんな私は、今世でも芝居小屋で役者をしながら食い繋いでいる。
毎日食べるパンにありつけるだけで幸せだ。客席には着飾った貴族たちが優雅に芝居を楽しんでいる。
貧乏な今世では、こういう身分の人たちとは、一生関わることはないのだろう。
しかしある日突然、楽屋に伯爵様が現れた。
「養女になってほしい」
え、私が貴族に?
「君は姉の婚約者を奪おうとする悪女として、愛娘シモーヌとその婚約者の仲を後押しして欲しい」
まさかの悪役依頼?!
紹介された姉、シモーヌは柔らかい雰囲気の美しい人だった。
そして、初対面でいきなり聞いてもいないことを語り出した。
「筋肉って正義よね」
「は?」
「婚約者のエリック様が、筋肉がこうゴリっとしてて、丸太みたいだったらよかったのにって思うの」
急にどうした。
確かに婚約者のエリック様は線の細い美青年。丸太ではない。
でもそんなことを聞いてしまったら、悪女役やりにくいんですが……。
そんなこんなで舞踏会。
「エリック様、私と踊りましょ?」
彼を見つけてすぐさま駆けつけると、エリック様ははにかんだ。
よし、ナイス悪女。
「クリスティーナ嬢。僕は女優時代から君のファンなんだ。仲良くできて嬉しいよ」
「ふふ、そうだったのですね」
「ブロマイドも持ってるんだ」
「あら、照れますわ」
「サインも持ってる」
「へぇ……」
「屋敷にもまだコレクションがあるよ! 限定パンフレットも!」
「……」
エリック様、オタクだな!
鼻息荒くそう語るエリック様はちょっと意外で、なんだか可愛い……って違う! そういう方向に進むんじゃない!
シモーヌ早く来て! あなたの婚約者と私、なんかいい感じになっちゃうわよー!
って、向こうでマッチョを追いかけてる!
私は盛大にずっこけた。
「大丈夫?」
エリック様は私の手を取ると、優しく抱き寄せた。
「クリスティーナ。君が嫌じゃなければ、恋人になって欲しい」
「えっ?!」
「だめかな?」
「だめっていうか、私はあなたの婚約者の妹だし……」
ってなんで悪女の私が一番まともなこと言ってんのよ!
「ちょっとシモーヌ、これでいいの?!」
私は慌てて姉を問いただす。
しかし彼女は笑顔で言った。
「自由恋愛万歳! お幸せに!」
「ありがとうシモーヌ! 幸せになるよ!」
だめだ。この人たち自由すぎる。
「私まだ、恋人になるなんて一言も言ってませんからね!」
(終)
お読みいただきありがとうございました。
感想や評価⭐︎をいただけると励みになります!




