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1.日常

窓からの日差しを感じて俺は目を覚ました。

高揚感があるせいか、目覚めが良かった。

俺は今日から高校生になる。

準備の為に洗面台に行くとボサボサ頭のお父さんが顔を洗っていた。


(しゅう)おはよう今日から学校か、それにしても朝早くないか?」

「おはよう! 楽しみで目が冴えちゃって、今日からまた特訓もあるし、少しおじいちゃんの家に寄ってから学校行くよ」


朝の談笑をしながら、2人とも準備を終わらせた。


「そうか、じゃ父さん先に家出るからな!」

そう言ってお父さんはそそくさと出かけて行った。


「さぁ、俺も出るか!」


おじいちゃんの家は学校を行く途中の3駅手前のバス停で降りる。

住宅街の一角には、大きな敷居に囲われた場所がある。その門を開けると大きな平屋が建っており、周りには立派な松の木が立ち並び、大きな池には綺麗な錦鯉が優雅に泳いでいる。まさに日本庭園を思わせる様な風情がある佇まいだ。


「何度観ても圧巻だな」


俺は平屋の方へ歩いていると住み込みで修行しているおじいちゃんの門下生達が掃除していた。


「おはようございます。お久しぶりです。」

「坊ちゃん!今日から高校生ですね!!ご入学おめでとうございます。朝早くから何用で?」

「朝早くから目が覚めてしまって、また今日から稽古があるので挨拶でもと思いまして」

「それなら師範は道場に居るのでそちらに向かってみては?」

「分かりました!ありがとうございます。それとこれつまらない物ですけど、良かったら皆さんで食べてください。」


俺は門下生達へ菓子折りを渡して、平屋の隣に建っている大きな道場へと向かった。

中に入ると、木や汗臭いマットの少し懐かし嗅ぎなれた匂いがし、胸が高鳴った。

道場の中心でおじいちゃんが型の稽古をしている。

中原(なかはら)勝治(かつじ)は空手のオリンピックで金メダルを取った事もある実力で、ニュース番組のコメンテーターとしても人気があり、知らない人は居ない有名人だ。

現役を退いた後は師範となり、ここで門下生を受け入れ指導している。そんな事もあり、俺は小さい時から空手を教わっていた。


「おじいちゃん!今日からまたご指導ご鞭撻のほどお願いいたします!!」

「お!修か!! 制服似合っておるな」

「そうかな?少しブカブカで服に着られてるような気もするけど」

「そんなもん今日からまた鍛えれば問題ないわい、それより朝早くからどうしたんじゃ」

「少し早く目が覚めたから挨拶しに来たんだけど、ここに来ると稽古やりたくてうずうずしちゃうよ」

「なら少し一緒にやっていくか」


更衣室で服を着替え、少し柔軟運動をした後に俺はおじいちゃんに型の稽古、組手の練習を指導してもらった。

やはり朝から運動するのは気持ちがいいな!

そうして時間ギリギリまで練習し、道場へ一礼してから外に出ると作務衣に着替えているおじいちゃんが居た。


「修よ大きくなったの、わしは空手をお前に教えてやるしか出来んかったがあの日から時が経つのは早いの〜、高校入学おめでとう」

「ありがとうおじいちゃん、行ってきます!」

そう言ったが、素直に喜べない自分がいた...

誰に聞いた訳でも無い、だが俺はこの家族と血の繋がりが無い事は知っている。


通勤ラッシュという事もあり、バスは早朝よりも人が多い、ちらほら同じ制服を着ている人も居た。

それからバスを降りて少しすると学校の校門に見知った顔あった。爽やかな黒髪に母親によく似た端正な顔立ち、俺の兄真人(まさと)だ。するとこちらに気づいて駆け寄ってきた。


「おはよう修!今日は朝早かったね」

「おじいちゃんの所に挨拶しに行っただけだよ」

「じいちゃん元気にしてた?」

「ああ、いつも通りピンピンしてたよ」

「なら良かった、さっき挨拶だけって言ってたのに稽古も付けてきてもらった様だけど?」

「なんで分かるんだ」

「長年一緒にいるから弟の事はなんでもわかる!」

「なんかそれ嫌だな...」



「会長ー!!」


後ろから呼び声が聞こえて、真人は「僕は挨拶運動があるから、じゃあ!あと稽古したならシャワー浴びてきた方がいいよ」と言って戻って行った。

別にそんなに臭く無いと思うけど?


1年3組の教室へと俺は足を運んだ。

黒板に席順が書かれており、その場所に座る。するとニヤニヤしながら、声をかけてきたのは小学校からの幼なじみ「白樺(しらかば)黒夢(くろむ)」だ。

子供頃にテレビに出ていた事もあり、入学式でも色んな人に話しかけられていた。もしかすると顔が良いからかもだが、、


「よう!修、、、おいお前汗臭いなどうしたんだ?」

「色々あったんだよ、あまり聞いてくれるな」

「それよりもお前髪色黒くしたんだな、綺麗な茶髪好きだったのになー」

「中学でも散々注意されたしな、めんどくさかったから高校からはって思っただけだ」

「お前の茶髪生まれつきだろ?勿体ないなー、俺は髪染めたくても出来ないのに...」


そんな他愛ない話をしているとホームルームのチャイムが鳴り、放送が流れた。俺たちは始業式の為に講堂へ足を運んだ。


校長の話はつまらないし長い、高校生になっても変わらないんだなと考えていると生徒会長が呼ばれ壇上へ上がった。


「先生方、そして新入生の皆さんおはようございます。生徒会長の中原真人です。新しい場所、新しい環境はワクワクする反面、不安な事が多いでしょう。僕も最初は同じでした。ですが分からないことがあれば先生方は全力で皆さんの力になってくれます!勉強を頑張りたい、部活動を頑張りたいそれぞれの目標や得意な事を活かせる学校です!生徒会メンバーもサポートしていくので共に学園生活を楽しみましょう!

最後に、1年生に僕の弟が入学しています!一度やると決めた事は必ず成し遂げるいい子です!夢中になり過ぎると周りが見えなくなるのはたまにキズだけど、そんな所も可愛らしい弟です!ぜひ皆さん仲良くしてあげて欲しい。僕からは以上です。」


真人はこっちに向かってグッドサインを送ると壇上を降りていった。そして全員が俺の方を見ている。隣にいる黒夢はめっちゃ笑っていた。最悪だ......。

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