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奉仕転生〜死んでも奉仕する〜  作者: 白アンド
99/150

おかえりなさい

母国に着いた…



懐かしい街並み。



懐かしい道。



懐かしい王宮…


「………」


四年ぶりの光景だ。

以前よりも少し小さく見える。


この先に彼女たちがいる…


どんな時でも可愛くて、どんな表情も素敵で、どんな反応でも俺を癒してくれた彼女たち。


この四年間、そんな彼女に会いたいがために頑張った。

辛くても鍛えて、泣きたくても鍛えて、彼女が常に頭の中にいた。


だけど…

そんなに頑張ったのに、今は会うのが怖い…

四年間、ずっと会いたかったはずなのに…

今は一歩一歩が重い…


「…………」


無くなった右腕を触る。


もうそこに腕と呼べるものは無い。

今、触っているのは肩だ。


………もう彼女を抱き締めれなくなってしまった…

力強く抱き寄せれなくなって、やりたかったお姫様抱っこも出来ない…


…………まあ…別に今すぐ会わなきゃいけないわけじゃないよな…

なら、まだ心の整理はつく。


まだ大丈夫だ…

まだ…


…………。


とりあえず、中に入ろう。



俺の部屋に来た。


懐かしい…とはあまり思わない。

最初に来た時から家具は変わっていないし、どこにでもある部屋だ。


だが、壁に掛けられたものに目が止まった。


それは二つの首飾り。

エミリーから貰った『竜殺し』と『竜滅ぼし』の紋章が付けられたもの。


懐かしい。

確か、竜殺しを貰った時にエミリーに『忠誠の誓い(求婚)』をしたんだっけか。


あれから色々あったが、あの時のエミリーは可愛かったな…


もうあの時の感情は残っていない。

あるのは『いい思い出だった』という記憶だけ。


もう彼女の顔すらもよく覚えていない…


……今日はそれを思い出すために来たんだ。

なら、ここにいる場合じゃないだろ…




「…………」


やって来たのは教室前。


目の前には扉がある。


どこにでもある木造の扉だが、この前に立つのは緊張する。


「…………」


ドアノブに手をかけようとするが、届かない。


近づけば近づくほど手が震える。


「…………」


と、汚れた袖が目に入る。


飛び散った血が服についたままだったのだ。


…こんな格好では彼女たちに会えない。

身嗜みは重要だ。


部屋に戻ろう。



よし。

準備は整った。


綺麗なシャツ、綺麗なズボン、温かみのあるベスト。


この格好をするのも懐かしいな。


これなら大丈夫だ。

どこも問題ない。


扉を開け、教室に向かう。




「…………」


怖い…


毎日この扉を開けるのを楽しみにしていたはずだ。

ここを開ければ、彼女たちに会えると。


だが、今となってはなんだ…

会いたかったんじゃないのか…


何のために四年間も鍛えた…


何のためにここに来た…


何のために…



何のために『腕』を失った…



「…………」


今日はやめとこう…


まだリオン()フォウ()にも会っていない。

父さんと母さんにも会わなきゃだ。


その後からでも遅くはないさ…

遅くはないはずだ…


その後は…


「………」


………………帰ろう。


俺は体を後ろに向け、歩みを進めようと…


「シャル…?」


心臓を握られたような気がした。


体が急に硬直し、目を声に向けて見開く。



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈。



そこには二人がいた。


もう見ることはないと思っていた人。


いつまでも会いたくて、いつまでも会えないと思っていた人。


見ただけで視界がボヤけ、頬が震える。


「シャル…!!」



ああ…


よかった…


彼女だ…


彼女の温かさだ…


忘れない…


もう二度と…




「おかえりなさい…シャル…」

「ただいま…二人とも…」




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― 新着の感想 ―
[良い点] やっとエミリー達に会えたシャルよかった… 序盤の方はかなりサクサク読んでいましたが、後半になるにつれて引き込まれるように読むようになりました! あまりハーレム系は得意ではないのですが、…
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