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奉仕転生〜死んでも奉仕する〜  作者: 白アンド
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癒し ー目が覚めたときー

『竜滅ぼし』の称号を得て、2日後。


結論を言えば、凱旋だった。

本来なら、多大な損失を覚悟して挑む飛竜討伐。

それを犠牲者はゼロで、しかも終わったあとは宴まで開かれたのだ。


しかし、俺にとっては大敗もいい所だった。

なにせ一晩中戦っていたため、フィルティアとできる体力が残っていなかったのだ。

魔力が枯渇すると、否応なしに体が動かなくなるのだ。

寝て起きたら戻ったが。


やってきた5匹の大人飛竜は灰燼と化すまで燃やし尽くしたり、氷漬けにしたりしたが、まだ心は晴れない。


「はぁ…」


机に突っ伏しながら、溜息をつく。

最近はずっとこんな感じだ。

授業にも身が入らない。


「シャル、今日も気分が優れないか?」


マオが気にかけてくれる。


称号を得たあと、マオは尊敬の眼差しのようなものを向けてくれている。


「ええ……少しだけですが…」

「元気なんて頑張ればいいのよ!」


エミリーが胸を張って言ってくる。


それでどうにかなればいいんだが…


「頑張るって、どうするんですか?」

「えっ ……が、頑張るのよ!」


はは…


フィルティアは現在お休み中だ。

彼女も俺と同じく落ち込んでいるのだろうか。

癒し系の姿を見れないのも今の俺に追い討ちをかけている。


「………ど、どうしても無理なら……わ、私が、癒してあげても……いいわよ?」

「え?! ほんとですか?!」


一瞬で元気100倍になる。

今なら、飛竜の100匹ぐらいはぶちのめせそうだ。


「ちょっと! 急すぎるわよ!」

「いや、エミリーに世話してもらうのが嬉しくてですね…」

「っ……しょうがないわね、授業が終わったら私の部屋に来なさい!」

「はい、ありがとうございます!」

「おい」


そこで、マオから声がかかる。


「ん、なんですか? マオ」

「私はどうするんだ?」


どうする…?

癒しのことか?


「あんたは部屋でおねんねでもしてなさい!」


エミリーが仁王立ちで見下しながらそう言うと、マオがキッと睨む。

そして、その目線が何故か俺に向いた。


「シャルは私に何をして欲しい?」


なんだこれ!

何でもしてあげる的な何かだろうか?

俺も随分とモテモテになったな。


「えっと…2人に……癒して、もらいたい……です」


なんだか言ってるこっちが恥ずかしいが、これは直接的なことは出来ないにしろ、それに準ずることはできるのではないだろうか。


「そうか」


マオが微笑み、エミリーが不満そうな表情をする。




エミリーの自室(癒しの場)へと向かい、その備え付けの寝室に入る。


目の前に広がるのは豪華だが、エミリーの自室や客間と比べると大人しく感じる部屋。

大きなお嬢様ベッドに、隅にポツンと置かれた机がある。

その机上には以前あげた小物が飾られてある。


エミリーはそこの椅子を両手で持ち、ベッドと机の対角線上に運んだ。


「さ、座りなさい」


言われるままに座る。


何をされるのだろう。

もしかして、何か面白いことしないと椅子がロケットのように発射されて、天井に突き刺さってしまう的なやつだろうか。


「上着脱いで」


む、エッチなことだろうか。

でも、上着だけか…


上着を脱いでそれを膝上へと乗せる。

そして、エミリーの手が俺の肩に置かれる。


その小さめ手は優しく、俺を介抱するような手つきで肩を解していく。

マッサージだ。


すごく気持ちいい。

肉体的な疲労はないが、精神から来る疲労が癒されていく。

なんだか普段は暴力的なエミリーだが、こうして優しく触れられるだけでも疲れが取れていく感じがする。


「ど、どうかしら」

「すごく…気持ちいいです」

「そ、それは…よかったわ」


癒しの時間がしばらく続く。




「よし、こんなもんね」


はぁ…もう終わりか。

なんというか、エミリーに触れられるのはとても癖になる。

いつもは俺に世話を焼かせる子が、献身的に尽くしてくれていると考えると、言い知れぬ何かがあるのだ。


「次はベッドに寝転んで」

「…? はい」


ベッド?

ついにベッドインですか!

お次はそのお身体で直接癒してくれるのですか!


ベッドにうつ伏せで寝転がる。


いつもエミリーが寝ているベッドだ。


エミリーもベッドに上がってきた。

そして、俺の腰に親指を置いて、体重をかける。

マッサージだ。


まあ、知ってたけどね。

知ってたからこそ、うつ伏せになった訳で…

決して、大きくなった息子を隠すためにうつ伏せになった訳ではない。


「大丈夫? 痛くない?」

「ええ、気持ちいいですよ」

「……おい」


先程からじーっと見ているだけだったマオが声を発する。


「なによ…」

「私もやってみたい」

「…じゃあ、脚とか腕をやってちょうだい」


エミリーは少し考える素振りをしてから頼む。


「うむ、分かった」


マオも俺のマッサージをしようと、ベッドに上がってくる。


美少女2人に介抱されるのだ。

これほど幸せなことはないだろう。


マオの手が右ふくらはぎに置かれる。

若干ぎこちない手つきで揉まれる。

擦ったり、揉んだりしながらマッサージしてくれる。


「……シャル、大丈夫か?」

「ええ。上手ですよ、マオ」

「ん…よかった」




それからしばらくマッサージが続いたが、俺は眠りに落ちてしまった。




時刻は深夜を回り、廊下は暗夜で月明かりすらない。

俺はそこを1人で歩いていた。

マッサージの時に寝てしまったから、今は全く眠気がない。


廊下は常人なら壁を伝いながら歩く程暗いだろうが、俺は難なく歩いている。

視覚強化(リンフォース・アイ)のおかげだ。


冴えた目で廊下を歩く。

自室、調理場、マオの部屋、と順々に歩く。


1人で物音のしない場所を歩くのはちょっと楽しいな。

と、最近距離感を感じるフィルティアの部屋の前へとたどり着く。


最近はフィルティアの顔を見ていないな。

嫌われてしまっただろうか。

彼女は覚悟を決めたというのに、俺が飛竜のところへ行ったからだろうか。

それとも、何か進め方に問題があったのか。


そんなことを思って立ち尽くす。


壁にもたれかかっていると、小さな物音が聞こえる。

いや、これは声だろうか。


抑えつけるような声が断続的に聞こえる。


俺は「もしや?」と思う。


フィルティアの村での光景を思い出したのだ。

複数人の男に襲われている光景を。

あれは事情を知らない人から見れば、完全に輪姦だった。


冷や汗が流れる。


もし、そんな状況に彼女が今陥っているとしたら…

もし、彼女が助けを求めていたら…


足が扉の前に動く。


だが、扉を開けようとする手は動かない。

今、俺はフィルティアに嫌われているかもしれないと思っている。

本人と顔を合わせるだけでも気まずいのに、こんな深夜に部屋を訪ねられたら…


俺だったら、間違いなく気分を害するだろう。

場合によっては怒ったりするかもしれない。


だが…………だが……


俺の頭には彼女のことが浮かんでいる。

あの時の助けを求める顔。

そして、声。


あのまま彼女を放っておいたらどうなっていたか。

考えるまでもない。


俺は直接確認するでもなく、無視する訳でもない行動をする。



コンコン



ノックだ。


断続的な音が止む。



やがて足音がして、扉が開かれる。


「はい…なんです………か」


フィルティアは俺の顔を見て固まった。


とりあえず、襲われていた訳ではないと安心する。

だが、彼女の頬は紅潮して、息が妙に荒い。

髪も乱れている。


「夜分遅くに失礼します。物音がしたので襲われていないか確かめた次第です………では、大丈夫そうなので失礼しますね…」


要件と理由だけを告げて足早に去ろうとする。


「ま、待って」


だが、フィルティアがキュッと俺の服の裾を掴み、それを制する。


「ちょっと話……したい」

「え? は、はい……」


ちょっと怖い。

呼び止められるってことは、嫌われてる訳ではないんだろが、(わだかま)りがあった後だ。

フィルティアは顔を俯かせているから分からないが、多分耳にいい話ではないだろう。


裾を掴まれたまま部屋に入ると、ムワッとした空気が体を舐めた。


フィルティアの匂いが充満したこの部屋は大変下の方にクる。


部屋はフィルティアにしては散らかっているように見えた。

乱れた毛布に、開かれてはいるが手をつけられていない教材。

そして、机の真ん中には先日俺が上げたあの小物があった。


以前と同じようにフィルティアがベッドに座り、俺はその隣に座る。


本当は正座で臨みたかったが、裾を掴まれたままだと抵抗できなかった。


「あの………シャル?」

「は、はい……なんでしょう…」

「授業……出れなくて、ごめんね………」


あれ…?

先に謝られた。

「もう二度と授業に出ない」とか言われたらどうしようと考えていたが、杞憂に終わったようだ。


「いえ、先日のことは僕に非が有ります……謝らないでください」

「………えっと…そのことだけどね┈┈┈┈┈┈」




―フィルティア視点―


シャルと一夜を過ごせなかった。

飛竜の襲来があったからだ。


本来なら、一目散に逃げるはずの出来事。

だけど、逃げる気は起きなかった。

シャルが向かったからだと思う。


少しは力になろうと私も向かった。

マオもいた。

エミリーは見ていないけど、王宮の出入口で騎士さんたちが何やら『おやめ下さい!』とか言っていたから、そこにいたのだと思う。


私はマオの隣でただ見ていただけだった。

あの圧巻の光景に、私たちが関与できる隙はないのだと分かったから。


シャルの魔術は飛竜たちを蹂躙した。

最初の飛竜に使ったあの水の龍もいた。

炎の悪鬼みたいなのもいた。

以前は失敗していた固定魔術も成功していた。


シャルは本当にすごい。

この数の飛竜なら一国が滅ぼされていてもおかしくはないのに、それを一人で倒してしまった。


英雄並の力だ。

私はそんなすごい人に助けられて、体を求められた。

下腹部がむずむずする。


戦いが終わったあと、シャルが疲労で倒れて続きができなかった。

未だシャルに触れられた感覚がある。


その夜はその感覚でした。



―翌日―


まだ収まらない。

シャルに触れられた時のことが忘れられない。


あれからずっとしている。

気持ちが落ち着いてきて授業に出ようとしても、シャルの顔を思い出すとまたしたくなる。

出よう出ようと思っても、できなかった。

せめて自分の部屋で勉強しようと思っても続かなかった。


シャルと続きをしたい。


そう思うばかりで、行動できなかった。



―今日―


今日もまだ続けている。

まだ止まらない。


私がこんなに性欲が強いとは思わなかった。

ただ、一回だけ授業に出ようとして、シャルの顔を見てしまった。


かっこいい…

優しくて、強くて、余裕のある大人みたいで、理想の人だ。

五体もの飛竜を倒しちゃう強い人。


そんな人に私は求められた。


そう思うと、我慢できなくなった。


(……シャル……シャル)


その日の夜も、深夜を回ったというのにしていた。


シャルの名前を囁きながらしていたら、扉がノックされた。


ハッとする。


もしかして、声が廊下に漏れていたのだろうか。

囁いていたつもりだったけど、本当は大きかっただろうか…


下着とズボンを履いてから扉を開ける。


そこにはシャルがいた。

私と結婚の約束をした王子様がいた。


見られた…

こんなみっともない姿をシャルに。

している最中だったから、息も荒いし、顔だって熱い。

髪だって乱れている。


恥ずかしくて、俯いてしまう。


部屋に来た理由を聞くと、私が襲われていないか心配だったという。

やっぱり、声を聞かれていた…

だけど、こんな遅くにも私を心配してくれるなんて、シャルはやっぱり優しい。


「では、大丈夫そうなので失礼しますね」

「ま、待って」


足早に去ろうとする彼を止めて、散らかっている部屋へと誘う。



あの日の続きをしようと思う。




―シャル視点―


「………えっと、そのことだけどね……」


フィルティアが言葉に詰まる。

両手を太腿に挟んでモジモジしている。

格好は以前と同じパジャマ姿で、ボタンが2つ空いている。


そこからフィルティアのポッチが見えそうだ。


言葉を待つ。


「…………つ、続きが…………したい」


続き…

続きってあれか?

フィルティアと到せなかったときのあれか?


………………え?!


思考が崩れる。

そんな話は今後されないと思っていたのだ。

それをまさか……フィルティアの方から。


ゴクリと唾を飲む。


「…………するとなったら、一晩中しますよ?」

「うん………そっちの方が……いい」


そんなことを言われ、もう理性は吹っ飛んだ。

フィルティアをベッドに押し倒し、ボタンを外す。


上半身が顕になったフィルティアは、その小さな胸を恥ずかしそうに、両手を組むようにしながら隠していた。


その両手を退ける。


「……綺麗です…フィルティア」


目が閉じられ、キスをする。


入念に前戯をして、それから┈┈┈┈┈┈



その日、俺は念願の童貞卒業を果たした。




―朝―


おっはよう!

いやーっ、今日もいい朝だねっ!



カーテンバサッ!



俺も今日から、リア充の仲間入りサっ!

いやはや、まったくまったく、愛し合うってのはいいもんだね!

そうだろ、マイハニー。


俺はベッドに裸で寝てるフィルティアを見る。


昨日は細い体であんなに俺を抱きしめてくれて、とても具体的に言えば、ちょー可愛かった。

最初こそ慎重にしていたが、慣れてくればお互い獣さっ!


やはり、体温を感じるのはいいものだ。

前世では手頃竿挿入筒(オナホール)を使って、女の味とやらを知った気になっていたが、やっぱり近くで感じれてこそだね。

ハハ!


授業を休んでリスタートしたいが、生憎仕事は休めない。

お詫びに今夜も愛し合おうねっ!


「ん……んん……………っ!」


フィルティアが起きたようだ。


今の自分の格好を見てか、夜のことを思い出してか、シーツで体を隠す。


「おはよう、フィルティア」

「う、うん……おはよう、シャル」


うちの嫁は相変わらず可愛い。

まだ嫁にはなっていないが、いずれは。


「今日も綺麗ですよ」

「あ、ありがと……えへへ」


その乱れた髪を撫でながら笑う。


この乱れ具合を俺がやったと思うとすごく興奮する。

毎朝こんな光景を見られたら、どんなに幸せだろうか。


おはようのキッスをし、シャワーを浴び、教室へ向かう。





扉を開けると、いつも通り何かを話してるエミリーとマオがいた。

俺の後ろにはフィルティアが付き従うようにいる。


「おっはようございます!」

「…? おはよ」

「む…………ご機嫌だな? シャル」

「ええ、皆さんのおかげです。ありがとうございました」


そう。

『皆さん』だ。

ぐへへ。


マオが俺を胡乱げな目で見てくる。


どこか不機嫌そうだ。

何かあったのだろうか?


「シャル、フィルティア」


マオが真っ直ぐ俺たちを見て言ってくる。


どうしたんだ、改まって。

その姿を見ると、なぜだか不安になってくる。


「お前ら…交尾したな?」

「はあ?!」


俺たちより先にエミリーがリアクションする。


心臓がドクンッと跳ねるのを感じた。

潰されるのかと思うぐらいの勢いで。


「………な、なぜそう思うのでしょう……」

「匂いだ」


匂いだあ?

シャワーを浴びたというのに……獣族の嗅覚恐るべし。


ここは謝るべきだろうか?

俺だってマオとエミリーのことは好きだし、向こうからの好意も感じる…


だが……うーん?


「シャル!!」


ズカズカと歩みを寄せながら、憤怒の形相を向けて俺の元へ来る。


「……したの?!」


唇を噛み締めながら聞いてくる。


………なんだか、ものすごく罪悪感を感じる。

胸が締め付けられるように痛む。


「……しま……した…」


エミリーの肩が震える。


「……誓って…くれたのに」

「…?」


誓い……?

何を誓っただろうか…


「誓ってくれたのに!!」


その目には涙が溜まっていた。

大粒の涙が。


エミリーの右手が動く。


『来る!』

そう思って、覚悟を決める。

目を閉じて、拳を受け入れる構えを取る。



パチンッ!



それは拳の音ではなく、掌の音だった。


初めて叩かれた。


エミリーはもう部屋にはいなかった。




それ以降、マオとエミリーは授業に出なくなった。



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