遊び
「おぉーーーい! みんなでご飯食べに行こうぜぇ」
昼時にアレスからそんなことを言われる。
「お、いいのぉ。ゆくか」
「あちしも行くぅ」
いつもの4人でご飯に行くことになった。
ー
この城には本当に何でもある。
大地もあるし、森もあるし、山もあるし、氷雪地帯もあるし、何でもだ。
この城だけで国ひとつ分は余裕であるだろう。
今はその中の街とでも言うべき場所を歩いている。
風俗街だ。
「なあアレス」
「なあにぃ?」
そのふざけた返事でこいつが自覚を持っているのが分かる。
「なんで風俗なんだよ。こっちには子供がいるんだぞ?」
「ちょっ…あちしは子供じゃありませんー…大人なんですぅ」
カフがなんか言っているが、とりあえずは無視だ。
「ここを抜けたところに美味い店があるんだよ」
「なるほど」
というか、目線のやり場に困るな。
右を向いても左を向いても扇情的な格好をしているお姉さんたちばっかりだ。
女夢魔が主に歩いていて、とてもえちちな格好をしている。
女夢魔は皆、小さい角に小さい黒翼。
肉付きのいい体に魅惑を纏って歩いている。
……妙に視線を感じるな。
「ねぇそこのお兄さん」
と、女夢魔のお姉さんから声をかけられた。
その人も周りと変わらず、えちちな格好をしている。
「はい、なんでしょう」
敬語で喋ったのはかなり久しぶりな気がする。
「ちょっとうちの店寄ってかない?」
あら、こういう店だとこういうのもあるんだな。
だが、俺は頭の中の彼女で十分に間に合っている。
「お兄さん男前だから、サービスしたいなぁ…なんて」
大きな胸を俺の腕に押し付けてくる。
さすがは女夢魔と言ったところか。
男が喜びそうな事をしてくる。
「すまない、魅力的な誘いだけど断らせてもらうよ。僕には愛しの彼女がいるのでね」
「……じゃあ…うちの店じゃなくていいから……個人的に私の家に…ね?」
随分と積極的だな。
というか、ここの連中は彼女持ちのやつにも声をかけるのか?
「おい、妾の男に手を出すでない」
人の男に手を出しているやつがなんか言ってる。
腕は俺のもう片方の腕に自らの大きい胸を押し付けてくる。
「あらルーシャ様、ご機嫌麗しゅう」
「麗しゅうではない。早く離れろ」
「良いではないですか…男漁りは女夢魔の性分。それもこんな男前を見せられたら………はっ! もしや愛しの彼女とは…」
「…その通りじゃ」
「違う」
というか、早く離して欲しい。
アレスは目が無いくせに視線が怖いし、子供だって指の隙間から見てるんだ。
本当に勘弁して欲しい。
「…ルーシャ様の殿方となれば……仕方ありません…」
最後にキュッと胸を押し当て、ゆっくりと離れるお姉さん。
去っていくお姉さんを見ても、未だ俺の腕から離れない腕。
……俺は早く彼女たちの胸に飛び込みたいな。
「よし……ゆくぞっ、お主っ」
こいつも腹立たしい顔をしている。
きっと、恋人と勘違いされたのが嬉しいのだろう。
ここの連中は面倒くさいやつらばっかりだ。
「さすがのおモテモテですね、シャル殿ぉ」
アレスが恨めしそうに言ってくる。
「お前だっているだろ?」
「何がですかぁ? 彼女がですかぁ? 嫌味ですかぁあ?」
どんだけ不貞腐れてるんだよ。
表情が無いのに分かりやすいやつだ。
「だってそうだろ? カフがいるんだから」
「はああ?!」
俺はアレスの隣にいる女の子に目をやる。
この子はいつ見てもアレスの隣にいるし、仲良いし、ピッタリの性格だと思う。
だから、そう言ってみたのだが…
「えぇっ? アレスったらあちしのこと好きだったのぉ?」
「違いますぅぅ、好きじゃありましぇえん。なに勘違いしてるんですかぁ? かぁあ! 自意識過剰なやつと話すのきちぃい!」
そうなのか、そうじゃないのか分からないな。
まあ、どっちでもいいか。
「……お主、先にゆくかの?」
未だに痴話喧嘩する2人を見る。
「……そうだな」
俺たちは先に予定している店へと向かった。




