朝
目が覚める。
あまり気持ちの良い目覚めではない。
いつとの事だが、重いものが体に乗っかっている感覚と、顔に変な感触がある。
「…………」
腕が無許可で俺の唇を奪っていたのだ。
「…………」
おい。
今、目合っただろ。
両肩を押し返し、無理やり唇を離す。
だが、腕は一筋縄ではなかった。
朝ということで硬くなっている俺の息子に、自らのものを押し付けている。
全く嬉しくない人物からの夜這い。
これが彼女だったら、どれだけ良かったことか。
「おい、やめろ」
「……お主の硬くなっておるぞ…?」
「生理現象だ。1年に1度のお願い無くしたいのか?」
「………分かった」
俺から離れると同時に、ベッドからも降りる。
昨夜はあまり寝れなかった。
結局ひとりでも処理できなかったし、キスが長引いた。
悪くはなかったが、良いものでもなかった。
「主、飯食べにゆくぞ」
「…? ひとりで食べるが」
「だめじゃ、妻と一緒に食べるのが夫の務めじゃ」
こいつ…
昨晩、俺が甘やかしてやったからって調子に乗ってるな。
こいつが妻なんて冗談は笑えない。
俺の妻は彼女たちだけだ。
「誰が敵と飯食うかよ」
「…………」
腕が少し怒った顔をする。
もう口説きの練習は終わった。
しばらくは相手をする理由がない。
そんな俺の心情を知らずに、腕が俺にまたも被さってきた。
「なら…妾を食べてゆくか?」
「俺はゲテモノは食わん」
「…!? おい、さすがの妾も怒るときはあるぞ?」
顔を寄せ、しっかりと俺を睨んでくる。
今まで見てきた中で1番怒ってる気がする。
「別にお前がゲテモノって言ってるわけじゃない。彼女を知った後だと全員がそう見えるだけだ」
「一緒ではないか! 訂正しろ!」
そう言われてもなぁ…
「っ……妾だって………頑張っているのじゃ…」
「………」
やべ。
これ泣いちゃうやつだ。
さすがに言い過ぎたか…
「ごめんって…そんなこと思ったことないぞ?」
「うっさい…ぼけ…」
本当に面倒くさいやつだ。
「一緒にご飯食べよう、な? 俺はお前と食べたい」
「………まだ足りん」
ああもう、面倒くさい。
なんで俺はこんなやつの機嫌なんて取ってんだ。
「じゃあこれからはずっと一緒に食べるか? 食べさせ合ったりしよう」
「……………許す」
「ん、ありがとう」
未だムスッとした態度ではあるが、一応は許してくれた。
腰は俺に乗せたまま、寄せていた顔を遠ざける。
「なあ、顔こっちに寄せてみ」
「……?」
せっかく引かれた顔を寄せさせ、近くなった頬に優しく手を置く。
そして、キスをした。
「……………」
「さっきは悪く言ってごめんな。俺は朝はお前が食べたいよ」
「…………誑しめ」
なっ!
せっかくサービスしてやったのに悪口を言われた。
もうこんなやつ口説いてやらん。
「だがそうか………うむ……分かった…」
「ほっぺ緩んでるぞ」
「うるさい…」
頬に置いた俺の手に自らの手を重ねる腕。
「可愛いな」
「っ………へっ…」
はぁ…
疲れ┈┈┈┈┈┈
「おーい、シャル、飯食べに行か………」
あ。
アレスに見られた。
体を密着させ、顔を寄せ合う男女の姿を。
「か……かかかかかかか! カフさあぉぁぁぁん!! ルーシャとシャルがえんろい事してるよおぉぉおぉおぉお!!」
「「 ちょっ! 」」
この日は腕、アレス、カフと一緒に食べた。




