熟れ
今日は比較的いい目覚めだ。
昨夜はマオを想いながらした。
我ながら、いい想像力だと思う。
やはり、彼女を想いながらするのはいいな。
今日も訓練に励むとするか。
ー
「おはよう、お主」
「ん」
ストレッチをしながら返事をする。
腕はいつも通りだ。
「のぉ、お主?」
「ん?」
「体も鍛えようと思うんじゃが、どうだ?」
「んー」
体をか…
「そっちの方が早く帰れるのか?」
「んー……大して変わらんと思う。じゃが剣の耐性も上げとかんといかんぞ?」
確かにな。
今の俺ではこいつの爪に触られただけで傷がついてしまう。
例え魔術で勝っていても、そっちで負けたら意味が無い。
運動は嫌いだが、やるしかないか。
「そうだな。やろう」
「うむ」
ー
休憩だ。
コップを作り、水を注ぎ、飲む。
「よぉよぉ……よぉ…」
と、隣から女の子の声がする。
カフだ。
「よおシャル……きょ…今日も楽しく話そう……ぜい………ぃぇー」
……?
「えと……どうした?」
「え……?」
何故かこちらが不思議な顔をされた。
魔大陸ではそれが普通の挨拶なのだろうか。
「ぴぎゃあぁぁぁぁあ!!」
入口の方から笑い声が聞こえる。
アレスだ。
「おまっ! 本気でそれやったん?! ぴぎゃあぁぁぁぁあ!」
「アレスぅ! またあちしのこと騙したね?! もーう怒った!」
カフが怒り、アレスに襲いかかる。
だが、でかい図体の割にアレスは素早い。
カフの突進を嘲笑うように避けている。
「いや騙したってっ…ぷっ……本気で信じるやつおるん?」
「信じてないですぅー、アレスを試しただけですぅー」
今日も魔王城は賑やかだ。
早く帰りたい。
「今日も賑やかじゃのぉ…」
「そうだな」
最初に思っていたよりは悪くない所なのかもしれない。
早く帰りたい。
「どうじゃ? 最初に思ってたよりは悪くない所じゃろ?」
「思ってたよりはな」
彼女たちと話してる方が断然楽しい。
早くエミリーの手を握りたいし、マオも撫でたい。
フィルの面倒だって見たい。
……早く帰りたい。
「いっその事、妾とここで暮らさんか?」
「あぁ? 欲求不満でおかしなこと言ってんじゃないのか?」
こいつと同棲とか勘弁して欲しい。
こんなところに長くいたら精神がもたない。
「じゃ、始めるか」
「ん」
終わりの見えない訓練は未だ続く。




