賑やかな城 ー最強の護りー
何やってんだ、俺は。
隣で眠る腕を見てそう思う。
昨夜の俺はどうかしていた。
疲労と久しぶりの癒しで混乱させられた。
こいつはやはり計算高いやつだ。
隙を見せてはいけない。
そして、今のこいつは隙だらけだ。
敵の前で目を閉じ、意識を失っている。
首が露になり、絶好のチャンスだ。
俺はそこに指を近づけ、硬く、そして鋭く作った小さい氷柱を発射する。
キシャァアァァアアン!
高音が広い空間に響き、砕けた氷が顔にかかる。
ほとんどの氷はかなり細かく砕け、小さな霧が先程の着弾点にある。
多量の魔力を込めたはずだが、傷ひとつ出来ていない。
こいつの体はどうなっているんだ。
「んん……?」
今ので起きたようだ。
「今……攻撃したかの?」
「してない。てかお前の体頑丈すぎないか?」
「お主と変わらんと思うがの」
お世辞にしては随分と出来が悪いな。
「変わるだろ」
「………」
無言で俺に指を向けてくる腕。
そして鋭く、硬そうな氷柱を生成する。
「ちょっ!」
キシャァアァァアアン!
先程の再現が起こる。
着弾点に痛みは無く、少しの冷たさを感じる程度だ。
「のう?」
いや、分からん。
「どゆこと?」
「お主は魔術が異常に強いからの。それに対する防御も同じというわけじゃ」
「へー」
そういうことらしい。
「それじゃ…妾はもっかい寝る…」
「ん」
「…………」
敵が敵の前で眠る。
少し赤い顔に、禍々しい黒の腕。
普段は3つに分かれている髪がひとつに纏まって見える。
腕を伸ばせば届く距離に大きな胸がある。
薄い布に隠されたそれは俺を誘っているよう……
…………早くも性欲が溜まってきたみたいだ。
「ん……? 今妾の胸見たか?」
「見てない。欲求不満なんじゃないのか?」
「…別に……妾は構わんぞ?」
「早く寝ろ」
「ん…」
最近はひとりでも処理していないからな。
彼女たちへの想いが足りていない。
せめて彼女たちの下着とかがあれば助かったんだが…
「キャーーーーーーー!!」
と、入口の方から作られた高い声が耳を貫いた。
何かと思ってそこを見てみると、馬の体をもつ化け物がいた。
「ふたっ、ふたふたふた二人がもうそんな関係だったなんて……! ちょっとカフちゃぁぁん! こっち来たら面白いもん見れるぞーー!」
どうやら、同じマットに寝ていたことで勘違いされているらしい。
こいつとそういう関係だと思われるのは本当に勘弁して欲しい。
「おいっ! そんなんじゃない!」
「えぇえ? そういう関係じゃなかったらそういう事しないんじゃないんですくわぁ?」
かなりムカつく口調で挑発される。
やがて、小さい女の子も歩いてくる。
「朝からそんな大きいこ………ふぇあ?!」
カフも大きな声で後ろに下がり、驚いた顔をする。
「ふたふたふた二人ってそんな関係だったの?!」
「そうなのぉ、まだ出会った数日だぜ? かぁーっ! オレびっくりしちゃってさぁあ」
うるさい2人に腹が立つが、反応を見せないもうひとりのやつにも同じように腹が立つ。
とっくに起きているはずだが、否定する声が聞こえない。
そいつの方を見る。
「妾たちはお似合いらしいのぉ」
「うっせ」
腕は手で自分の口元を隠し、俺の方をチラチラと見てくる。
ああ…
早く彼女たちに会いたい……




