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奉仕転生〜死んでも奉仕する〜  作者: 白アンド
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本気の訓練 ー絶対に取り返すー


「よし、存分に鍛えてやるぞ」


今宵はこいつと訓練をする。

場所はかなり広く、訓練にはもってこいの場所だ。

ここで俺は鍛えられる。


俺の目的は知っているだろうに、何故こんな事をするのか分からない。


「どうやって鍛える?」

「妾と戦うだけじゃ」

「殺してもいいのか?」

「できるのならな」


挑発的に笑うこいつは生き生きしてる。

その顔を歪めてやりたい。


固定魔術ともうひとつは見せずに、本気でやる。


「じゃ、やるかの」



幹部との戦いが始まった。





負けた。

完膚なきまでに負けた。


「お主、やっぱり異常じゃな」

「何が…」

「強すぎるんじゃ」


何が強すぎるだ。


俺は地面に寝そべって、こいつは汗ひとつかかずに立っている。

嫌味にしか聞こえない。


「俺はいつお前を殺せる…」

「さあの、魔力量の成長はそれぞれじゃからな」


俺はこいつを倒せる気がしない。


「お主、龍王とは話したか?」

「ああ…」

「なら、そやつにも言われただろう? 異常だとか何とか」


確かに、テラムンド家が何とかと言っていた気がする。

こいつは物知りだな。


「そうだな」

「お主はその歳にしては大きすぎる魔力量を持っとるからの。どこでそんなん身につけたんじゃ?」


どこでと言われても、分からない。

ただ、寝る前には魔力をほとんど使い切り、どんな風に練習すれば魔力量が増えるか試行錯誤し続けていただけだ。

途中テトメロさんたちの協力もあって、そこからは蒼級召喚獣同士で戦わせたりした。

つまりは時間をかけただけだ。


「生まれた時からやってただけだ」

「なるほどの」


その簡素な相槌に腹が立つ。


俺は帰らなきゃいけないのに、勝てる想像がつかない。

1年も彼女たちに会えないかもしれないのに、俺は何をやっている。


3人の笑顔を見れないのは耐えられない。

もう一度、彼女たちを抱きしめたい。


それなのに……


「なあ……腕」

「……なんじゃ?」

「俺はお前を殺す」

「そう遠くない未来、そうなるじゃろうな」


長寿のやつの遠くない未来ってのは信用ならない。

100年単位だったら俺は既に死んでる。


だが、その前に…


「俺はお前に勝てる気がしない」

「いや、勝てるぞ」


何を根拠に言ってるんだ。

慰めなんて要らない。


「なんで分かる…」

「妾は鼻が利くんじゃ」

「はっ…そりゃあいいな…」


マオの方が良いだろうな…


「のお、お主」

「なんだ」

「…マッサージでも…してやろうか?」


なんだ?

拷問でもかける気かよ。


「俺に触んなっつったろ」

「分かった」


答えは分かっているだろうに、懲りないやつだ。

本当に癇に障る。


「お主、部屋まで戻れるか?」

「戻れるわけないだろ。メトライアに運ばせろ」


俺の専属メイドの名を出すと、(ルーシャ)は微妙な顔をした。


「………隣で寝てよいか?」


これだ。

どんなに突き放しても擦り寄ってくる。


俺がどんな人間か分かっていないくせに。


「離れて寝ろ」

「分かった」


(ルーシャ)はそう言って、この部屋から出ていく。


『離れる』の基準の違いから困惑するが、あいつが視界に入らないのは好都合だ。


だが、直ぐに戻ってきた。

マットレスを持って。


「ん」


俺の横にマットレスを置く。


「動けないんだが…」


(ルーシャ)は俺がそう言うのを分かっていたかのように動き始める。


分厚い毛布を自分の腕に巻き付け、俺の背中にその手を回す。

そして軽々と俺を持ち運び、マットレスにゆっくり下ろした。


硬い床に寝ていたからか、その柔らかさに簡単に身を委ねてしまう。

痛かった頬が沈んでいき、包まれるような癒しを感じる。


分厚い毛布が疲れた体に掛けられ、それだけで眠気が襲ってくる。


…………心地いいと思ったのは久しぶりだな。



(ルーシャ)が硬い床に寝そべり、俺に背中を向ける。

高さの合っていない自分の太い腕を枕にし、二の腕に頭を乗せるか前腕に乗せるかを決めあぐねている。


「おやすみ、主」

「…………」


ああ…


本当にこいつは…


「おい」

「ん?」


腕がこちらに体を向け、顔に疑問符を浮かべている。


「………ここで寝ろよ…」

「じゃが…」

「訓練に支障が出たらどうする………ほら…」


ポンポンと隣を促す。


手だけしか動かないため、俺のすぐ横を促しているように見えているだろう。


(ルーシャ)が起き上がり、マットレスに近寄る。

黒曜石の腕を静かに乗せ、ゆっくりと滑らせるように体を寝かせる。


「妾が見込んだ通り、優しい男じゃな」

「うるせ、計算通りだろ」


多分、そうだろう。

そうじゃなかったら、マットレスを1人分だけ用意するのはおかしい。


「妾はそんな計算高い女ではない…」

「どうだか」


計算高いやつはみんなそう言う気がする。

不本意そうに眉を歪めているが、これも計算の内だろう。


「好きな男と寝るのはいいの」

「俺は好きな女と寝たいよ」

「なら明日も頑張るのだな……それじゃあ、おやすみ」

「ん」




その日は久しぶりの心地よさに体を預けた。



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