一息つきたい ーなんでお前は……ー
自室へと戻り、ベッドに体を下ろす。
色々あったが、彼女たちの方が気がかりだ。
彼女たちは突然いなくなった俺をどう思うだろうか。
エミリーは反乱とか起こすのだろうか。
いや、ユラーグが動いているのだから期待はできない。
マオはもしかしたら軍を送ってくれるかもしれないが、なるべく戦争じみたことはさせたくない。
ならば、やはり俺が動くべきだろう。
まだここにどのくらい居続けるのかも分からない。
なるべく早く帰るが、1年もここに居たら彼女たちはどうなるだろう。
新しい男とか見つけてしまうんじゃないだろうか…
別にそれでも構わない。
彼女たちに寂しい思いをさせる方が嫌だ。
だが、直ぐに忘れられる程度の関係を築いたつもりは無い。
最初は彼女たちも寂しくなってしまうだろう。
エミリーはああ見えて打たれ弱い時があるし、フィルは人一倍寂しがり屋だ。
俺よりも性欲の高いマオが長い間我慢できるとは思えない。
なら彼女たちの為にも、早く新しい男を作って欲しいと思う。
俺は彼女たち以外の女を作るつもりは無いが。
だと言うのに……
「ほんと疲れるんですけど…」
「妾のことか?」
「当たり前だろ」
白々しい返答をするルーシャ。
拒絶したばっかりだと言うのに、まだ俺に付き纏ってくる。
というか、その手を遠ざけて欲しいのだが。
「なんでここにいんだよ」
「なんじゃ? 好きな男と一緒にいたいってだけではだめなのか?」
訳が分からない。
「お前、彼女いる男にもそうやって言い寄るのか?」
俺がそう言うと、ルーシャは分かりやすく眉根を寄せた。
「妾だってこんな事は嫌なんじゃ………だがな……」
ルーシャが上目遣いで俺を見つめてくる。
嫌だ。
本当に嫌だ。
「主がタイプ過ぎるのじゃ…」
「………」
どこがタイプなのか分からないが、顔だったら魔術で追い払ってやる。
俺は目頭を押さえ、わざとらしくため息をつく。
「さっきも言ったけど俺のタイプは俺の彼女なんだ。それ以外のやつは好きじゃない」
「それでも妾は好きじゃぞ?」
あーもう…
こんなに否定してるのに、なんで心変わりしないんだよ。
そんなに好かれた覚えはないし、好かれたいとも思わない。
「まだ会って数日だぞ? そんな軽いやつに心を許すと思うか?」
「おい、今妾を尻軽だと言ったか? だとしたら心外じゃぞ」
「それ以外のなんだよ。見ず知らずの男に好意を持ってる方がおかしい」
「おかしくない」
何がこいつをそこまで動かしてるんだ。
こんな聞き方はしたくなかったが、面倒くさくなってきた。
「じゃあ俺のどこにそんな惚れたんだよ…」
これを知れば、逆に嫌われることも容易になる。
それでこの障害物を取り払ってやる。
「…………」
ルーシャの手が俺の手の方に動く。
だが、直ぐに引っ込めた。
「…お主、ここに来た時すごい抵抗したじゃろ?」
「ああ」
「四日間も……お主がずっとそうしてるのを見てな…」
俺はそんなに取り乱したところを彼女たちに見せたくない。
「妾に……その想いを向けてくれたらと思うとな…」
……つまり、こいつは俺の彼女たちに対する想いの大きさに惚れたってことか。
なら、こいつに嫌われることは不可能だな。
俺の彼女たちに対する想いは小さくなることを知らない。
この世で最も難しいことだ。
「誰がお前に向けるか」
「頑張る」
「頑張んな」
「やじゃ」
こいつも頑固なやつだ。
幹部一人一人の実力は知らないが、訓練の時は痛めつけてやろう。
そっから1人ずつだ。
こいつを殺す時、どんな顔をして死ぬのかが楽しみだ。




