目覚め ー四ー
『0』
目が覚める。
何時ものようにスッキリとした目覚めではなく、未だ頭がぼんやりするのを感じる。
体に僅かばかりの痛みがあり、以前あった状況を思い出す。
しかし、彼女たちの姿はない。
目に映るのは知らない天井。
薄黒く霞んだもので、俺の記憶のどこにも当てはまらない。
「起きたか」
隣から男の声がする。
聞き覚えのある声だ。
「……ユラーグ陛下…?」
俺が寝ているベッドの脇にエミリーの父が椅子に座っていた。
何故、俺の部屋……いや、ここがどこかも分からない。
いつもと違う部屋で、いつもと違う人物。
とてつもなく嫌な予感がする。
「説明を…願えますか?」
体が何故か動かないため、頭だけでユラーグを見る。
「シャル・テラムンド、其方は今、魔王城にいる」
魔王城?
何故そんなところに。
「説明してください」
「我が国と魔王国は協定を結んでいる。優秀な人材を寄越すだけのものだがな」
「それに僕が選ばれたと?」
「そうだ」
「そうでしたか…………」
だったら何故、体を動けなくしているのか。
何故、魔術が使えないのか。
何故、彼女たちの姿が見えないのか。
「エミリーたちは何処だ?」
俺の頭の中に焦燥と憤怒が湧き出る。
もし、俺が今考えていることだとしたら、自分が何をするか分からない。
「王都だ。今頃はお前を探しているだろうな」
最悪だ。
「俺は何秒ここにいたらいい」
「最短で一年だ」
ああ…
そうか…
一年も彼女たちに会えないのか…
よし。
この国、滅ぼすか。




