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奉仕転生〜死んでも奉仕する〜  作者: 白アンド
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久しぶりの母国 ーまだ帰るのはよそう…ー


「お世話になりました」

「うむ! 門は何時でも開けておるからな!」


今日はレノアーノの帰る日だ。

龍王自ら出迎えをしてくれる。


今回の謁見はテラムンド家の俺とエルロード王家のエミリーとの顔合わせだけのつもりだったが、随分と気に入られた感触がある。


「シャル様、私に追いつけるよう精進くださいませ」


なっ!


いつもの笑顔で平然と言ってのけるテトメロさん。


その言葉、覚えておけよ。

絶対、後悔させてやる。


「テトメロさんも、宝石作り頑張ってくださいねっ!」

「なっ!」


へへーっ、ばーかばーか。


「ルーシャ! 待ってるからね?」

「はい、また魔術を教えてくださいね」

「うんっ!」


ユノナキさんもいい笑顔を向けてくれる。

短い間だったが、俺も楽しかった。


「ちょっとシャル様?! 私が先生なのですが!」


テトメロさんがうるさい。


「おっと! うっかり忘れてました!」

「嘘は無駄です」


おっと!

うっかり、うっかり。


「マオセロット、また熱い夜の話を聞かせてくれよな」

「うむ、たくさん持ってくる」

「ひゃーっ! 期待してるよ」


ぜラルドさんとマオも仲良くなったみたいだ。


……ん?

熱い夜の話?


ってマオ!


「リオン殿、フィルティア殿、またいつでもお越しくださいませ」


おい!

そこの赤黒野郎!

なにうちの妹と彼女に口聞いてんだコラ!


「はいっ、また来ますっ!」

「ありがとうございます」


あー、いい笑顔だ。

うんうん。

2人が笑顔なら何でもいいや。


「龍王! 次のシャルはもっと強いんだからね!」

「うむ、期待して待っておるぞ!」


エミリーも勝手なことを言っている。


まあ、俺としても龍王との再戦は望むところだ。

何時までも負けっぱなしは嫌だからな。

特に、マオの前ではもう二度と負けられない。


ところで、ベノスタシアさんだけこの場にいないが、あの人は今日もお仕事らしい。

あの人以外は全員いるのだが、人見知りなのだろうか。


そういえば、初めて話した時『俺の仕事じゃないがな』とか言って仕事してたな…

もしかして、押し付けられて…


ま、いっか。




皆それぞれ別れの挨拶を済ませ、転移の巻物を使い、母国に帰還した。




ーベノスタシア視点ー


「…………」


仕事を続ける。

いつもの部屋で、いつもの量を。


コンコン


「ベノさーん」


テトメロだ。

後ろ手に扉を閉めて、少しご機嫌なように見える。

先程、レノアーノからの来客を出迎えていたから、きっとそれだろう。


「またそんなに押し付けられたんですか?」


呆れた口調で俺の机を見る。

そこには大量の紙が積まれている。


内容は連絡、代替案、国民の声など多岐にわたる。


「……いつもの事だ」

「それでもです。ちゃんと口に出さないといけませんよ?」


口には出しているのだが、一向に治らない。


ユノナキとぜラルド。

あいつらはいつか痛み目に合わせる。


「まあ……善処しよう」

「はぁ……手伝いますよ。そこ、空けてください」


俺の隣を空ける。

テトメロが椅子を作り、そこに座る。


俺は平気なのに、世話好きなやつだ。


仕事を続ける。


「レノアーノの方たちは帰ったのか?」

「はい。べノさんもお見送りくらいはしてよかったんじゃないですか?」


テトメロはそう言うが、俺は人と話すのが苦手だ。

いつも無愛想になって嫌われてしまう。


「…俺がいても迷惑だろ」

「またそうやって……少なくとも、シャル様は貴方のことを気にしていたみたいですが」


あの子供が?


……物好きなやつだ。


「そうか…」

「あ! 今うれしいって思ったでしょ」

「……思ってない」

「私に嘘は通じませんよ?」


…騒がしいやつだ。


と、ひとつの資料に目が止まる。


「最近、飛竜の被害が少なくなったな」

「おや? ほんとですね」


珍しいこともあるものだ。

あいつらも忙しいのだろうか。


「半身さんも色々あるのでしょうか」

「龍王様の模倣者などに興味は無い」


少しの怒気が篭った口調になってしまう。


龍王様の半身。

あいつもいつか痛み目に合わせる。


それに、あそこには…


「でも、被害縮小の原因は考えるべきでしょう」

「……そうだな」


少し感情的になってしまった。


こんな俺に龍王様は重役を任せてくれたのだ。

仕事は四六時中しているが、もっと精進しなければな。


「そういえばテトメロ、あの子供に魔術を教えたそうだが、どうだった?」

「器用な方でしたよ。ロウネさんよりは荒いですが、流石テラムンドですね」

「そうか」


テラムンド家には俺たちも世話になっている。

魔術も奉仕も一流で、レノアーノもいい血族を持ったものだ。




いつものように仕事を続ける。





ーシャル視点ー


久しぶりの王都だ。


だが、眼前には王宮ではなく城壁が立ち塞がっている。

王宮の門前に着くようにイメージしたのだが、上手くいかないな。


馬車に乗り込み、王宮を目指す。


「シャル」

「なんですか?」


マオの呼びかけに答える。


さっきぜラルドさんと熱い夜の話が何とかと言っていたから、そのお誘いだろうか。


「あの上着は返した方がいいか?」

「上着?」


なんのことだろう。

俺が知らない間に何か盗まれたか?


「龍王と戦ったときのだ」


あー。

龍王と戦う時に演出として放ったやつか。

それがマオに被さったんだよな。


「あげますよ」

「ん、もらう」


全く、俺の服なんて何に使うんだろう。

ナニに…


ぐへへ



彼女3人は王宮へと戻り、俺はリオンと実家に帰っていた。

今は客間でふかふかのソファに座っている。


「お兄ちゃんっ!」


ご機嫌そうな声音で呼んでくる。

『お兄ちゃん』という響きは最高だな。


「どうした? リオン」


そう言うと、何故かリオンが頬を緩ませた。


「えへへぇ、別にぃ?」


何だこの生き物。

めちゃんこ可愛い。


「なんだぁ?」


俺は座るリオンの頭をわしゃわしゃする。


うちの妹は相変わらず可愛い。

何にそんなニヤけているのか分からないが、めちゃくちゃ可愛い。


「いやぁ?お兄ちゃんも私がすきなんだなぁって」

「んー? 当たり前だろ?」


あー、すっごい幸せ。

ずっとここに居たいな。


もーなんか、あれだな。

うん。

あれだ。


「でもお兄ちゃん、フィルティアさんが構ってくれなくて寂しそうだったよ?」

「え?」


な、なんだって?


確かに、龍王国ではあんまり構えなかった気がする。

エミリーとマオ、特にマオばかりに気を遣ってしまった気がする。

またやってしまった気がする。


やばい。

今すぐフィルティアの元へ向かいたい。


「リオン」

「えぇ…まだ離れたくない」


そうだよなぁ…

俺だって離れたくない。


でもなぁ…


まあ、リオンだって父さんと母さんがいない時は寂しいだろうし、俺もほとんど家にいないしな。

その間、リオンは1人なわけで…


ううむ…


「じゃ、今日はお泊まりだな」

「え…いいの?」

「リオンも日頃から頑張ってるからな」

「っ…! お兄ちゃんっ!」


そう言って、いきなりソファから立ち上がる。


リオンの頭が離れてしまい、少し残念だ。


「抱きしめてっ!」


両手を広げて、俺の抱擁を待つ構えをとる。


俺も懐かれたものだ。

初対面の時からこんな感じだから、リオンはかなり人懐っこいのだろう。



リオンを抱きしめる。


「えへへぇ……だいすきだよ、お兄ちゃん」

「俺もだよ、リオン」


可愛ええなぁ…


幸せだなぁ…




その日はリオンと添い寝して寝た。



ー翌日ー


愛しい我が妹を残し、王宮へと旅立った。



授業も終わり、今はフィルティアの部屋にお邪魔させてもらっている。


「フィルティア、龍王国ではあまり話せず…申し訳ないです」

「いいんだよ…こうして二人きりで話せてるんだし…」


かわええ…


「僕もフィルティアと話せて嬉しいです」

「うん……それでね…」


俺の口説きをさらっと流された。

少しショックだが、何かの間違いかもしれない。

きっとそうだろう。


「『フィルティア』じゃなくて……『フィル』って…呼んで…?」

「……?」


どうしてまた?


フィルティアに出会ってからもうじき1年経つ。

何かしら理由があるのだと思うが、何かあったのだろうか。


「理由を聞いても?」


そう聞くと、ちょっとだけ目つきが鋭くなった。


「……恥ずかしい」


恥ずかしい?


そういった理由なら、尚更聞きたくなってしまう。


恥ずかしがるフィルティアは可愛くて、きっとその理由を言う時はもっと恥ずかしがってくれるのだろう。


だから、意地悪してやりたくなってもしょうがない。


「理由を言ってくれなきゃ呼べませんね」

「……いじわる」


ニヤニヤが止まらない。


この時点でかなり可愛いのだが、もっと見てみたい。

時に、この子は俺の加虐心をわざと掻き立てているのかと思わせる。

それほどまで、この子のモジモジした姿と上目遣いは破壊力がある。


「別に、僕はフィルティアって名前は好きなんですがね」

「………わかった」


フィルティアの観念した声。


裾を引っ張って、何かに耐えるようにしている彼女も素敵だ。

尖った耳は赤く、顔を俯かせてしまっている。


彼女が俺に向き直り、俺も心の準備をする。


「……『フィル』って名前っ…」


うん。


「『シャル』に……似てる…から…っ」


………………。


えっと……つまり…


フィルはめちゃくちゃ可愛いってことだな。



フィルを抱きしめる。


「フィル……凄く嬉しいです」

「うん……よかった…」


俺もかなり心臓がドクドクしている。


フィルの細い体が胸に収まり、心が癒されていくのが分かる。

長い耳が顎に当たり、温かさを感じれるほど熱い。

彼女も恥ずかしがり屋だ。


今、俺は幸せを感じている。




心も落ち着き、フィルの体温から離れた。


体は冷えたが、心はかなり温かい。

まさか、フィルが俺の名前と似てるからそれで呼んで欲しいなんて…


どれだけ俺を惚れさす気なんだ…


きっと、あだ名でよく呼ぶ人がいたからその影響だろう。

ユノナキさんにはお礼をしなきゃな。


「フィルー」

「なにー?」

「呼んでみただけです」

「えへへぇ」


かぁーっ!


何このできたてカップルみたいなやりとり!


たのしっ!


「シャルー」

「なんですか?」

「呼んでみただけ」

「「 えへへぇ 」」


ぐはぁっ!!


ぬわぁっ!


ていやっ!


「そういえばシャル、エミリーと迷宮どうだった?」


お、フィルからそういった事を聞いてくるのは珍しい。

いや、俺がそういった話題を避けていたのかもしれない。


「楽しかったですよ。ユノナキさんとも手合わせしました」

「ユノナキさんと? すごいね」


ユノナキさんといえば、長く話した相手の口を軽くするみたいな能力だったな。

めちゃくちゃ微妙な能力だ。


どういう時に使うのだろうか。

相手に秘密を話してもらいたい時はテトメロさんで十分な気がするが。


「そういえばフィル、裸の付き合いってしたことありますか?」

「え?」


言葉足らずだったな。

それとも、フィルがえっちな思考をしているからだろうか。


「エミリーとマオとです」

「あ…そっちね」


俺は3人がキャッキャウフフしながら話しているのを見たことがない。

よく話してはいるのだが、いまいち笑い合っている印象が薄い。


「そういうのはしたことないね」

「しないんですか?」

「んー……してほしい?」

「はい」


裸の付き合いをすれば、年相応の会話が聞けるかもしれないしな。

というか、彼女たちが裸で色々するってだけでも収穫は十分だ。


ネタには困らないな。


「わかった、言ってみるね」

「ありがとうございます」


これで彼女たちが今よりも仲良くなることを願おう。

もしかしたら、1つのベッドに3人の美少女が寝ることになるかもしれないからな。


「シャルは来るの…?」

「いいんですか?」


いや、よくないだろ。

3人の距離を縮めたいのに俺が行ったら意味が無いだろう。


「いいと思うよ?」


やめろ!

惑わされるな!


あれは悪魔の甘言だ。

俺の夢のひとつに女夢魔(サキュバス)に搾られるというのがあるが、それは置いておくんだ。


動け!

俺の口!


「遠慮…しとき、ます…」


はぁ…


「う、うん…わかった…」


なんて辛い選択なんだ。


「でも、エミリーとマオも嫌がらないと思うよ?」


フィルがまたも惑わしてくる。


別に、彼女たちのことを気遣っている訳では無い。

入りたいけど、入ってはいけないのだ。


でもなぁ…

当日に乱入でもしてやろうか。


…やめとこ。





俺はここで問題を犯してしまっていた。


気づいた時には既に事が始まっているのだと、俺は知らされることになる。

愛しい彼女たちの手によって。



ぜラルド

二つ眼の二龍の内の一人で、左目に眼帯をしている女性。

話す時は常に笑顔で、周りに活気を与えている。

仕事はいつも相方に任せているが、本人曰く『あたしは悪いことはしていない』だそうだ。

そんな彼女の能力は『視る』。

常にその片方の視界は『人々の縁』が見えている。


好きなことー何でもいいから勝負

マオセロットと話したことーシャルとの営みと、好きな〜


べノスタシア

二つ眼の二龍の一人で、右目に眼帯をしている男性。

話す時は無愛想だが、本人は仲良くしたいと思っている。

仕事はいつも二人分多くやらされているが、本人曰く『あの二人は絶対に痛い目に合わせる』だそうだ。

そんな彼の能力も『視る』。

常にその片方の視界は『治安』が見えている。


好きなことー誰かと話すこと

嫌いなこと…?ー何かを押し付けられて、それを悪いと思われないこと

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