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奉仕転生〜死んでも奉仕する〜  作者: 白アンド
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帰り道での緊急事態 ー……帰ろうー


「……やるね、二人とも」


いつの間にか仮面を外し、言葉を発するユノナキさん。

その手には先程着けていた仮面が握られている。


「ありがとうございます」


俺も立ち上がり、礼を言う。

龍王の臣下に褒められたんだ。

素直に嬉しい。


「エミエミも! すごい強かったよ!」

「え……ええ」


エミリーの返事がぎこちない。


仮面を外した後の変化に戸惑っているのかもしれない。

人格が変わったみたいに喋り出すからな。


さ、あとは帰るだけだ。

城に着いたらエミリーにマッサージでもしてやろう。




喋る扉の前に立つ。


『二人ともなかなかやるな』

「ありがとうございます」

「………」


扉にも褒められた。


今度は何の質問もされずに扉が開かれた。





「いやー、ルーシャはすごい器用だね! 特殊魔術もよくできてた!」


暫く帰り道を歩き、あの時の話をする。

魔物は全く出てこず、行きと比べてかなり楽だ。


「というか、ユノナキさんの使った魔術、僕知らないんですが」


あの黒い化け物を出す魔術。

あんなの魔教本に書いていなかったし、他の人が使っているところも見た事がない。


「あれ? あれは闇属性の蒼級魔術だよ」


やはり闇属性のやつだった。

俺の心を(くすぐ)る闇属性。


「教えてもらえませんか?」

「いいよ」


あっさり承諾してくれた。

ジェフの時と違って魔術の全貌は見ているし、覚えるのもそんなに時間はかからないだろう。


それに、数少ない蒼級魔術だ。

今からでもワクワクが止まらない。


と、こういう時に1番ワクワクしていそうな彼女の声が聞こえない事に気づく。


「エミリー? 大丈夫ですか?」


彼女に問いかける。


エミリーは顔を俯かせ、元気が無いように見える。

どうしたのだろう。


「……大丈夫よ…」


やはり元気が無い。


服の裾を引っ張っているため、戦闘の時に何処か打ったのだろうか?


俺は治癒魔術をかけようと、エミリーの腰に手を当てる。


「っ……!」


と、ビクっとエミリーの曲がっていた背中が立つ。


「すみません、治癒魔術をかけようとしたのですが…」


余計なお世話をしたことに謝罪する。

ボディタッチを拒否されるのは心にくるな。


「っ………今はっ…敏感だから…」


ん?

何故、敏感なのだろうか?


ううむ…

女の子の日ってやつだろうか?


「エミエミ、トイレ行きたいの?」

「っ!」


ユノナキの問いかけに顔をバッと上げるエミリー。


「シャルの前でっ……やめてっ…!」


どうやらトイレらしい。

俺の前だと恥ずかしかったのか。

エミリーのなら(むし)ろ喜ぶのだが。


「エミリー、我慢は体に毒ですよ。個室トイレなら作れますから」

「っ……いいわよ、我慢する…」


ううむ…

我慢すると言っているが、この調子では城に着ける気がしない。

魔物に襲われないとはいえ、ここまで来るのに2、3時間はかかっている。

ずっと薄暗い中にいるため、体内時計がおかしくなっているが、多分そのくらいだ。


どうしたものか…


俺は壁に向かって手を向ける。


道を曲がり、その先にあるものに指をさす。


「エミリー、あそこに個室トイレですよ!」


嬉々とした表情で言う。

洞窟の中に偶然個室トイレがある状況を演出したのだ。

我ながら完璧な作戦だ。


俺が作ったそれは、電話ボックス2個分ほどの大きさで、扉にはきちんと『個室トイレ』と書いてある。


材質は土だが、綺麗に磨かれ、きちんと塗装もされているため、洞窟には全く似合わない。

だが、これならエミリーも使ってくれるだろう。


「シャル…」

「はい」

「我慢するわ…」


我慢するらしい。

まさか、ここまで頑固になるとは。


そんなに俺の前でするのが恥ずかしいのだろうか?

俺としては早く出してもらって、元気なエミリーを見たいのだが。




先を進む。

ここまで歩いている間、会話はなかった。

3人の歩く音が妙に響く。

その間、俺はずっとエミリーがどうしたらトイレに行くかを考えていた。


膀胱(ぼうこう)を押し続けてみるか?

嫌われたら嫌だな。


俺も一緒にトイレに行くのはどうだろう?

複数人で行くのなら恥ずかしくないのではないだろうか。


よし。


「エミリー」

「……?」

「僕もトイレに行きたくなってきました」

「……ええ」

「2人分の個室なら入れますか?」

「……シャルの前でするのはいやよ…」


ううむ…

困った。


「なら、僕も我慢しますね」

「………」


「「「 ………… 」」」


……何か暇になってきたな。

俺は無言でエミリーに顔を向け、変なことを言う準備をする。


「……?」


エミリーが不思議そうな顔を俺に向ける。

そして…


「愛してるっ? 愛してるっ? 愛してるっ、うぇいうぇい」

「ぷふっ! シャル! 笑わせないで!」


エミリーに怒られた。


今のそんなに面白かったか?

何かを我慢している時はそういった物に敏感になるからしょうがないか。


「二人って仲良いよね」


ユノナキさんが微笑ましいものを見るような顔で言ってくる。


「エミリーと僕は浅からぬ関係ですからね」

「いいなぁ…」


ユノナキのしみじみとした寸感。


「臣下さんたちはそういうの無いんですか?」

「んー? んー……あんまりないね」


そうなのか。


「臣下さんたちってどうやって選ばれるんですか?」


少し気になっていた事を問いかける。

ユノナキさんを見ていると、仕事に就くというイメージがなかったからな。

案外、強いからって理由だけかもしれない。


「どうやって…? 産まれた時からだよ」

「……?」


産まれた時からってどういうことだろうか。

(あらかじ)めその人の人生は決まっているとかか?


「私たちはね、龍王様の魔力で産まれたんだ」

「へー、それは凄いですね」


龍王の魔力で…………?


つまり、魔術を使って命を生み出したのか?

俺より強いやつをあんなに沢山?


……へー、やるじゃん?


「…………」


エミリーを見ると、やっぱり辛そうだ。

少し前屈みになり、服の裾を力強く掴んでいる。

心配だ…





城に帰れた。

エミリーの尿意は本当に危なかった。

限界を迎えていたのが歩き方で分かったし、ずっと下の方を抑えて耐えていた。

額に汗が滲み、目は何故か決意に満ちたように力強かった。


それでも間に合ったのは、テトメロさんが洞窟の入口で待っていてくれたからだ。

テトメロさんを見つけたら直ぐに転移魔術を使って帰還した。


その後、俺は一旦自室に戻り、今はエミリーの部屋でマッサージをしている。

彼女に宛てがわれた部屋は俺たちのよりも豪華で、レノアーノにあるエミリーの自室に似ている。

そこのベッドにお互い座り、彼女に奉仕する。


外は日が落ち、月明かりがエミリーを照らしている。


「エミリーの剣術、とても綺麗でしたよ」

「ありがと…」


今は手のマッサージをしている。


エミリーの手は綺麗で、剣を握っているとは思えないほど柔らかく、ずっと触っていたい。

やっぱり、俺はエミリーのこの手が好きだ。


「また冒険にでも出かけましょうね」

「ええ」


エミリーと冒険。

今度はフィルティアとマオも連れて行くのもいいかもしれない。

マオとエミリーは倒した魔物の数とかで競いそうだな。

それを眺める俺とフィルティア。


いいな。

平和だな。


「はい、左手出してください」


右手をやり終わり、左手を促す。

それも柔らかく、揉んでいるこっちも気持ちいい。


「シャル…?」

「はい、なんでしょう」


揉みながら返事をする。


「私のこと……すき…?」


……?

何を今更。


俺は動かしていた手を止め、エミリーの首に手を回す。

そして、キスをした。


「大好きですよ」

「……私も…」


頬を赤く染める彼女は綺麗だ。

彼女の碧眼の瞳に見つめられると、吸い込まれてしまいそうになる。


マッサージを続ける。


「シャル…?」

「はい、なんですか」


揉みながら返事をする。


「私のこと…顔と性格……どっちで好きになった…?」


む、これまた難しい質問だ。

以前の俺は『話せる女の子』が恋愛対象だったからな。

顔で見たか、性格で見たかは、どちらかと言うと顔だろう。

だが、性格と答えないと駄目な気がする。


「性格ですよ」

「……そう…?」

「はい、エミリーの頑張り屋のところが好きですよ」

「……うん」


相変わらず、いい反応をしてくれる。

言っているこっちが嬉しくなってしまう。


だから、もっと喜ばせてあげたい。


「でも、顔で選んだって言われてもしょうがないと思います」

「…? どうして?」


予想通りの返し。


動かしていた手をエミリーの手に重ねる。

そして…


「エミリーは世界で1番可愛いですからね」

「っっ……!」


エミリーの手に力が篭もる。

顔を俯かせ、照れているのが目に見えて分かる。

やはり、俺の答えは間違っていなかったようだ。


「勘違いっ……しちゃう……」


その声は少し震えていて、何かを我慢しているように聞こえた。


「何がですか?」

「私がっ……一番って……っ」

「よかった、勘違いじゃないですよ」

「っっ!」


……あれ?

俺、今なんて言った?


「シャル…っ」


……ま、いっか……?


「なんですか」


このままベッドインしちゃいそうな勢いだ。

時間帯もいい感じだし、今日も愛し合おうじゃないか。


と、エミリーがゆっくり抱きついてきた。

俺も抱きしめ返す。


「結婚して…」


んー……………ん?

えっと……あれ?

思ってたのと違う!


このままベッドインかと思ったら、ゴールインの話をされた。

正直、俺が求婚されるのは初めての経験だし、かなり嬉しい。


でも、今の俺に約束はできない。

でも、この空気を壊したくない自分がいる。

でも、ついこの間マオに『1番愛してる』って言ったのもある。

あれは一夜だけの話だったが、口に出した以上、責任は発生する。


なら……


なら……!


「はい、喜んで」


あーあ。

俺の口が言うことを聞いてくれない。

「言ったら責任生じちゃうよ」って言ったばっかりなのに。


「今からでも…?」


もうどうにでもなれだ。


「はは、エミリーは気が早いですね」

「………やっぱり……もっと大人になってから…」


……ん?

あれ?

振られた?


いや、違うか。

大人になってからか。

この世界の成人は確か15歳からだったな。

その時になったらってことか。


「分かりました。でも、今度からは気軽に『忠誠の誓い』はできませんね」


将来的に結婚するとなれば、そういったのは特別なものにするべきだろう。

普段からやっていては当日の時に変な感じになってしまうかもしれないからな。


「だめ…」


駄目らしい。


「これからもして…」

「ん、分かりました」


お姫様からのご要望だ。

断れるはずがない。


「シャル…」


エミリーが俺の名前を呼び、腕の中でモゾモゾしている。


俺はバレないように『筋力強化リンフォース・ストレングス』を使って、エミリーを抱き運ぶ。


頭を枕に置いて、顔を見る。


蕩けた顔だ。

目は潤み、頬を火照らせ、息は荒い。


エミリーのえっちな姿だ。

俺もかなり興奮する。


エミリーが俺の首に手を回してくる。


「シャル……すき…」

「僕もです、エミリー」




そうして、エミリーと一夜を過ごした。



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