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奉仕転生〜死んでも奉仕する〜  作者: 白アンド
35/150

日常 ーでは、よろしくお願いしますねー

やったあああああああああああああ!!!


目覚め1番にそう思った。


マオが俺のことを好きでいてくれた。

あれは夢じゃなかった。

夢みたいに幸せだ。


体を密着させて寝ている彼女が証拠だ。

温かい。

そして、柔らかい。


今は何時頃だろうか。

お互いに愛しすぎたため、体内時計がズレている。

日が昇っているため、朝か昼くらいだろう。


さて、今日はどうするか。

マオと延長戦を決め込んでもいいが、龍王城に滞在している以上、何かしらしなければいけないだろう。

挨拶、御礼、会話…


どれも面倒くさい。

マオと愛し合っている方が遥かに価値が高いな。

よし、そうしよう。

龍王のことなど知るか。


そうと決まれば善は急げだ。

俺はマオに抱きついて、2度寝を決め込もうと…


コンコンコン


ああ?

んーだテメェ、ぶっ殺┈┈┈┈


「お兄様ー、お昼食の準備ができましたよー」

「はーいっ」


さて、マオを起こすかな。

半身だけ起き上がり、マオの肩に手を置く。


「マオー、ご飯ができ……」

「すぅー………ふぅー……」


…………。


あー、駄目だ。

これ毒りんご食べてるね。

これだけ声をかけても起きないんだから間違いない。

眠れるお姫様を起こすのは王子の役目。


いざ尋常に┈┈┈┈


「っ……?!」


って、俺の方からキスをする筈が、マオの方からされてしまった。

マオは俺の後頭部を掴んで、押し付けるようにキスをしてくる。

柔らかい唇から逃げる術は無い。


「っ………マオっ……起きてたんですか…?」

「……シャルの発情してる匂いがした」


なんじゃそれ。

マオなりの冗談だろうか。


「それなら…マオからもしてますよ」

「っ……」


もう一度キスをする。

優しく、ソフトなキスだ。


マオの物足りなそうな顔。

やっばい。

マジで可愛い。


あれ?

何でこんなに可愛いんだ?

俺、こんな人に愛されてるのか?

どんだけ幸せなやつだよ。

理性が吹っ飛びそうだ。


「シャル…」


名前呼んでくれた!

嬉しい!


「なんですか?」

「……続きしたい」


ぐはあっ!

マオがご飯より俺を食べることを優先してくれた!

やばい!

超嬉しい!


しっかし、マオは本当に…


「マオは性魔獣ですね」

「なにっ?!」


あ、やべ。

怒った。


「私が性魔獣だと…? お前の方が性欲強いだろ……!」

「なにおぅ? あれだけ搾り取っておいて、何を今更……!」


お互いに顔を見合わせながら言い合う。

マオとこういう事をするのは初めてだ。

何だか頬が緩んでしまう。


「っ……シャルの…元気なままだぞ……?」


おいおい、それは卑怯だろ。

マオの裸見たら、どんな時でもなっちゃうんだよ。


「……マオだって…息荒いですよ」

「っ……シャルが触るからだ…」


マジで嬉しい。

マオが俺に触られて興奮してる。

その事に俺も興奮する。


「じゃあ…どっちが性欲強いか……試しますか…?」

「……望むところだ」


マオが俺の首に手を回す。

そして…


「望まないでください! 龍王陛下がお呼びですよっ!」


ノックと共にリオンの声が飛んでくる。


「………勝負はまた今度にしましょう…」

「……うむ」


マオにキスをして、ベッドから起き上がる。

そして扉に…


おっと、まだ服を着ていなかった。

いけない、いけない。



その後、服をきちんと着て、昼食に向かった。




龍王たちとお昼ご飯だ。

でっかい長テーブルを彼女たちと妹、そして龍王とその使い魔たちで囲っている。


エミリーはユノナキさんと話し、フィルティアとリオンは仲良く喋り、マオはぜラルド(眼帯をした赤髪の女性)と話しかけられている。


「シャル・テラムンドよ! あの魔石は何なんだ?」


龍王が俺の隣に座って聞いてくる。

この人は常に豪商な態度で、笑みを浮かべている。


今回の従者はテトメロさんとプラネルセン(赤黒い肌の男性)さんだ。


「あれは僕の特殊魔術で作ったんですよ」

「ほう、あの奇怪なやつか。あの魔石は実に素晴らしい能力を有しておる! 誇るがよい!」


そう言いながら、デカい手で俺の背中をバンバンしてくる。


世界の龍王に感心されるのはやはり嬉しい。

そういうのは俺の自信に繋がる。


「陛下も! 練習すれば! できるやも! 知れませんっ!」


俺も龍王の太い腕をバンバン叩く。


……全然ビクともしない。


「ガハハハハ! なかなか言うではないか! シャル・テラムンド……さて、次の質問だ」

「その前に、フルネームで言うのやめませんか? シャルでいいですよ」


そう言うと、龍王に目を丸くされた。


……何か変なこと言っただろうか。

そういう目をされると怖いのだが。


「よかろう! 一戦交えた仲だ、余のこともファルダランと呼ぶがよい!」

「陛下の方でいいですよ」

「なんと! シャル! 貴様も肝が据わっておるな!」


また肩をバンバンされる。


「それで、先の質問だが…」


叩いていた手を顎に当てる龍王。


「シャルよ、其方はどうやって魔術を使っているのだ?」

「……はい?」


何言ってんだこいつ。

自分もよく知っているだろうに。


「どういうことですか?」

「手から離れていても魔術を行使していたであろう?」


……?

あ、はい。


「それがどうかしましたか?」

「なんと!」


え?

何だろう。

何でこんなに驚かれるんだ。


龍王は愉快そうに笑って、自分の太腿をバチンと叩く。


「シャルよ、魔術というものは自らの手の及ぶ範囲にしか発現せぬものだ。それを其方は遠方からの魔術行使を常とする……もう一度問おう…其方はどのように魔術を使っておるのだ?」


どのようにって…

手から離れるやつがそんなに珍しいのか?

エミリーとかヒョイってやってたが…


そうだ、エミリーだ。

彼女が俺に見せてくれたんだよな。


エミリーを見る。


……多分今の会話聞いてたな。

頬が緩んで、ユノナキの話を聞きながらも、俺の方をチラチラ見てくる。


絶対に期待してる。

言って欲しそうな顔してる。


「お嬢様が教えてくれました」

「なんと!」


うんうん。

主が瞠目されるのは臣下としても鼻が高いな。

正確には、エミリーは俺に見せただけだが、それはよしとしよう。


「エミリー嬢、それは本当か?!」

「ええ、シャルに魔術を教えたのは私よ」


ん?

『魔術を教えた』?

ちょっと誇張している気がするが、まあいいだろう。


「ほう、この寸時の間に余が知らぬことをやってのける者が二橋(ふたはし)も現れるとは! 何という僥倖だ!」

「お嬢様は僕の自慢ですからね」

「ほう、エミリー・エルロードよ、良き臣下を持ったな!」

「当然よ!」


えっへんと胸を張るエミリー。

俺も良き主を持った。


「それでシャルよ」

「なんでしょう」


再度、俺に質問してくる気らしい。

龍王も俺のことが大好きだな。


「軍門に降らぬのなら、ここで魔術の修練に励むのはどだ?」


お、願ってもないことだ。

俺も龍王に歯が立たなくて結構落ち込んだからな。

今よりも上達するに越したことはない。

だが…


「エミリーの誕生日会があるので無理ですね」

「ほう」


そう。

もうすぐエミリーの誕生日だ。

龍王国からレノアーノまで3週間。

今からならギリギリ間に合う。

いや、ギリギリ間に合わない。


「それなら転移を使うがよい。テトメロ」

「畏まりました」


傍に控えていたテトメロさんに促す。


「いいんですか?」

「うむ。まあ、その代わりと言ってはなんだが…」


コツコツと顎の鱗を叩く龍王。


おいおい。

そっちから勝手に押し付けて借りを作るってか?

何て卑劣極まりないんだ。

それが龍王のやり方┈┈┈┈


「エミリー嬢の生誕日を、余からも祝わせてはくれぬか?」


………………。


へー、やるじゃん?

分かってんじゃん、龍王。


(うち)のお姫様は強欲ですよ?」

「ははっ! なあに、余は歓迎には手を抜かぬ主義故、なんでも申してみるがよい!」


なんでも?

今、なんでもって言った?


「そうね、強い敵を倒したいわね!」


こら!

エミリー!

龍王のなんでもをそんな簡単に使って!


「ほう! なら丁度よいものがあるぞ」


勝手に話が進んでいく。

俺たちだけの愛の巣が欲しかったのに…

まあ、エミリーのしたい事が俺のしたい事だ。

これが1番いい選択だろう。


「飛竜の討伐ですか?」

「はっは! 飛竜などちっぽけに見えるものを用意しよう」


あれ?

冗談で言ったつもりなのだが…

飛竜よりやばい奴ってことか?

それって…


「迷宮がいいわ」

「うむ。用意しよう」


またもエミリーの要望に応えてくれる。


要求するところが違う気がする。

エミリーは飛竜のことはノーコメントなのだろうか。


「これならシャルも訓練に励めるであろう」


龍王も粋なことをしてくれる。

だが…


「どうして、そこまでご親切にして下さるのですか?」

「む?」


さすがに何か裏があると思ってしまう。

俺なんかに借りを作って何をするのかは知らないが、一応俺も大貴族の子息だ。

何かに利用しようってんなら拒絶しておかなければならない。


「龍王国もテラムンドには世話になっておるからな」


…………?


「あ、そうなんですか…」


ポケっとした顔で答える。


ロウネとジェフにはまた聞いておきたいことが出来た。

あの2人は少々隠し事が過ぎる。

1回リオンを人質にとって説得するのもいいな。


「龍王様」

「何だ?」


テトメロさんが龍王に近寄って、話しかける。


「シャル様に魔術を教えるのは私が適任かと」

「うむ。素よりそのつもりだ」

「ありがとうございます」


どうやら、俺の先生はテトメロさんがやってくれるらしい。

この人は教えるのが優しそうだから俺も嬉しい。


「お願いします、テトメロさん」

「はい、こちらこそ」


俺に笑いかけてくれる。

これでスパルタだとしても俺にとってはご褒美になるな。


「それにしてもテトメロよ、其方も負けず嫌いであるな!」


……?


「いえ…私はそんなつもりは…」

「はっ! 其方は虚言は見抜けても、使う方はからっきしであるな!」


……?


「シャルよ、テトメロは其方の作った魔石に嫉心を抱いておるのだ」


なんと!

テトメロさんが嫉妬!

やった!


「………龍王様、後でお話がございます」

「無視する!」

「しないでください」


龍王もいい臣下を持ったな。





昼食後。

早くもテトメロさんと訓練だ。

場所は龍王と戦った修練場。


「では、一緒に魔術を撃ちましょう」


変わった教え方だ。


俺の授業では見せてから撃たせる。

一緒にやると、何か違うのだろうか?

だとしたら参考になるな。


水の御業(ウォーターワークス)にしましょう」

「はい」


いきなり蒼級だ。

その魔術は既に十分使えるのだが、これも参考にしよう。


「では…」


何も無い方向に体を向ける。

そして、同じ方向に掌を向ける。


「「 『水の御業(ウォーターワークス)』!! 」」


同時に水で形成された龍の手が勢いよく放たれる。


案外分かるものだ。

テトメロさんの方が精錬されている。


「ふぅ……流石ですね、テトメロさ…」


テトメロさんの顔を見る。


彼女は顔は「私の方がすごい!」と書かれている。

凄く嬉しそうなドヤ顔だ。


龍王の言っていた『負けず嫌い』というのは本当だったらしい。

ハッキリ言ってムカつく。

この顔を今すぐ悔し顔に変えてやりたくなる。

剥いて、泣かせてやりたい。


だが、そんなことが出来たらこんな顔をされていない。

ここは素直に負けを認めよう。


「テトメロさんって大きくて綺麗な魔石……作れますか?」

「なっ…!」


ガハハハハ!


口が滑ったああぁ!


「いや、ただの興味本位です」

「…………私に虚言は通じませんよ?」


あ、やべ。


「…………………魔術って魔力量以外に上達方法ってあるんですか?」


華麗に話を逸らす。


たしか、テトメロさんは万言の審判者とか言っていたな。

この人に嘘は通用しないらしい。


ちっ


「……シャル様は普段どういった訓練を?」


テトメロさんも追求せずに話を進めてくれる。


「ただ使ったり、そこから色々調節したりしてますね」

「でしたら、実践を積むのが良いでしょう。使用するのみでは上達に難儀するでしょうから」


実践か。

今まで俺はほとんどしてこなかったな。

レノアーノでは敵と呼べる人がいないし、蒼級なんて向けたら殺人になりかねない。

というか、なる。


「では、これからは実践していくんですか?」

「ええ、そうなります」


テトメロさんと模擬戦ってことか。


「では…」


テトメロさんが俺に向き直り、笑みを浮かべる。



「よろしくお願いしますね」



こうして、俺の特訓が始まった。



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