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奉仕転生〜死んでも奉仕する〜  作者: 白アンド
148/150

嘘つき

---シャル視点---



陛下と別れ、ようやくフィルのところへ行ける。


彼女のことは随分と待たせてしまった。

マオときて、エミリーときて、よく分からんオッサンときて、ようやくだ。


俺もフィルのことは待ち望んでいたが、彼女はよりその意識は強いだろう。

これ以上待たせてはいけない。

陛下を見送ったあと、フィルの部屋へ振り返る。


ここからフィルの部屋は近い。

もう邪魔するものは何も┈┈┈┈┈┈


「あ」

「…………」


目の前の曲がり角で壁にもたれ掛かる可憐な少女。

その表情はあまり機嫌が良さそうには見えず、ムスッとしている。


俺の愛しの彼女。

フィルさんだ。


「「…………」」


まずい。

嫌なところを見られた。


自分という歳若い女よりも、中年のオッサンにかまけているところを見られた。


これは相当まずいことをしたんじゃ……。


……いや!

待て。

まだ早とちりする時間じゃない。

こういう時は逆の立場だったらどうするかを考えるんだ。

俺がフィルの立場だったら……。


「…………」


キレてる。


「えっと…………ごめん」

「…………」


返事はない。

斜め下を見ながらムスッとしているだけだ。


俺は腕を軽く広げ、ゆっくりとフィルに歩み寄る。


「…………」


抵抗する気配がないのを確認して、ギュッと抱きしめた。


「ほんとごめん……。後回しにしすぎたね……」

「……うん」


俺としたことが、最近は失敗続きだ……。

可愛い彼女の悲しい顔は見たくない。


「……一日で満足なんて、できない……よね……?」


俺の腰に手を回し、ボソッとそう言った。


多分、エミリーと同じく“一日で終わる”と決めていたのだろう。

だが、それも今崩れた。


「うん、そうだね」


俺も一日で満足なんてできない。

エミリーは反対するだろうが、なるべく長くいたい。


「……どのくらい一緒にいられる……?」

「ずっと。満足するまでいよう」

「…………ぅん」


キュッと抱きしめられた。

細めの彼女に抱きしめられるのはなんだか心地がいい。


「部屋行こっか」

「うん……」

「「……」」


ハグしながらでは歩きづらい。

しかも、お互いに足を動かしてすらいない。


「抱っこしよっか」

「うん……」


腕の力を緩めて、その場に屈んだ。

フィルが首に腕をかけると、立ち上がる。


軽い。

だが、しっかりと筋肉はついている。

抱っこしやすい体だ。


「こうして抱っこするの、久しぶりだね」

「うん……」


フィルの長い耳が顔に当たるこの感覚。

けっこう癖になる。

フィルも俺の耳と自分の耳を重ね、感触を楽しんでいるようだ。


「行こっか」


これからはフィルの部屋に向かう。

四年ぶりのフィルとの時間。



一緒に楽しい思い出になるよう頑張ろう。



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