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奉仕転生〜死んでも奉仕する〜  作者: 白アンド
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リオンとお出かけ! ー妹は最高なんだー

早朝、目が覚めると隣にはかわいい妹がいた。

一瞬、「もしや?」と思ったが、そんなわけはない。


思ったより早くに起きてしまった。

ベッドから出て伸びをして、顔を洗うためにテラスへと向かう。

身を乗り出して、手から水を出す。

残っていた眠気が引いていくのを感じる。


今日はリオンとデートだ。

不躾があってはいけない。

朝風呂にでも入ろう。



我が家の風呂は相変わらず大きい。

それは浴場程度で、温かみのある材質が使われていて居心地がいい。

1人で入るにはあまりにも寂しいが。


と、脱衣所には1人分の服が置いてあった。

多分ジェフだ。


家の使用人は全員メイドで、ジェフ以外の男を見かけるのは来客だけだ。

思えば、ジェフと裸の付き合いをするのは初めてだな。


浴場の扉を開けると、予想通りジェフがいた。


「お、やあシャル」

「おはようございます。父様」

「うん。おはよう」


湯に浸かりながら片手をあげるジェフに挨拶をする。


体を洗ってから、ジェフの斜めの位置に座る。


「ふうぅ」

「いい湯だろう?」

「とても」


ジェフを見る。

そこには鍛えられた男の体があった。

ロウネとしていた時にはよく見えなかったが、逞しい体をお持ちのようだ。


「……怒らないのかい?」

「…ん?」

「王宮に放り出したことだよ」


ああ。

そんなのもあったな。


「シャルに会う時は一発殴られるくらいの覚悟をしたんだけどね」

「…まあ、初日はぶっ殺してやろうかと思いましたが、今となっては感謝しかないですよ」


あの時は結構本気で殺ってやろうかと思っていたな…

『お前が教えた魔術で死ぬんだ。皮肉なものだな……ジェフ』とか、殺る直前のセリフまで考えていたからな。


「はは………お嬢様とは上手くやっているのかい?」

「ええ、とても。父様こそ、母様とは上手くやっているんですか?」

「見ての通りだよ」


それは良かった。

と、俺はひとつ、どうしても聞かなければならない事を思い出す。


「ところで、僕にはまだ妹か弟いるんですか?」

「…んー………………」


ジェフはそう言って顎に手を当てる。

珍しく考え込んでいるな。

俺としては早く教えてもらいたいものだが…


「……それを言ったら意味が無いだろう?」

「意味なんてあるんですか?」


10年も兄妹を合わせない大層な理由があるなら教えて欲しいもんだ。


「仲良くさせないためだよ」


…………。


「ま、僕は仲良くして欲しいんだけどね」


そう言って肩を竦めた。


…危ない危ない。

ジェフを敵と看做(みな)すところだった。


しかし、仲良くさせないためか…

当主争い的なやつだろうか。

俺は当主になろうがどっちでもいいから関係ないな。


「リオンとは仲良くできたかい?」

「ええ、今日は一緒にお出かけです」


俺は自慢げに言う。


「お、それはいいね」

「そしてリオンの手料理も食べさせてもらう予定です」

「なにぃ?!」


へへ。

どうやら、ジェフよりも俺の方が懐かれているみたいだな。

悪いな。

こちとらギャルゲーは腐るほどやってんだ。

言わば、恋愛マスターシャルお兄ちゃんなんだよ。


「どうやら、リオンは僕の方に懐いているみたいですね」


再度、自慢げに言う。

ジェフは「ぐぬぬ」とでも言いたそうな顔をしている。


「ま…まあ? 僕もリオンと一緒にお風呂入ったからなあ?」

「なにぃ?!」


リオンと楽園(ふろ)に?!

てんめぇ…

抜け目のない野郎だぜ。


「ま…まあ? 父様は忙しい身ですので? リオンにそう何度も構えないんじゃないですかね?」

「ぐっ!」


今度は口に出して悔しがるジェフに勝利を確信した。

ふんっ

貴様は社会という檻に囚われし家畜なのだ!

俺という元40歳童貞男(ニート)に適うはずがないのだよ!


「ま、リオンのことは僕に任せて仕事に行ってきてくださいよ。リオンのことは僕に任せてね! ハハッ!」


俺は勝利の悦に浸る。

俺の声が反響して、直に小さくなっていく。


「と、ところでウォルテカの娘さんも生徒だと聞いたけど?」

「ああ、マオですね」


ウォルテカという名前は久しぶりに聞いたな。

元気にしているだろうか。

いつかはあの人のことをお義父さんと呼ばせてもらう日が来るかもしれないからな。


「責任重大だぞ?」


ん?

責任重大?


「何がですか?」

「ん? 知らないのかい?」


なんだ…

また俺の知らないところで大きな歯車が動いているのか?


「獣族は人類にとっての大きな戦力で、その頂点にいるウォルテカの娘さんだ。もし気を悪くしたら人類の戦力が大きく下がっちゃうからね」


そんなことを冗談めかして言ってくる。


「……責任重大ですねぇ」

「そうだねぇ」


そう言って、2人で天井を見上げる。

また俺はなんかやっちゃったみたいだ。



この後もジェフと話した。

竜滅ぼしのこととか、ロウネの自慢話とか。




すっかり逆上せた体で歩く。

ロウネの話をされている時に思い出したが、ロウネは赫級まで使えるのだった。


初級、中級、上級、蒼級、赫級、菫級、白級がある内、俺が使えるのは蒼級までだ。


俺の母親は凄い。

ロウネ以外に赫級魔術が使える人物を、俺は王宮ですら見たことがない。

何としても教えてもらわねばならない。


まあ、帰ってから教えてもらえばいいだろう。

今はリオンが優先だ。


俺は寝室へと向かい、リオンを起こしに行く。


コンコン


念の為ノックをして、返事がないのを確認すると、扉を開ける。


ベッドの上には眠りに落ちた白雪姫がいた。

ロウネ似の整った顔立ちに、可愛い寝息。

その美しさに思わずホッと息を下ろしてしまう。


血が繋がっていなかったら襲ってしまっただろう。


「リオーン、朝だぞー」


肩を揺らしながら起こす。


「んー………だめだよ…お兄ちゃん……」


そんなことを言いながらゴソゴソと動いて、寝巻きをはだけさせている。

寝言と寝相の高等テクニックをこの歳で使うとは…末恐ろしい。

少しからかってやろう。


「……さっき急に仕事が入ってな………俺、お出かけに行けなくなっちゃったんだ」

「えっ?!」

「はい、おはよう。さ、出かけるぞ」


リオンは呆気に取られた顔で俺を見ている。

ふっ、甘いな、リオン。

俺を騙すにはリボンで縛られたフィルティアか、上目遣いのエミリー、息をするマオじゃなきゃ駄目だ。


「もうお兄ちゃんっ! 騙すなんてひどいよ!」

「騙される方がわるいんですー」


うちの妹は朝から面白いことをしてくれる。

一緒に住めれたら毎日が楽しそうだ。




リオンの準備が整い、いよいよお出かけだ。


「いってきます! お父様、お母様!」

「ああ、いってらっしゃい」

「気をつけるのよ?」

「はい!」


普通に見送りをされて門を出る。

この世界の治安は悪い。

一応、遠巻きに護衛をつけているらしいし、俺がいれば大抵は問題ない。

テラムンド家の子供は公表されていないし、格好もメイドと執事だ。

人攫いも多分来ない。

うん。

多分大丈夫だ。


歩いてすぐに大通りへと出る。

露店が建ち並び、人で賑わいを見せている。


「わぁ、人がいっぱいだね」


リオンは目をキラキラさせて辺りを見回している。


「ここに来るの初めてか?」

「うーん……ちゃんと外に出るのが初めてだね」


あらま。

リオンは箱入り娘なのかもしれないな。

それとも、貴族の子供はそれが普通なのか。

そういえば、俺も外に出る機会は無かった気がするな。

俺はずっと引きこもりだったから全く苦には感じなかったが。


まあ、俺もここに来るのは2回目だ。

前に1度だけプリンの材料を買いに来たことがある。


そういえば、まだフィルティアとエミリーにプリンを食べてもらってないな。

王宮に戻ったら作るとしよう。


あれ?

そういえば、まだジェフに中途半端に蒼級魔術を教えられたのを問い詰めてないな。

帰ったら問い詰めるか。


あれ?

そういえば┄┄┄┄


「お兄ちゃんっ、あそこ行きたい!」


考えていたところに声をかけられる。

リオンが指を服屋にさしながら提案してきた。

それは他の店よりも2回りほど大きいものだった。


「おう、行くか」



入ったのは普通の店。

木造で、3面の壁いっぱいに服がかけられた店だ。


「いっぱいだね」

「これは迷うな」


俺も何着か買おうと思ったが、時間がかかりそうだ。

前世の俺は布切れに払う金など無いと思っていたが、彼女とデートに行く時にずっと執事服なのもいかんだろう。


「うーん、これいいなぁ」


リオンは早くも1着目を決めたみたいだ。

手に取ったのは、村娘が着ていそうな質素なもの。

リオンは何を着ても似合うだろうが、イメージと少し違うな。

リオンはもっとフリフリしたものを選ぶのかと思った。


「ほう、選考理由はなんでしょう。リオン監督」

「そうですねー、やはり目立たないというのが決め手ですね。これなら……」

「…? 『これなら』……なに?」


リオンが固まり、「やべ」といった顔をしてる。

むむ?


「いやぁ? …別にぃ?」


片眉を上げて俺から目を逸らす。


「ほほう、怪しいのう」


俺はこの嘘について思案する。

目立たない服を着る目的…

目立たない……箱入り……妹…

考えろ、どこかにヒントが隠されているはずだ!


「…もしかして……家出するつもりか?」


ビクッとリオンの体が跳ねる。


「…………」


被告は黙秘を続けている。

だが、俺の無言の圧力はかかり続けたままだ。


「…だ、だって! もっと外に出たいんだもん!」


ほう。

リオンも苦労しているな。


「じゃあ、たまに俺と外出るか?」

「えっ……? いいの?」


いいも何も、外に出たいのは当然のことだ。

欲求を上から抑えられるのは酷いストレスだからな。

俺にもその気持ちはよく分かる。

停電でゲームができなかった時は俺も嘆いたものだ。


「まあ、そりゃね」

「……でも、お兄ちゃん、明日には王宮に行っちゃうんでしょ?」

「うーん…まあ、16日くらいに1度は帰ってくるよ」


3回連続で休みには予定が入っているが、授業終わりにも一応時間は取れる。

王宮から家までは2時間も歩けば着くからな。

どちらも庭が広すぎる所為で変に時間がかかるのだ。


「…うん……分かった」

「父様と母様には内緒な」

「うんっ! ありがとう、お兄ちゃんっ!」


リオンは頷いて笑った。

うん。

やっぱり、リオンの笑顔は世界一だな。

この子を泣かせるやつがいたらマジで許さん。

万が一そんな輩がいたら、魔術の実験台にして、治療して、実験台にしてを繰り返してやる。



会計を済ませて店を出る。

リオンは服の入ったバスケットを上機嫌で持っていた。


「本当にその服でよかったのか?」


俺はバスケットの中身に目をやる。

リオンは最初に選んだ服を買っていたのだ。

しかも、それを1つだけ。


「うん。お兄ちゃんと出かける時にまた買いたいでしょ?」


当然とばかりに目を向けられる。

な、なんて嬉しいことを言ってくれるんだ。

この子は将来、男を誑かす悪魔になってしまわないか心配だ。


「来月には部屋に収まりきらないかもな」



あのままいくつかの露店を回り、帰宅した。

現在の時刻は昼。


「お兄ちゃんっ、楽しみにしててね!」


いよいよ、待ちに待ったリオンの手料理だ。



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